姉、雨を言い訳にした
何かの音が耳に届き、
微睡に中でまどろんでいた意識を音に
向ければ、
あめ?
聞き慣れた雨が屋根や窓を叩く音が聞こえ
瞼を開けた。
暫く音の違う雨音を楽しんだ後、ベットから出て
喉を潤し机に向かう。
工房の報告と手紙
アメリアのお茶会できたドレスの出来事は、
ディランと共にお母様とお父様へ報告し、
判断を任せる事になったのでその新報も届いており
デザインをしてくれたお母様のご友人は、
王妃様からの引き抜きを身に余る光栄と言いつつも
断り、その代わりに私が着たドレスの型を王妃様に
譲ると言う事になった。
譲ると言うが、今後同じ形でのドレスは作れ無い。
デザインの時に楽しげに何枚も書いてくれた婦人を
思い出すと譲る事が良い事なのかと思うものの、
綴られた文字を読んでいくと、
婦人曰く、
あれはエスメ様だけに似合うドレスを
作りその完成を見届ける事ができたので、
思う事は無く、むしろ王妃様が気に入って
くだった事が嬉しく王宮で拝見できるのが
楽しみ。
どうお母様の字で婦人の気持ちが書かれており
婦人がご自身で考え決められたのならば。
良い方向に進んでいる事に安堵し、返事を
書いていると聞こえてきた2回のノックの音に
返事を返せば、開いた扉と共に
「エスメ様、おはようございます」
「おはよう、マルチダ」
朝の挨拶を交わし、ドレスの件の返事を
書き終えた所で椅子から立ち上がり、朝の
支度をマルチダに手伝って貰いながら進める。
着替えをし髪を整えていると肌寒さを感じたので
火の魔術を発動させ、それに加え少しだけ風の魔術を
加えればあっという間に部屋は暖かくなり、ついでにと
屋敷全体に2つの魔術で覆う。
キッチンは暑くならない様に調整をしないと。
髪を櫛で漉いて貰いながら魔術の微調整を
行なっていれば綺麗にサイドが編み込まれており、
「ありがとう」
お礼を言いつつドレッサーから立ち上がると、
聞こえたノック音に返事を返すと開いた扉からは
フレディが姿を見せ
「エスメ様、おはようございます」
「おはよう、フレディ」
互いに挨拶を交わし、促されるままに隣の
部屋に居るディランの元へ向かい
「おはよう、ディラン」
「おはよございます、姉様」
互いに挨拶をしディランの引いてくれた椅子に
腰を下ろし、ディランが座ったのを確認した後
ナイフとフォークに手を伸ばす。
焼きたての白パンは小麦粉と蜂蜜の甘さと
川魚のムニエルのバターの塩味とよく合い、
暖かなポタージュはお腹から体も心も温めてくれ
「美味しかったわ」
食べ終えた直後に感想を溢すと、
食器の片付けに来てくれたメイドさんが嬉しそうに
笑い小さな声で
「クックにお伝えしますね」
伝えてくれたので、お願いの意味を込め小さく
頷き返した。
雨足は変わらないようで、灰色の雲と雨の中の
登校は気鬱になるのか
「ディランは雨が嫌い?」
見知らぬ人から見たら普段と変わらない様に
見えるディランの表情でも、身内が身では
少し気分が落ちている様にみえ尋ねてみると
「いえ、嫌いという訳では無いのですが」
口籠るディランに珍しいと思いつつ
「薄暗いから気分が憂鬱になるの分かるわ」
当たり前にある太陽が顔を見せない事と
気温が下がっている事が気分を落としている
のだと思いつつ
「私はね」
揺れる馬車の中立ち上がりディランの横に
座ると腕を伸ばし
「雨を理由に、こうやってディランを
抱きしめられるから好きよ」
それに雨の日を理由にできるもの良いと思うわ。
そう伝えると瞬間驚いた表情をしたものの
少し困った様に眉を顰めつつも
「素敵な考えかと思います」
重い息と落としつつも腕を回してくれた。
第470話
昨日の暖かさからに冷え込みと雨、どうぞご自愛ください。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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