弟は姉に言えない秘密を持つ
硬ってしまった雰囲気に姉様は理解ができず首を傾げていれば
「エスメ。フレディだけではなく騎士団長も魔法で怪我を直したのかい?」
お祖父様のどこか硬い声に姉様は頷き返事を返すと
「自分には光魔法は使った事は?」
穏やかな表情とは反対の声色の質問に
「かけましたが効きませんでした」
表情を変えずにすぐさま返事をする姿に嘘をついていない事は誰の目から見ても分かった。
何より姉様が嘘や偽りを言う事が無いのは分かっているし、その発想すら無い。
ありのまま起こったままを話す事はお祖父様もお祖母様も手紙でのやり取りで理解しているはず。
「そうか。光魔法は第三者のみにしか効かないと言う事だな」
どこか安堵しながらも表情は硬いままのお祖父様に姉様の表情が強張り
「お祖父様、私は何かやってはいけない事を起こしてしまったのでしょうか?」
今まで出したことのない弱々しく戸惑った声に思わず膝に置かれている手を握れば嬉しく微笑み返してくれたが、すぐさまお祖父様に視線を向けると
「何も悪い事はやってはいないよ。ただ私達はエスメが光魔法が使える事を知らなくて驚いただけだよ」
不安にさせて申し訳なかったな。
小さく首を振りながらの言葉に姉様は安堵の息を吐き硬っていた表情が解かれると
「色々あったが皆が無事で良かった」
同じく安堵の表情をしたお祖父様の言葉に部屋の雰囲気が柔らかくなり、
「紅茶も冷めてしまったわね」
お祖母様の柔らかな声に更に穏やかな雰囲気に変わり、新しく入れ直した紅茶と共に道中であった楽しかった話や驚いた話をし、小さな笑い声が時折混ざりながらお茶会の時間が終わった。
お休みなさいの挨拶をお祖父様とお祖母様にし、姉様と共に用意された部屋下がるも、すぐさまお祖父様の従者から伝言を伝えられフレディと共に案内された部屋へ入る。
「疲れている所に悪いな」
皮張りのソファーに案内されディラン1人腰を下ろすと、
「察しはついていると思うがエスメの事で少し話したい事がある」
挨拶も場の空気を緩める事もなくはいった本題に改めて身構えると
「単刀直入に聞く。ディラン、お前はエスメが光魔法を発動できる事を知っていたか?」
祖父という立場ではなく一族の主としての言葉に、真っ直ぐと視線を向け
「いいえ。傷ついた騎士団長を直した時に初めて知りました」
嘘、偽りの無い事を言葉の強さと態度で伝える。
「本当だな?庇いだてをした所で意味はないぞ」
疑っていないのはお祖父様の態度で分かるものの確認の為に聞かれた言葉に力強く頷き
「間違いありません」
今一度同じ声と態度で返せば、
「ま、そうだろうと思ったが何度も悪いな」
先程までの重く重圧のあった態度からからりと笑いながら言葉に
「いえ、気にしておりません」
少し肩から力を抜いて返事をすれば、
「息子からの手紙にも書かれていたが、少々大人びてはいないか?」
心配されているのか揶揄われているのか判断がつかず曖昧に笑い返すと
「そういう所だ。もっと子供らしくても誰も責めはしないぞ」
呆れ混じりの言葉に
「自分の失態が姉様の将来に関わります。いつまでも子供ではいられません」
今でもこの瞬間でも返した言葉よりもっと的確な言葉があるのではないかと考えてしまう。
「エスメはそんな事気にしないだろう」
「ええ。姉様は気にしません。何より気付かれる様な事はしません」
呆れたお祖父様の言葉に真面目に言葉を返す。
姉様は貴族ではない。
何かあれば立場は弱く守る事が難しくなる。
まだまだ考えが足らず、経験も少ないが憂はできる限り取り除いていきたい。
姉様が身を挺して守ってくれた様に自分も姉様を権利力や言われない言葉や偏見から守りたい。
あの日からそう思い続けている。
無意識に深くまで考え込んでしまうと
「真面目すぎると転けるぞ」
先程までとは変わり真面目な表情で言われた言葉に、
「転けても立ち上がるまでです。それに姉様の奇想天外の考えや突拍子のない行動にある程度の事は冷静かつ柔軟に対応できるようになってきました」
覚悟の上だと告げれば、
「エスメの行動はなぁ」
頭に手をやり、困った表情をすると
「そこがあの子の良さであり、らしさでもありますよ」
穏やかで柔らかいお祖母様の言葉に体の中に息を吐き出すと
「貴方、ディランを揶揄うのは後にして大事な話をしませんとディランがいつまで経っても休めませんよ」
お祖母様の言葉にやはりと言う思うものの、2人して空気が変わったのを感じ緩めた気持ちを引き締め言葉を待つ。
「エスメには言えない話だが」
前置きで告げられた言葉に身構えると
「光魔法は薬でもあるが毒でもあるんだ」
言われた言葉が理解できず口を閉ざしたままでいると
「治癒をする光魔法は誰しもが恩恵を受けたいと願う魔法という事は理解できるな」
先程よりゆっくりとした速さで告げられる言葉に頷くと
「初めの内は何事もないが多用すると気が狂いだすそうだ」
予想外の言葉に驚き
「なぜですか?」
震えながら理由を問えば
「ある一定を過ぎると徐々に視界が白一色になりその後、真っ白な世界から帰って来れなくなると記録があった」
返ってきた言葉に呆然とするも
「真っ白な世界ですか?」
必死に頭を動かし理解をしようとするも情報が足りず拒否をし始めてしまうが理解をしようと疑問を言葉を作れば
「色が白以外無くなりそして自分が何処に居るのか解らなくなり不安と恐怖で心が病みだす」
お祖父様から告げられる言葉が絵空事の様で信じられない気持ちになるも、記録をして残っているのならば真実であることを示しており、
「光魔法の使用者はほぼ症状が出たらしく、それを防ぐ為に国が保護対象人物に指定をした」
国の保護対象人物
国の代表となる国王陛下の庇護に入る。
ぐるぐると言葉の意味が頭の中を周り整理が付かなくなってくる中
「だが、エスメはかの女王との約束で王家と関わりを持つ事ができない。これがどういう意味をするのか分かるな」
お祖父様から告げられた言葉に言葉を無くし呆然してしまう。
遠い未来に姉様を失ってしまう事になるかも知れない。
その現実に恐怖と怖さが溢れ出し身を震わせるも、
「使わせません。使うにしても最小限に留めさせます」
回避できないのあれば最小限に抑えてある一定量に到達するのを遅らせるしかない。
姉様に伝えなければ。
深呼吸をし考えをまとめ
「姉様には僕からお伝えします。だた白い世界の事は伝えません」
よろしいですか?
言葉にしお伺いを立てれば、
「こういう時は、大人に任せて欲しいのだがな」
ため息混じりのお祖父様の言葉と心配そうに見守るお祖母様に微笑み
「姉様のことは僕が1番理解していますのでお任せください」
胸を張り告げた言葉にお祖母様が驚きながら微笑ましそうにあらあらと言葉を溢し、お祖父様が呆れながら
そうだなぁなんて投げやりな言葉で返事を返してきた。
第47話
つい寒さに負けてホットココアを買ってしまいました。真冬生き抜けるか心配です。
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大変嬉しく思っております。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
よろしけれお読みください。
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