弟は振り回される
日々、言葉に節々や所作では指先まで力を入れ
求めてくる同級生の言葉や言動を読み先回りできる様に
頭を常に動かし、気を抜く事はできず神経を尖らせる。
休憩時間は勿論、授業中だって気を抜く事はできない。
自分の言葉一つ、行動一つで足元を掬われ自分だけではなく
姉様にも影響が及ぶと思うと身動きが取れず息が詰まりそうに
なるも、
「ディラン」
辺境伯のご子息であるザッカリーが親しげに話しかけてくれ、
「ザッカリー様、ディラン。おはようございます」
現宰相のご子息であるルカ様に
「ザッカリー様、ルカ、ディラン、おはよう」
騎士団長のご子息のレジー様に魔術師長のご子息のアーロ様
上位貴族の方々が自分を好意的に接してくれるお陰で
日々危なげながらも過ごせるが、
「皆様、おはようございます」
殿下の婚約者であるアメリア嬢には姉様同様に
気にかけていただき、
「おはよう。出迎え、ありがとう」
その縁でルーク殿下にも気にかけていただき、
日々の学園生活が無事に送れている。
授業は知識としてあるので復習も兼ねつつ
しっかりと学び直すので突然、教師から回答を
求められても答える事はできるが、
「ディラン様」
休憩中に淑女の方々や同じクラスの生徒から
話しかけられると気を張り考え過ぎどう返事を
返すのか良いのか分からなくなる。
「それもディランらしさだよ」
ルカ様を始め、皆様に助けていただきなんとか
授業を終え
今度は生徒会の仕事の為に部屋を変えると、
教室よりは気を張る事はないものの失礼に
当たらない様に気をつけつつも、
「昨日のお茶会は本当に楽しかったですわ」
仕事休憩時はアメリア嬢の淑女教育の進歩の
報告を中心となる。
今日は、姉様もルカも参加したアメリア嬢主催の
お茶会の話でルーク殿下を始め皆様はマリー嬢の
頑張りを好ましく聞く中、
「お茶会の半分以上はエスメ様とディラン様が
お過ごしになった領での思い出話で、エスメ様は
とても嬉しそうに、時に愛おしげにお話しして
くださいましたわ」
思わず恥ずかしさで頭を抱えたくなるも、ルーク殿下や
皆様の前その様な事ができるはずも無く、
「ご迷惑をおかし申し訳ありません」
マリー嬢の勉強のはずが、邪魔をしてしまった
姉様の行動に頭を下げ謝罪をすると、
「とても微笑ましかった。ディランが謝る必要は無いよ」
ルーク殿下の言葉に、頭を上げる様に声をかけられた
訳では無いが思わず顔を上げると
「ええ。仲の良い話は聞は微笑ましく思いました」
ルカ様の言葉に、レジー様とアーロ様のお顔を拝見すれば
微笑みと共に頷き返され、
ザッカリーには肩を軽く叩かれ
お茶会の場に全員居た事を示しており
「皆様には姉が大変ご迷惑をおかけし」
震える声で謝罪を仕掛けるも先程のルーク殿下の言葉を
思い出し途中で言葉を切ってしまった。
「そう言えば、王妃がエスメ嬢のドレスが気になると
話していてね」
この後、どう挽回するべきか頭を動かす中で聞こえた言葉に
理解が追いつかず、返事を返せないでいると
「エスメ様のドレスはわたくしも着てみたいと思います」
アメリア嬢の言葉に
「動きやすさを重視したドレスの作りは斬新で淑女教育や
社交界に貴族社会に身を置く者には思い付かない型でした」
ルイ様の姉様のドレスへの感想が告げられれば、
回避する事はできず、
「勿体無いお言葉です」
了承の意味を込め返事を返し、荒れ狂ってる心を誤魔化し
鎮める為に自分で淹れた紅茶を飲んだ。
だからと言って思考が落ちつく訳もなく、1人でも
対応も判断もできない事なので持ち帰り両親に協力を仰ぐ
事を決め、生徒会の仕事を終え
姉様が待つ馬車へと全員で向かうと、
車内では無くフレディと一緒に外で立っており、
よくよく見ればフレディが姉様の背中を撫ぜ
諌めているおり、
周りに居る殿下達の従者達も心配気に見守っており
何かあったのか?
殿下達に先に離れる詫びと別れの挨拶をし、
焦る気持ちを抑えつつ姉様物とへ向かえば
「ディラン様」
自分の存在に気がついたフレディの声に、姉様が勢い良く
振り向き
「ディラン!」
振り向いた勢いそのままに抱きつかれたが、
瞬間見えた表情は眉を下げ今にも泣きそうな表情をしており
「姉様、どうされたのですか?」
ぎゅうぎゅうと抱きついてくる姉様を慰めつつ、
まずは原因究明をと尋ねるが反応は無く、
殿下達の目があるものの落ち着くまでそのままで居ようと
決めた所で、
姉様が勢い良く背中に回していた腕を解き肩を掴まれたかと
思うと顔を上げ
「大きくったねぇ」
言葉の中にしみじみとこもった何かの感情は分からないが
「はい。大きくまりした」
姉様と同じ身長になった事だと理解はできたので返事を返し
「暖かくなってきたとは言え、日も傾き寒さが
出始めております。車内へ入りませんか?」
話を聞く為にエスコートをし車内へ入り、改めて姉様と
向き合うと先程の表情は無く、
楽しいや嬉しいは長く続くが、他は続く事は無い事を改めて
実感しつつ姉様からの言葉を待てば
「大変なの、ディラン」
そう始まった話の内容は先程、ルーク殿下やアメリア嬢から
聞いた話で
ゆっくりと動き出した馬車の中、姉様の話を聞きつつ
屋敷へと帰った。




