姉、あの日の事を思い出す
紅茶の香りが品良く香り一口大程の小さなケーキが並び時折暖炉から薪がはせる音を聞きながら団欒を楽しんでいたが、お祖父様の一言により部屋の雰囲気が固くなり飲んでいた紅茶の味が分からなくなった。
怪我のことを聞きたい。
どう告げれば良いのか分からず持っていたカップをソーサーに戻し右腕をそっと撫ぜると
「勿論です」
ディランの言葉に顔を上げディランの顔を見れば、
「僕の視点で話を進めて行くので姉様は補足をお願いします」
優しく微笑んでく告げられた言葉に頷き返すと
「姉様の怪我は輩に襲われ際に僕を庇ったからです」
結論から始まった言葉にお祖父様とお祖母様の表情が変わった。
「王都を出て直ぐの休憩地で輩に襲われました。目的は身代金と売買のようで。手慣れた感じも見受けましたので数名の被害者が出ているかと思われます」
感情無く淡々を話して行く。
「騎士団長とフレディとは離された僕と姉様はなんとか脱出を試みる為に、動きましたが輩の感情を逆撫でしてしまい僕に剣を振り落とそうとしました」
お祖母様の息を飲む音と騎士団長とフレディの表情が強張るの見て、
大変な事をしちゃったんだぁ
どこか他人事の様にぼんやりと思い中がフレディの言葉を聞いていた。
「激昂した輩が言うには僕を切るつもりは無かったと言う事ですか、振り下ろされた瞬間の軌道は僕を捉えてはいました」
あの瞬間に剣の軌道まで見ていたディランに驚き見つめていると、
「姉様も無意識にその事に気が付いたのだと思います」
チラリとディランから視線を貰うもあの時は必死で何も考えず動いたので曖昧に笑い返すと
「慌て僕と剣の間に体を刷り込ませた為に勢いが殺せず壁に頭を打ち付け、僕の頭を庇った為に受け身が取れず右腕を折ったのはこの時だと考えています」
いかがですか?
視線でお伺いを立ててくるディランに少し考え
「ごめんなさい。必死だったのであまり覚えていないの」
話を進めてくれているディランやお祖父様やお祖母様に申し訳なく思い顔を下げてしまうも、
「その後、意識が朦朧としている姉様は魔力を放出してしまいそれに恐れをなした輩が小屋から離れたのでその隙に小屋から出しました」
一区切りついたからかディランは喉を労るように紅茶を一口飲み息ついた。
「魔力の放出か」
重々しく言葉を溢したお祖父様は顎に手を当て何かを考え込んで様子に首を傾ていると
「意識が朦朧とした状態と言ったが、エスメは魔力を放出した覚えはあるかい?」
真っ直ぐと視線を合わせ聞かれた事に、改めて思い出し魔力の感覚を探るも
「いいえ。記憶にありません」
思い当たる事は無く首を振り返事を返すと
「そうか。嫌な事を思い出させてすまないな」
眉を下げ申し訳ないと誤りを入れてくれるお祖父様に首を振り
「お役に立てず申し訳ありません」
多分1番知りたかった事だったはずなのに当の本人が何も覚えていない為に役に立たなかった。
心配そうに見守ってくれているお祖母様にも申し訳なくて心の中でため息を落とすも、
「そういえばフレディと騎士団長はどうやって小屋まで来れたんだ?」
ディランの言葉にそう言えばと顔を上げ2人を見れば、フレディが半歩前に出て
「ディラン様とエスメ様と離された後、離れた場所にある小屋の前に連れて行かれました」
ゆっくりと話し出した。
「騎士団長が私を庇い輩の攻撃を集中的に受けてしまいどうにかできないかと思った時に
エスメ様の魔力が流れてきました」
フレディが騎士団長に視線を流すも騎士団長に表情は動かずフレディの話を聞いていた。
「原因となったお茶会の時にエスメ様から火魔法石を受け取っていたので見つからない様に手袋の甲側に隠し持っていた」
左手の甲を手袋の上から撫ぜるする姿に、そう言えばと思い出す。
「放出された魔力に反応し発動をしましたので縛られていたロープを焼き切りました」
ディランと私の視線に何かを感じたのか苦笑しながらの言葉に、渋い顔をして反応を返した。
火種で火傷をしながらロープを焼き切った。
痛かったし熱かっただろう。
自分の作った魔法石が人を傷つける事を考えてなかった。
申し訳なくて悲しくて辛くてどう言葉をかけて良いのか分からず
「フレディ」
思わず名前を呼んでしまうも
「そのような顔をしないで下さい。エスメ様の魔法石があったからこそ早々脱出ができたのです」
困った様に笑うフレディに何か言いたくても言葉が出ず口が動く飲のみになってしまう。
「それに我々はエスメ様に怪我を治していただきました」
微笑んだフレディとゆっくりと頷く騎士団長の見てると、お祖父様とお祖母様が驚きと緊張で顔を強張らせた。
第46話
少し第三者からの視線を入れたかったのですが思うままにならず。
もう数話続く予定です。お付き合いいただけると嬉しいです。
急に寒くなりましたね。暖房機器を動かすかどうか毎日悩んでいます。
手が悴むのが辛いです。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。
よろしけれお読みください。
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