姉、見守られている事を知る
暖炉の火が時折爆せる音
ランプの光と火の魔術を使い部屋を明る保ち、
互いに正面に座っているものの会話は一切無く
ただひたすら手元にある教科書の書かれている文字を
解読し理解してゆく。
数日後に始まる試験の為にディランと勉強をしている。
のだが、どうも集中力が続かず意識が違う方に向きやすく
後もう少し進めたいのだけれども、覚えきれないまま
続けるのも疲れるだけよね。
止まってしまった手を先程まで記入していたノートを見て
体の中に重い息を吐き出し、顔を上るとフレディと目が合い
「ディラン様、エスメ様、そろそろ休憩を挟まれは
いかがですか?」
集中力が切れた事などお見通しの様で、微笑みながらの提案に
「そうだな。何か甘い物を頼めるか?」
ディランも手を止めフレディの提案に賛成を告げた言葉に
「では、飴などはいかがでしょう?」
差し出された缶に入った飴は食べ慣れた飴で
「いつ、取り寄せたの?」
久しく見ていなかったはずと首を傾げつつ手を伸ばし
ほんの少し酸っぱいレモン飴を口に入れると、
「試験には甘いものは必須ですからね」
微笑みながら返事を返してくれたフレディの後、
ディランの気遣いかとディランを見るも、ゆるりと首を
振られたので、どうやらフレディの心遣いの様で
「お心遣いありがとう。流石、フレディね」
お礼を伝えると
「心遣いありがとう」
ディランも同じ様に思った様で、感謝の気持ちを伝えると
従者の微笑み
「もったい無いお言葉です」
と告げながらの礼を貰ったが、なんだか演技の様に見え
我慢ができなくなり体を震わせ出すと
「エスメ様、ひどいですよ」
顔を上げ非難を口にするもどこか棒読みで、堪えていた
笑いが溢れ出してしまい
「ごめんなさい。でも、可笑しくて」
一応謝りの言葉を告げるも笑いながらなの反省しての謝りでは
無くなってしまったがフレディは気にする事も無く、それすら
「ひどいですねぇ、こんなに主人に尽くしておりますのに」
誰でも分かる程に感情の入っていない声と棒読みに、
さらに声を上げ笑うとディランん釣られた様に口端を上げ
手の甲を口に当て小さく笑いだし、
先程まで重く静まり返っていた部屋が嘘の様に明るくなり
そこからは他愛のも無い話に花を咲かせつつ、紅茶飲んだり
勉強を片手間でしたりとすれば
「エスメ様、そろそろお部屋にお戻り下さい」
気づかない間に数時間過ぎていた様でマルチダの声に
「もう時間なのね」
惜しむ気持ちもあるけれど、手早く片付け椅子から立ち上がると
見送る為にディランも椅子から立ってくれ、
「ディラン、おやすみなさい」
同じ位置にあるディランの頬に軽く唇を当てると
「おやすみなさい、姉様」
同じ様の頬に軽く唇を当ててくれた。
数ヶ月前まで自分より小さかったディランは
後、数ヶ月もしたら背を追い抜いていくのだろう。
「可愛いとかっこいいの境目の時ね」
後、どれだけか分からないがこうして同じ高さで視線が合う
貴重な時間なのだと気持ちを漏らしてしまうと、
誰も返事を返してはくれなかった。
「とても貴重な時だと思うの」
自室に戻りマルチダに力説するも、
「左様でございますね」
理解してが重きを置くべく事ではないと判断をしたのか
返事だけが返り、
「そりゃ、ディランは大きくなっても可愛いと言い切れるわ。
でもね、そこに格好良いが足されるのよ」
部屋着から寝巻きに着替え、髪を梳く為にドレッサーに向かい
鏡に映るマルチダに告げるも、無言で
「毎日毎日違うディランが見られると思うと、
貴重だと思うじゃない」
さらに言い募れば、ブラシを動かす手は止まらず
「左様でございますね。エスメ様も毎日変化があり
貴重な毎日でございますね」
返ってきた言葉に1瞬理解が遅れたが、
マルチダに告げられ言葉は水の様に心に浸透し
「そうね。フレディもルイもマルチダも皆が変化をしている
貴重な毎日に違いないわ」
確かにディランだけではない事を思い出すと自然と言葉が表に出てきた。
そうね。
マリーだった日々努力して淑女へと変化をしている。
そんなマリーをアメリアは嬉しそうに時に微笑ましそうに見守っている。
日々2人の関係も深まっている。
自分も何か変化をしているのだろうか?
鏡に映る自分を見つめても分からず、髪の手入れが終わったと告げられ
ベットへ促され横になれば布団をかけて貰い、
「ねぇ、マルチダ」
布団を整えているマルチダに声をかけると視線を合わせてくれたので
「私も毎日、変われているのかしら?」
言葉を漏らすと
「ええ。日々お綺麗になり大人へと変化されておりますよ」
どこか幼な子の伝える様な優しげな声に
「だと、良いな」
心が嬉しくもくすぐったくなり笑い誤魔化すと
「この屋敷に居る全員がそう思っております」
おやすみなさいませ。
先程とは違い普段の落ち着いた声で告げられた言葉に
驚き尋ねようとするもマルチダは部屋を出て行ってしまい、
嬉しさと恥ずかしさと照れ臭さが混ざりあった感情は
言葉にして出すことができず、布団に顔を隠し
暴れ出す体を押さえ込んだ。
第458話
寒さとひどい乾燥が続いておりますが体調はいかがですか。皆様どうぞご自愛ください。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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