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姉、弟を困らせる


寒さも和らぎ太陽の光も温かく、誘われる様に

花々が蕾を膨らませる中


「エスメ様、じっとして居てくださいませ」


その言葉に緩んでいた背中の筋肉に力を入れ

背筋を伸ばした。


5日間学園に通い、今日から2日間は休日となり。


その初日にマルチダがお針子さん達と沢山の布を

持ち自室にやってきたのが数時間前。


最初はデザイン画を見せられアメリアのお茶会へ

来て行くドレスだと教えられ、次にドレス生地の色選び

だと部屋の真ん中に立ち、何十枚もの布を選んでいると

聞こえてきたノック音に返事を返せば、


「姉様、布選びはどうですか?」


ディランとフレディが尋ねてくれ出迎えようと

動きかけたがマルチダに止められ、言葉だけで向かい

入れたが、


来て早々にディランもフレディも生地と色選びに夢中で

こちらを見てくれず不貞腐れていると、小さく笑う声が聞こえ

視線を動かすと


「お話には聞いておりましたが、エスメ様は本当に

ディラン様がお好きなのですね」


初めて会う人の様で、名前を呼ぼうにも知らずに居ると、


「奥様のドレスのデザインを手掛けさせていただいております」


腰を折り礼と共に教えてくれた名前とこの家との関係性に


「いつも素敵なドレスと作られている方ですね。

お会いできて嬉しいです」


お母様が毎日来ている屋敷用のドレスから社交界用の

ドレスまでデザインを手掛けていると聞き、動けぬまま

挨拶をすると


「幼き子をより存じ上げておりましたが、この様に美しく

なられてはさぞ公爵様も気を揉んでおられるでしょうね」


愛おしそうに微笑みつつ告げられた言葉には揶揄いの

色が含まれており、そう返事を返すのが正しいのか

分からないが、記憶にない頃に会っていると言うので

王都で来ていた服を手掛けてくれたのだと判断し


「ありがとうございます。今回もよろしくお願いいたいます」


褒めてくれた事とドレスと作ってくれる事を言葉にし

伝えると


「お任せください。本格的なドレスではのが大変

残念ではありますが、公爵家に恥じないドレスを作って

見せますわ」


熱量の高い返事を貰え内心驚きつつも


「楽しみしております」


返事を返すと、


「お二人で揃ってお出かけになっても良い様に、

ディラン様のお洋服も合わせて作らせていただきますわ」


歌う様に告げられた言葉に嬉しくも驚き


「良いのですか?」


尋ねれば、


「勿論でございます。奥様からもその様に

ご注文をいただいておりますので」


嬉しそうに微笑む婦人に釣られる様に

嬉しさがじんわりと心に広がり、


「では、私よりディランが似合う色が良いわ」


先程まで渋々で萎れていた心が弾み、

そう告げると


「ディラン様のカフスや胸のハンカチーフにエスメ様の色を

取り入れさせていただき、エスメ様のドレスはディラン様の

瞳の色を加えますわ」


即答と言える速さで返事が返ってきたので


「嬉しい。ぜひお願いします」


丸まっていた背中を伸ばし、手を叩いてお願いをすると

先程まであった憂鬱な雰囲気は消え去り


「ドレスができるのが楽しみだわ」


一気に明るくなった部屋の雰囲気にディランとフレディが

こっそり安堵の息を落とした事に気が付かず、それからも

婦人と沢山の話をしているとあっという間に生地と色選びに

採寸まで終え、


「では、仮縫いが終わりましたらお持ちいたします」


その言葉と共に部屋から出てきく背中を見送り、


「ディランと合わせのドレス楽しみだわ」


フレディから差し出されたミルクティーを一口飲み

溢した言葉に


「お母様からネックレスを借りる手筈もしてありますので

ドレスが出来上がりましたら、マルチダに持たせますね」


予想もしていなかったネックレスと言う言葉に


「いらないわ。落としたら怖いもの」


首を振り断りを入れたが、


「マリー嬢は王妃様がドレスと用意するとアメリア嬢から

聞いております。その横に立つ姉様がその様ではマリー嬢に

ご迷惑をかけてしまいます」


ディランからの言葉に返す言葉が見つからず、唇を尖らせれば


「アメリア様は公爵家の令嬢でもあり、殿下の婚約者で

社交界の幻の大輪と最大級の評価を受けておられるお方。

その方へお会いするのに宝石の一つもつけずに行くとなると、

『身なりを整えてまで会おう価値は無し』そう評価していると

同等な事です」


淡々としながらも告げられた貴族社会の常識に眉間に皺を

寄せるも、大切なアメリアにそんな事を思っていないと

表現するには宝石をつけるしか無いようで


「分かったわ。当日きちんとつける」


それで良いでしょう。


学園で会う様な雰囲気を少し固くしたものだと

思っていたが、どうやら本宅的な貴族社会マナーの

お茶会のようで楽しみにしていた気持ちが少し

萎んでしたまったが、


「ディラン心配しないで。マナーはディランやミランダに

教えて貰ってお祖母様に合格をいただいているわ」


心配そうに見つめているディランに笑い返しながら

伝えると、微笑み返してくれ


「宝石ですが僕が選んでもよろしいですか?」


遠慮がちに尋ねる言葉に


「嬉しい。お願いね」


ディランの手を取り嬉しさを言葉だけではなく

伝えると


「僕も姉様を着飾ってみたいので嬉しいです」


その言葉に思いやる心に嬉しくなり抱きつき


「ディランの期待に応えられるように頑張るわね」


自分の感情だけで言った言葉がディランの心を

掻き混ぜてしまった事に反省しつつ、

当日のコルセットの苦しさに耐える覚悟を決めた。


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