姉、思い出す
先ほど気がついた身長の事もそうだが
横に並び歩いていると、今まで気がつかなかった
事に気がつく。
手を置いているディランの腕が少し太くなった事。
先程触れた指に剣ダコができており、手が硬く
なっていた。
視線を少し下ろし足を見れば、靴も大きくなっており
まだ身長が伸びるのであろうと分かる。
頬も丸くて柔らかかったのに、今は細くなり
大人の顔になりつつ
毎日見ていると気がつかないものね。
改めてディランの成長に気づき心の中で
息を溢す。
自分の歩幅に合わせ歩いてくれるディランに
嬉しくもあり寂しく、少し複雑な感情に浸っていると
いつも行う庭ではなく、少し奥まで入った場所に
案内され、
「姉様、こちらへ」
太陽の光が程良く当たる絶好の場所に敷物が引かれ
1番に腰を下ろした。
続いてディランが横に座るのを視界の片隅に入れながら
初めて訪れた事もあり周りを見渡し
「素敵な場所ね」
木々から程良く離れつつ広がった場所は、屋敷からも
程良く遠く窓からは木々に隠され見えない場所の様で
なんだか秘密の場所みたい。
幼い頃の好奇心と心が躍る気持ちで、ディランと
フレディが準備を整えてくれる姿を眺めてる。
葡萄の枝で編まれたバゲットからはサンドイッチに
スコーンにティーセット。
フレディ主導で整えられている場に、
そう言えばディランとフレディが先に王都へ
戻る前にもこうやってピクニックをしたわね。
あの時も今回のように突然に告げられ
素敵な場所へ連れて行ってもらえた。
かけがえのない思い出に懐かしく思いつつ
「姉様、お待たせしました」
準備が整った様で、ディランの言葉にフレディから
ティーカップが渡され
「ありがとう」
フレディにお礼を伝え、紅茶を一口飲み
「ディラン、素敵な場所に連れてきてくれてありがとう」
もしかするとディランの秘密の場所だったかもしれない
場に連れて来てくれた事にお礼を伝えると
「気に入っていただけて嬉しいです」
はにかむように微笑んで返事を返してくれたディランの
表情に少し大人の雰囲気を感じつつ
「そういえばディランとフレディが先に王都へ戻る時も
こうやってピクニックをしたわね」
先程思い出したことを伝えると
「そうでしたね。あの時は不慣れでピクニックと
言えないものでしたが」
少し困った様にでもどこか悔しそうな表情と言葉に
「私は嬉しかったし楽しかったし、とても心が躍ったわ」
あの時の感情をそのまま言葉にし伝えると、数度瞬きを
したのち
「姉様に喜んでいただけたなら良かったです」
幼い頃と同じ様に笑ったディランに心がときめき
思わず手を伸ばし
「すっごく嬉しかったし、今も嬉しいわ。
ありがとうディラン」
思い切り抱きしめると、背中を数度撫ぜてくれ
「それなら良かったです」
自分の肩にディランが喋るたびにくる振動を感じつつ
「ディラン大好きよ」
ディランに回していた腕の力を込め伝えると
「ありがとうございます」
室内の時とは違い恥ずかしいのか腕を回される事なく
伝えられたお礼に小さく笑いながらディランを堪能し
た後、ゆっくり腕を離し
「そう言えば」
フッと思い出したことを話し出すと、真剣な表情で
聞く体制に入ってくれた。




