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弟は不甲斐なく思う


姉様にルイを加えた晩餐はいつもより賑やかで

庭に居た時に見せていたどこか寂しそうで悲しそうな

雰囲気をしていた姿の姉様は何処にも無く、


晩餐が終わるまで楽しそうに笑い、微笑ましそうに

優しげな視線で僕やルイを見て食事を楽しんでいた。


騎士団長との模試試合中にフレディと話している姿は

視界の片隅に捉え、表情や雰囲気の変化は一目見て分かった。


相談して貰えなかった。


フレディに何か話をしていた表情は初めてみる表情で、

意味ありげに僕に視線を送っていたのも気づいて、

その隙をつかれ騎士団長に地面に転がされていた。


姉様に何があったのだろう?


どこか置いて行かれた様な不安そうな表情は

胸を締め付けられ、すぐにでも駆け寄りたかったが


「ディラン様、ここはフレディに任せ気付かないフリを

するのも紳士の嗜みですよ」


土に転がされ告げられて言葉に、思わず感情が溢れ

視線を強めるとクツクツと笑われ


「天真爛漫のエスメ様でも淑女です。ご心配はわかります。

俺が予想するにディラン様のご心配でしようから、ご本人

よりフレディが適材適所と言うヤツですよ」


そんな言葉を振らせてくる騎士団長に


「まぁ、エスメの考えの8割はディランの事だし、

今回は大人に任せてみた方がいいんじゃないか?」


起き上がるように手を差し伸べてくれたルイの言葉に

重い息を吐き、類の手を掴み起き上がり恥ずかしさと

照れ臭さと嬉しさが言葉に出せず、剣を掴み直す事で

隠好ことにしたが、僕の感情など手に取るように分かる

2人はニヤリと笑った後、同じ様に剣を握り返してくれた。


姉様が僕の何かを心配している。


その事は勿論嬉しいが、そろそろ1人の大人となる年頃に

なるのだ、もう何もできなかった幼な子では無いと理解して欲しい。


もぞりと蠢いた感情は体を動かす事で消しさる事にしたが、

姉様が用意してくれたサンドイッチを届けてくれた頃には

いつもの姉様に戻っており、


理由を聞く事は叶わず、晩餐も終わり


「あまり夜更かししちゃダメよ」


その言葉を残しマルチダを連れ自室へと戻って行く背中を見送り

暫くした後、


「フレディ。報告を」


姉様の相談事を聞くべき控えているフレディを呼び寄せれば


「ご自身の知らないディラン様の事で思う事があった様です」


従者の表情と態度で話してはいるものの、言葉の節々に揶揄いの

色が混じっているのが分かり眉間に皺を寄せると、


「誰しもがエスメ様が知らない秘密を持っているものです」


フレディから告げられた言葉に血の気が引くも


「わたくしでは無理でしたが、マルチダさんの言葉で

エスメ様はその事を受け入れられ、乗り越えられました」


続けられて言葉に安堵の息を吐き出すも、ここにいる3人共

姉様に言えない秘密を持っているし水面下で動いてもいる。


その事を隠しと通さなければ姉様の平穏な生活が遠のいてしまう。


なんとしても隠し通さなければ。


心に決め、


「ルイ、彼の話を聞かせてくれないか?」


稽古と理由をつけ屋敷にきて貰った事を言葉にすると、


「最近は落ち着いているみたいだが、休日はほぼ出かけており

貴族クラスの女子と会っているな」


教えてくれた言葉に頷き、


「相変わらずか」


「ああ。街に出て言われるままに貢がされているな」


報告書にあった通りの様で思い息を吐き出した後


「恋情を持っているのは構わないが、姉様を巻き込まないで欲しい」


つい本音を溢してしまい慌て口を塞ぐが


「まぁ、エスメは他の生徒と共に平等に接しているし、

何より全員年下だからか庇護欲が強くなっているぽいな」


どこか正当な返事を返している様に聞こえるが本心は揶揄いも

混じっている言葉に、返事を返せば自分が不利になる事は分かって

いるので口を塞ぎ視線で話の続きを促せば


「エスメにとってクラス全員を弟や妹に思っているし、

クラスの奴らもそれを受け入れている雰囲気もある」


そんな中でボーイック1人暴走してみろ、どうなるか分かるだろう。


ルイから付け加えられた言葉に


「その前に御親友が動き出しそうですね」


フレディの言葉が加わり、ルイと共に納得し頷いてしまった。


姉様の御親友はマリー嬢にアメリア嬢。

特にアメリア嬢は殿下の婚約者でもあり歴史ある公爵家の御息女。

その彼女にそっぽを向けられれば、いくら王家御用達の商会でも

貴族達は離れてゆくだろう。


貴族社会とはそう言うものだ。


勿論、領にある2つの工房との取引も中止になる。


恋情を持つ事は構わないが彼はその事を分かって

動いているのだろうか?


本人に聞いてみたいが、会いたくは無いので見守るだけに止め


「ま、好いた人を口説くのにエスメとマリーとの仲をひけらかすのは

間違ってるからなぁ」


呆れた感情が混じった息と共にこぼされた類の言葉に心の中で

大きく頷き


「ま、これからも注意してみとくよ」


ルイの天性の明るさと前向きさに心の靄が晴れてゆき、

ルイと合わせてくれた姉様に感謝しつつ


「すまないが頼んだ」


ルイの学生生活を私情で潰していることに詫びを入れると


「気にするな。同室なんだし領主様からも頼まれてるからな」


嘘偽りのない笑顔に礼を伝えると


「そろそろ」


フレディから終了する様にと言葉が挟まれたので互いに頷き

部屋から出るルイを見送った。


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