姉、心に決着を付けた
クック長に急遽作って貰ったローストビーフが
沢山挟んであるサンドイッチを練習場に持って行くと
騎士団長の姿は無く、3人分あったサンドイッチは
育ち盛りのディランとルイはあっという間に食べ終え、
果実水を飲みながら、ああでも無いこうでも無いと
先程の模範試合の振り返りをしつつ、互いの動きについて
意見を出し合っている姿は、2人の年相応表情を微笑ましく
眺めつつ
私もディランだけでは無く、両親にも親友にも言えない
秘密があるわ。
仲が良くても言えない事はあって当たり前で、
親しき仲にも礼儀あり。
なんでも知ろうとすれば相手を監視し束縛をする事にもなるわ。
そんな事をすれば互いに苦しくなり不快な関係になってしまい
ディランの可愛い笑顔や甘えてくれる姿が見れなくなってしまう。
そんなの耐えられない。
想像をしただけでも胸が苦しくなり辛くなり耐えられない。
普段中々見れない楽しそうに話すディランの姿と
領で見ていたルイの笑顔と笑い声を聞き、
今までのままでいれば良い。
互いに詮索などせず、話してくれる事に耳を傾け
見せてくれる姿を慈しみ、少しの変化を見つけ一喜一憂しよう。
時折混じるフレディの言葉にディランもルイも真剣に聞き、
今度は2人だけで模範試合と行おうと話は進むと、
「姉様。サンドイッチありがとうございました」
「ありがとうな。腹ごなしにディランと運動してくるよ」
お礼の言葉を伝えてくれたと思えばあっという間に広場に戻り
刃を潰した剣を握り互いに撃ち合いを始めた。
危ないまねはしないでね。
そう告げる暇も与えてくれないディランとルイに
「もう。2人たら」
呆れた様に言葉を落としたものの、楽しそう体を動かしている
2人と審判をしているフレディの微笑ましそうな表情に
呆れた顔などすぐに解け、楽しそうな3人の中に混じりたくなったが
「晩餐は量を多めに頼むべきかしら?」
あれだけ動けばすぐにお腹が空くだろうと思い、斜め後ろに居る
マルチダに話を振ると
「左様でございますね。本日はルイもおりますので
ディラン様も沢山お召し上がりになられるかと」
淡々とした口調ながらもその言葉の節々は優しさと暖かさを
感じさせる声の言葉に
「ルイを泊まらせようと思うの。部屋の準備は間に合うかしら?」
あれだけ楽しそうにしていると、寮の門限で止めるのはできず
強制では宿泊させる事を伝えれば
「以前と同じ部屋を整えてあります」
手配済みだと言うマルチダに驚きつつも
「ありがとう。ならその部屋に泊まって貰うわ」
それと入浴の準備お願いね。
自分だけではなくディランの行動も予想済みだった
マルチダの気配りに礼を伝えると
「その旨を執事長に伝えて参ります」
一礼をし屋敷へと歩いていくマルチダを見送りつつ
流石、マルチダね。
心の中で称賛を送り終えると、再びディランとルイの稽古を
眺める為に顔を動かした。
何度も勝敗をつけ30分程過ぎた頃、清々しく笑ったディランと
ルイとフレディを
「お疲れ様」
釣られる様に微笑み向かい入れた後、
「部屋に戻って入浴が必要ね」
互いに何度も倒され土まみれになっている姿の2人の手を握り
屋敷へ向かって歩きつつも、風魔法を発動させ2人の洋服についた
土を飛ばしてから屋敷へと入り
「ルイ。今日は泊まって行きなさい」
もう決めた事だと反論をさせないように告げると
「それは有難いけど、寮に外泊届けを出していないからなぁ」
困った様に溢した言葉に
「でしたら、寮の責任者に外泊の旨を伝えてまいりましょう」
フレディが返事を返し近くにいた使用人に声をかけ、
寮への伝言をする旨を伝え、
「注意を受ける事はこれでありません」
先程の優しく見守っていた表情から一変、従者としての表情と
仕事をこなした事へ
「フレディ、ありがとう」
お礼を伝えた後、
「と言う事だから、ディランとルイはお風呂へ入ってきて。
それから晩餐にしましょう」
いつまでも土を付けたままで居る訳にはいかないと、ディランと
ルイを急かしそれぞれの部屋へ向かわせた。




