姉、叶う様に願った。
物事が進むのは何がきっかけだったのか
分からない程に日常の中に紛れ込み、
見つけにくい事がある。
でも、思い出せば思い当たる節などもあり
「ルイが密かに騎士団長と会って稽古をつけて
貰っていたとは知らなかったわ」
冷たい風の吹く中、余裕の動きと雰囲気でルイの
剣を受け流し、隙をついて攻めたはずのディランの
攻撃を受けるのでは体を逸らし躱す姿を椅子に座り
フレディと共に見学をしている。
なぜ、そんな話を知っているかといえば
「この前の勝負の続きだな」
ディランとルイとフレディと4人で、手合わせをお願い
していた騎士団長の元へ行った時の騎士団長の言葉に
「この前? ルイは騎士団長と会っているの?」
すかさず質問をし、返ってきた返事だった。
そこまで秘密にしたいものかしら?
自分だけが知らなかった雰囲気に、思わずフレディに
視線を向ければ気まずそうでもありつつ、誤魔化す様に
笑った表情に、除け者にされた怒りを込めジッと見つめると
「まだまだ日も短に事です、そろそろ始めませんか?」
自分の視線と感情から逃げる様に、従者の感情を隠した
微笑みと言葉に、ルイはディランの手を取り騎士団長と
足早に自分から離れて、早々に剣を交え出した。
いつものなら微笑ましく思え、応援する手に力が籠るが
今日ばかりはそれだけの感情だけでは無く、
ポツリとこぼした冒頭の言葉に、
「鍛錬というのは転がされ己の体に土をつけ、
悔しい気持ちで負けると分かっていても意地で立ち上がり
更に力と技術に経験の差を見せつけられ、再び土の上に
転かされる」
騎士団長の剣を正面から受けたルイは力負けをし、
体を振り回され地面に転がさた所で耳に入ってきた
フレディの言葉に無言で居れば
「その姿は親友であっても異性には見せたくないものです」
想像押していなかった言葉にフレディへと顔を向ければ、
にっこりと微笑み
「親友であれ、大切な人であれ、愛している人であれ、
常に頼れ、力強く、強い自分を見てほしいのですよ」
目に見えない努力になるはずだったが、こうして
見てしまっているので意味はないかも知れませんけど。
ルイの隠していた気持ちと行動をまるで自分の考えが
正解だというフレディに、
「フレディも、ルイみたいな時があったの?」
物心がつく前から1日中一緒だったはずのフレディに
いつそんな気持ちと行動をしていたのか気づかず、
質問をすると
「ええ、ありました。し、今もあります」
後半の予想もしなかった言葉に驚き見つめると
「エスメ様、お顔」
表情に出ていたようで、開けっぱなしだった口を閉じ
淑女の微笑みを作り見つめると
「そうですね。初めてそう思ったのはルイとよく似た
年齢の頃ですね。父に剣を習い始めて少し経った頃に
そう思いました」
懐かしそうに、視線を遠くに向けながらの言葉に
格好をつけたいのでは無く、自分ががむしゃらに
なっている姿を見られるのが恥ずかしいのだと
理解すれば、
今の自分には体験はまだないけれど、
前の人生ではあったよく似た感情に
「なんと無く分かったわ。この事もミランダには
知らせない方がいいという事もね」
ルイがそういう姿を望むのならば、
自分のそれを叶えるべく手助けをするべきだ。
多分、歳のことを考えて悩んで出した
ルイの答えなのだろう。
ならば、叶えて貰い、ミランダの前でルイが
理想とする姿で立てる様に後押しをするのみ。
知った事は知らないフリをし
見た事は見ていないフリをする。
ミランダの中では年下のおませな男の子という
ルイの姿を壊せるように、
「ルイの練習用の剣が刃こぼれや歪みが出たら
すぐに治せる様に手配を、後、数本の練習用の
剣も準備して欲しいの」
後押しすると言葉で告げずに、指示で伝えると
フレディは胸の前に手を当て
「かしこまりました」
従者として答えてくれた。
この会話の間にもディランもルイも何度も何度も
土の上に転がされ、悔しそうな表情をし立ち上がる
姿を見ていると、
怪我の心配ももちろんあるけれど、
ディランとルイの望む姿になれますように。
寒風が吹く空を見上げ、願った。
第438話
週末から本格的に寒くなるらしいと聞きました、出したダウンに袖を通す事になるのかな?
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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