姉、微笑ましく見守る
厳格な雰囲気のマナーの勉強から一変
紅茶の香り高い匂いが部屋中に広がればゆっくりと
穏やかな雰囲気に変わり、
「今日はダリオルを用意しましたわ」
アメリアの言葉と共に五指で刺されたお菓子は前の人生で
食べた事のあるエッグタルトで、
「どうぞお召し上がりになって」
マリーが興味深く見ている表情とルイの不思議そうな表情を
アメリアは嬉しそうに微笑み食べる様に促す。
このお茶会もマナーの勉強のうちだと言う事を忘れ、マリーも
ルイも恐る恐る手に取り繁々と見つめ続ける姿を横目に、一口
いただくとカスタードの甘くありつつもリキュールの香りが
ふんわりと口の中に広がり
「なんだか大人の味がするわ」
リキュールの味をどう伝えれば良いのか分からず、曖昧な感想を
言葉にすると、
「リキュールが入っておりますの」
淑女の微笑みの中に少しだけ得意げな表情を見せたアメリアの言葉に
マリーとルイもそれぞれ1口食べ、目を見開き驚いた表情をする中、
「見た目は華やかではないのですが、今後、王都で流行り
根付くお菓子ですわ」
確信を持って宣言するアメリアの言葉に
これから流行らせるお菓子なのね。
頭の片隅でアメリアの考えが分かり、
「そうね。これだけ美味しいお菓子だもの。
お茶会のお菓子として出しても見劣りはしないわ」
後押しをする様に頷き賛同すると、
「そうですね。こんなに美味しいお菓子ならば
皆、好きになると思います」
マリーも頷き感想を伝えてくれ、ルイは言葉は無いものの
ペロリと食べ終えた事で返事として伝えており、
「皆さんにそう言っていただけると嬉しいですわ」
品良くカップを持ち上げ一口紅茶を飲み、
「本日はお土産も準備いたしましたの。
長い夜を楽しむ為にお役立てくださいな」
優雅が微笑みと共に伝えられて言葉に、驚きつつも
「お心使いありがとう」
せっかくなので断りの言葉は口にせず、お礼を伝えると
「是非、皆様でお食べくださいね」
ディランや両親の分もあるのだと伝えてくれるアメリアに
言葉ではなく微笑みでお礼を伝えると、同じ様に微笑みで
返事を返してくれた。
自分が受け取る姿勢を見せた事で、マリーもルイも断りの言葉無く
お礼と共お土産を受け取る姿勢を見せ、
「皆で食べれるなんて夢の様です」
マリーは嬉しそうに微笑みつつ一緒に暮らしている子供達の事を
思い出している様で、目を潤ませており
「子供達にはリキュールが入っていないのを用意したので、
間違えて渡さないように注意してしてね」
「お気遣いありがとうございます。注意し渡します」
上位貴族の女性は教会や施設などに寄付や施しなど積極的に行うのが
当たり前として教育を受けているとお母様やお祖母様にミランダから
習いって吐いたけれど、
なるほど。こうやってさりげなくマリーに渡せばいいのね。
淑女として見本を示され、
ディランと相談して私もマリーの所に居る子供達や教会や施設に
何かできる事が無いか相談しなきゃ。
心の中で、ディランに話すことリストに刻みつつ、
「春のピクニックにダリオルを持って行ってもいいわね」
自分の中にある数ヶ月先のピクニック予定をポッリとこぼすと
「まぁ。そうしていただけると嬉しいですわ」
アメリアは嬉しそうに微笑んでくれ、
「ここにいる皆で行けたら楽しいですね」
マリーも声を弾ませ話題に乗ってくれたので、
「そうね。休日に外では難しいかもしれないけれど、
放課後に校庭かどこかでできたら良いわね」
授業中に密かに考えていた事を伝えれば、
「でしたら、とっておきの良い場所がございますわ」
意味ありげに告げられた言葉にマリーと視線を合わせた後、
アメリアの視線を向け話の続きを望むも
「場所は当日まで内緒にいたしましょう」
その方が楽しみが増えますでしょう。
悪戯めいた笑顔は少し幼さく見えたものの、
「そうですね」
マリーも無邪気に返事をし笑う姿が微笑ましく
「当日の楽しみにしているわね」
日にちすら決めていないお茶会は開催する方向で
話が盛り上がる中
「春が来る前に1度、我が家にてお茶会をいたしませんこと?」
アメリアの言葉に、
「公爵家にお邪魔するだなんてそんなことできません!」
両手を左右に振り慌て否定するマリーに
「あら。エスメさんのお屋敷には行っていたのに、わたくしの
屋敷には来てくださらないの?」
視線を下ろし頬に手をつけ寂しげに言葉をこぼすアメリアの姿は
どこか演技かかって見えたが
「それは! その、えっと」
私が公爵家の子供だと知らず行ってしまった。とは言えないマリーは
視線を左右に動かし必死に言葉を探すもアメリアが寂しげにため息を
落とすと
「い、行きます。お邪魔させていただきます」
アメリアの悲しんでいる表情に良心が痛み、断る理由が見つからず
慌て行く事を了承したマリーと
「まぁ。ありがとう」
先程の悲しみなど無かったかの様に嬉しそうに微笑むアメリアに
仲が深まっていることが分かり、年下の2人のやり取りを微笑みましく
眺めつつ、紅茶をいただいていると
「エスメさんもルイさんも来てくださいますわよね」
強めの圧を感じる微笑みにルイと視線を合わせた後
「お誘いありがとう。日にちが合えばお邪魔させていただくわ」
ディランに聞いてみないと参加しても良いのか分からないので、
断る返事もできるように言葉を作り伝えれば、こちらの意図を
察してくれたようで、小さく頷いてくれた。
第425話
ウイルスが大流行しております。どうぞご自愛ください。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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