姉、今一度考え直す
ボーイックのミランダ嬢の話が引っかかり集中力に欠け、
時折聞き漏らしノートに取り忘れたりしたが何とか授業を終え
ルイとマリーと共にアメリアの元へ向かった。
マリーとアメリアのやりとりをぼんやりと眺めてしまい、
お茶会の時に
「エスメさん。今日はどうしましたの?」
アメリアからの心配と注意の言葉に曖昧に微笑み誤魔化したが
マリーに自分の態度の原因を尋ねられ、
「多分ですが」
困った様に眉を下げながら自信なさげにアメリアの事ではないかと
話終えたマリーにミランダは小さく頷き
「そうでしたのね」
持っていたカップをソーサーに戻した後、
「わたくし、ミランダ様とは1度お会いした事がございますわ」
予想外の言葉に思わずアメリアを見つめると、小さく微笑まれ
「噂とは正反対で、幼き頃より自分にとても厳しく努力を怠らず。
でも、使用人や平民には優しく接しており、淑女の中の淑女として
ご自身のお立場の重圧に負けず凛と立っておられました」
初めてお会いし尊敬と憧れを持ちましたの。よく覚えておりますわ。
懐かしそうに目を細め語るアメリアに、本当のミランダを知っている事に
安堵し嬉しく思っていると
「そうなのですね。私、吟遊詩人の方の話を信じてました」
顔色悪くし、申し訳なさそうに告げるマリーに
「今までのマリーさん立場なら仕方ありませんわ。
ただ、これからは真意をしっかり見抜かねばなりません。
これも練習と実体験し良い経験になったと捉えれば問題ありません」
マリーはこれから沢山の人々と会い話す立場となる。
「脅す訳ではありませんが」
王家の庇護に入って言うとけれど安心できる訳で無く、多くの人が
自分を主体と考え利益や有利になろうとマリーに近寄ってくる。
勿論、純粋にマリーの協力や助けをしたいと考える人達もいる。
それを見抜き、時に察知し自分の力で回避をしてゆかねばならない。
敢えて感情を出さず淡々と告げた言葉はこちらの身を正せる雰囲気と
力があり、マリーも真剣に聞き頷いている。
「その為に人物を覚え、領の状況を把握し少しでも知識を取り入れ
沢山の人に会い、沢山の話を聞き経験を積んでゆく事です」
勿論、怒りに身を震わす言葉に涙を流したくなる言葉も言われるでしょう。
それも経験と体験をしなければ得られなかった知識としてどんなに苦しく
逃げ出したくなろうとも受け入れなければなりません。
アメリア自身、沢山の経験をしてきたのであろうと察し説得力がある言葉に
マリーだけではなくルイと共に聞き入り、
「そうね。怒りや悲しみは冷静に物事の判断ができなくるもの。
隙を与えば足元を掬われるわね」
アメリアの言葉に自分の感想を告げると、
「ええ。ですから揺さぶられない平常心と感情を悟らせない微笑みが必須なのです」
貴族の微笑みである感情を悟らせない微笑みを見せたアメリアに
今ませ習ってきた作法の必要性を理解したマリーは背筋を伸ばし
真剣な表情で頷いていた。
ままならないわね。
騙し騙されなんて無い方が良い。
物語でもそんな世界は少ない。
自分を傷つける人達には近づかないのが心身の為ではあるが、
中々、回避か出来ない時が多い。
習う事1つに必要な意味があり、
それ以上に身につけた知識や学問は身を助ける事となる。
改めて自分にも言い聞かせ、お茶会後のアメリアの淑女教育に
真剣に耳を傾けた。
第410話
寒暖差が激しくなっておりますが皆様いかがお過ごしですか?衣替えしたのを後悔しております。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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