姉、寝落ちする
閉じていた瞼を開ければ誰もいない自室で、ひんやりとした
先程まで居た領の屋敷との温度差に身震いをし慌て火の魔術と
風の魔術を発動させ部屋を温めつつ、部屋に灯りを灯す。
適温になりソファに座り楽しかった余韻に浸りぼんやりし
時折話に出た会話を思い出し
「楽しかったなぁ」
言葉が溢れた。
久しぶりのミランダとの会話はマリーやアメリアとは違う
楽しさがあり、どうしてだろうと考えれば
同じ様に毎日会っていて、沢山の人達に囲まれながらも会話をしていた。
学園と領では環境が違うからかな？
ぼんやりとした為か眠気が小波のようにやってき脳の動きが鈍くなる。
考える事を止めてベットに入れば良いのだが、動く気にもなれず
ついつい思考の奥へ入ってしまう。
マリーもアメリアも話を聞いているのはとても楽しく、時に勉強になる。
これはミランダと話していても同じ事で、
双方の楽しい違いが気になり考えが止まらなくなる中、
そっか。ミランダとは話す時は私が主に喋り、ミランダが聞いてくれる事が多い。
マリーとアメリアとは話を聞き、時折返事や感想を言う事が多い。
この違いだわ。
双方の違う楽しさがあるのね。
疑問が解決、満足感と充実感で気分が高揚し小さく笑い
「本当に楽しかった」
力の抜けた体はソファに倒れるように横になり誘われるままに瞼を閉じた。
奥深く真っ黒の中にある意識が何かに気付き、そちらに意識を向けると
名前を呼ばれている声が聞こえ誰だろうと意識を向けると、今度は
体を揺すられている感覚があるが、この暗闇が心地良く呼んでいる声が
煩わしく思いつつ、
もう少しこのままでいさせて欲しい。と、願い出ようと唇を動かしかけるが
「あねさま」
愛おしい声が聞こえ、心地良さを振りきり瞼を開ければ鷹色の瞳が見え
「姉様、起きてください」
心配の色を濃く出した声で呼ばれ願われる言葉に、少し視界が霞むものの
「でぃらん」
掠れた声で名前を呼べば、嬉しそうに目を細め
「おはようございます」
聞こえてきた朝の挨拶に
「おはよう？」
疑問に思い重い体を動かし周りを見ると、ソファにいたままらしく
首を動かし周りを見ると、心配そうに自分を見るディランとフレディと
その後ろにはマルチダも居り首を傾げると
「エスメ様、体調はいかがですか？」
フレディの言葉に自分の体の状態を見つつ
「大丈夫だけど、身体が痛いかも」
動く度に痛みを感じる事を告げれば、
「ソファで寝ていたので、原因はそれかと思います」
体の重さとフレディの言葉に、後悔と自己嫌悪が頭と心の中に渦巻き
このままソファに倒れ込みたい気持ちになったものの、
「フレディ、姉様の痛みを和らげる方法は無いのか？」
自分の性なのに、優しい気持ちをくれるディランに癒されつつも
これ以上は見苦しいかっこはお姉ちゃんとして許されるはずもないと
気合いをいれ体の痛みを無視し背筋を伸ばし座り直をした後、
「もう大丈夫よ。心配かけてごめんなさい」
頬が引き攣った気がするも、無視をして微笑めば心配の色が薄くなったが
「姉様、ベットで無くソファに寝るとはどう言う事ですか？」
瞳の中に怒りの色が見え始め
「えっと。楽しかったので思い出していたら寝てしまった様で」
視線を左右に彷徨わせ、自分が悪い事は分かっているので言い訳などせず
そのまま伝えると、ディランから大きなため息がこぼされ
「お疲れなのは分かりますがベットで寝てください。それと、領へ行く際は
僕かフレディやマルチダに託けてから出かけて下さい。
誰にも告げずに居なくなっては、皆が心配します」
普段より少し低く早めで告げられた言葉に頷き続けたものの
「言ってなかった？」
ディランの言葉に首を傾げ尋ねると
「ええ。ここに居る3人共、聞いておりません」
ディランに力強く頷かれ、フレディを見れはこちらも真剣な表情で頷かれ
マルチダを見れば小さく頷き返され
「本当にごめんなさい。以後、気をつけます」
準備と楽しみに浮かれていた事を反省し謝罪をすると、
「エスメ様、入浴の準備が出ております。まずは身なりを整えましょう」
いつまでも寝起きのままではと気遣ってくれたマルチダの言葉に頷き
「ディラン、フレディ。様子を見にきてくれてありがとう」
お礼を言うには場違いな気もするが、どうしてもお礼を言いたくて伝えると
表情に呆れの色が見えたが、
「朝食の時にお会いできるのを楽しみにしております」
言い終わるとフレディを連れディランは部屋へと戻っていった。
第406話
この数日の暑さで金木犀が一気に開花しふんわりと良い香りがしております。癒されますね。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です？婚約者のお義姉様はどうなさったの？大変！廃嫡とざまぁを回避しなければ！
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