姉、出発した
瞼を閉じてはいたものの、王都の自室に居た時より寒く
領の屋敷へ到着したのだと目を開ければ数ヶ月前まで
過ごしていた自室で、ベットや机にも白い布が埃除けとして
かけられていた。
懐かしく思いつつも、部屋を出てどう声をかけようかと
思案していると、聞こえてきた扉からのノック音に返事を
返すと、慌てたように勢いよく扉が開き、見えた人物と
目が合うと目がこぼれ落ちるのでは無いかという程に見開き
唇とはくりと動かす姿に
「おはようございます。ボアさん」
懐かしくも、初めて多くな感情を見せるボニーさんに
驚きつつも挨拶をすると、驚きから意識が戻ったのか
「え、エスメさまがあぁ!」
初めて聞く大きな声と慌ただしく大きな足音に驚かせてしまった
事への申し訳なく思いつつ、部屋から出るべきかどうするべきか
二の足を踏み迷っていると、数名の足音と窓の外から何か言っている
声が聞こえて出し、
「エスメ様!」
急ぎで来てくれたのかテアさんが息を切らして部屋に入って来た。
「テアさん、おはようございます。お久しぶりです」
ボアさんと同様に挨拶をすると数度瞬きを見た後、上を向いてしまい
どうしたのかと1歩近づくと
「エスメ様」
少し低く落ち着きのある声に視線を扉へ向けるとハンナさんの姿があり
「お帰りなさいませ、エスメ様」
メイドとして腰を曲げ一礼をしてくれたハンナさんに
「ハンナさん。ただいま」
2人とは違う挨拶をすると
「お元気そうで安心いたしました」
頭を上げた後に微笑みながらの伝えてくれた言葉に
「ありがとうございます。私もディランもフレディも両親も皆、
元気に過ごしております」
同じ様に微笑みお礼と返事を返せば
「奥様がお呼びになっております」
告げられた言葉に頷き、落ち着きを取り戻したテアさんの耳元で
何かを囁いた後、手に持っていた荷物をハンナさんから手渡す様に
告げられた後移動するように促された。
見慣れた廊下を歩きお祖母様の仕事部屋へと
案内され、ノックと告げられた自分の名前を聞き、お祖母様の声が
扉越しから聞こえると、心の中がじんわりと懐かしさと会える嬉しに
弾み出す。
開けられた扉から、入れば数度お邪魔した見慣れた部屋と凜とした姿の
お祖母様の姿に駆け出したくなるが、弾む心を抑え数歩部屋の入った後
ワンピースの裾を少し掴み片足を斜め後ろに下げ、深く膝を曲げ敬愛を
示しカーテシーをする。
「久しぶりね、エスメ」
上位であるお祖母様の言葉に姿勢は戻さず
「ご無沙汰しております」
カーテシーの声が籠り聞き辛く無いように重心に力を入れ声が震えない
様にお腹に力を込め挨拶を返すと
「顔を上げてちょうだい」
お祖母様から許可が下り見苦しく無い様に慎重に体を起こし、
引いていた足を元の位置へ戻し、お祖母様のお顔を拝見すると
「急な訪問で驚いたわ」
親しみを込めた微笑みに、
「ごめんなさい。実は魔法石を届けた来ました」
手紙で知らせなかった事への謝罪と急に来た理由を伝え、
壁側で控えていたハンナさんへ振り返り荷物を受け取り
お祖母様の専属のメイドへ手渡し
「そろそろこちらは雪が舞う頃かと思いまして、火の魔法石と
風の魔法石を多め作りお持ちいたしました」
受け取ったお祖母様は中の確認をし、
「水の魔法石に、土と木の魔法石もあるのね。ありがたい事だわ」
雪に覆われ井戸まで辿り着けないキッチンや入浴への使用が多い
水の魔法石は土と木よりも少し多めに作ったが、どうやら足りる
数がある様で心の中で安堵の息を落とす。
「屋敷で働く全員分の火と風の魔法石がありますので、寒さが
強くなるこれからにやうに立てて貰えればと思います」
そう伝えると、部屋に控えている数人のメイドさんが嬉しそうに
微笑を見せてくれ
「配る手配をするわ。誰かイルを呼んでちょうだい」
お祖母様の指示に頷き部屋を出て行く姿を見送り、
「そろそろ旦那様も到着するでしょうから、お茶を飲みながら
待ちましょう」
お祖母様のお誘いの言葉に頷きソファへ腰を下ろすと、お祖母様も
机から離れ正面の1人がけのソファに座った。
第401話
10月に入りましたら急に秋めいて来ましたね。体調に気をつけ1ヶ月過ごしたいと思います。
ブッマークや評価、いいねボタンをいただき誠にありがとうございます。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
https://ncode.syosetu.com/n9341hw/




