姉、答えを貰う
「では行って来ます。くれぐれも暇だからとベットから出て動き回る事はしないで下さいね」
ディランの注意に、
「分かってるわ。ディランもお土産の飴を忘れないでね」
頷き、お土産の催促を足して見送りをした。
ディランの言う通り熱が引いて体が楽になってしまうとベットの上は何もできず退屈でつい部屋中を動きたくなるし魔法石に魔法を込めて実験したくなってくるが、外では魔法を発動させない約束を思い出しぐっと堪える。
そうなるとやる事が無い。
淑女として刺繍を刺せば良いのだけれども不器用で針を刺せば手の平や指を刺し、どうにか形になっても美的センスが無いので構図通りに刺せた事が無い。
あまりの悔しさに
「これも1つの芸術よ」
そう胸を張って告げれば、
眉間に皺を寄せながらも何かと褒めてくれるディランには大きなため息を落とされ、お父様は頬を引き攣らせ、お母様には額に手を当て困らせ、ナニーは絶句し家庭教師は教える事を諦める始末。
何故か説明書や手順通りにこなせば出来るという物程、完成品とは程遠い形になってしまう。
淑女の皆さん尊敬するし敬意を示すわ。
幼心にそう思った。
少し苦い思い出が蘇り、忘れる為に窓を見れば空色に白い雲が風に流されてる風景に
空を飛びたい
こんな天気の日に飛んだら気持ち良いだろうなぁ
数日前の事を懐かしんでしまう。
領地に着いたら目一杯空を飛んで、満足するまで魔法石に魔法を込めよう。
そうだ!独り立ちする為の練習もしなければ。
先程まで落ちていた心が浮上し弾みだす。
独り立ちをするのは何をすれば良いのかしら?
朝の準備は自分1人で行うのよね。
自分1人でできる事を考えてみるが思い浮かばず空から視線を動かし部屋を見渡すと壁のそう様に騎士団長が立っており、
「騎士団長」
声をかけると、少し早足でベットまで来てくれ膝を折り
「如何いたしました?」
視線を合わせ尋ねてくるので、
「話し相手になって欲しいの」
嬉しくなり微笑みながら伝えると、
「畏まりました」
頷いた後、大きな体を動かし
「失礼します」
一言断りの言葉の後、朝食の時と同様に起き上がら背もたれを作った後ベットサイドに置いてある椅子に腰を下ろした。
「どの様な話をしましょうか?朝にお話しした遠征の話の続きをいたしますか?」
どこか困った雰囲気があるものの、会話を先行してくれる騎士団長に
「その話の続きも気になるりますが騎士達で食事の準備をしていると伺いましたがクックの家の人が居るのですか?」
ふっと思い付いた事を尋ねると、
「いえ。上級貴族出身の騎士には専属の者達が着いて来ますが、自分達の様な下の立場は全て自分達で行います」
小さく首を振り、教えてくれた言葉に
「全て?」
再度聞き返すと
「食事の用意に使った食器や器具。風呂も洗濯も破れてしまった服を縫う事もします」
帰って来た答えに驚き
「騎士団の皆様は器用なのですね」
関心をすれば、
「いえいえ。男同士ですし見栄を張ることも無いので大雑把なものですよ」
恥ずかしそうにでもどこか照れている姿に、
「騎士団皆様を尊敬します」
微笑み告げると、
「ありがとうございます。帰りましたら全員に伝えます」
先程までの照れ恥ずかしそうな雰囲気が消え去り真剣な表情で言葉が返されるので、
「私、領地に着いたら独り立ちをする為の練習をするのですが、何をすれば良いのか全く解らずにいるのです」
思わず、先程考えていた事をこぼせば、
「成程。確かに解らないのも無理のない事です」
真剣な表情のまま頷き返してくれるので、
「騎士団の皆様の様に、料理や洗濯が1人でできれば独り立ちになるかしら?」
再度質問をすると
「そうですね。自分が考える独り立ちですと衣食住は1人でこなせる事では無いかと思います」
答えてくれた言葉に改めて考える。
「1人で服を選び、1人で着替えを済まし1人で洗顔や髪を結う。これで合っていますか?」
三度質問をするも、
「合っているかと。難しく考えずにマルチダやメイド達が行っていた事を真似をすれば良いかと思います」
嫌の顔せず、真剣の表情のまま私の質問に真意に考え言葉を返してくれるので納得しやすく、
「言われてみれば、先程言った事は屋敷ではマルチダが行ってくれていました」
悩んでいた事が一気に解決に向かい
「ありがとうございます。騎士団長に質問して良かったです」
どこか引っかかっていた心が解れ軽くなり、あれもこれもと考え始めると
「今はまだ大事を取らなければならない時です。骨折が治りリハビリが済んだ後から練習を始めのが良いかと思います」
楽しくしなる日々を想像し胸を膨らませていたのにストップをかけられるも、右腕に視線を向け
「そうですね。早く治る様に頑張ります」
木で固定された腕に気持ちを切り替え、騎士団長の言葉に頷き返した。
それかも、質問をし答えを貰う事を繰り返していればノックの音に会話を止め対応する騎士団長から視線を外すと部屋の中の窓枠の影が長く伸び始めており、長い事話込んでいたのだと思いサイドテーブルに置いてあるピッチャーに手を伸ばすも、フレディの手が伸び果実水がコップに注がれ手渡される。
「ありがとう」
あまりの早技に動けずに無意識に手渡されたコップを受け取ってしまった事で気が付き慌て礼を伝えると
「片手では難しいかと思いますので遠慮なく申し付けてください」
微笑みながらの言葉に頷き、一緒に入って来たディランに視線を向ければ
「フレディの言う通りですよ。いつもは出来ていても片手では出来なことは沢山ありますので動く前に仰ってください」
どこか呆れの色が含んだ言葉に
「ごめんなさい。気を付けるわ」
素直に謝り、持っていたコップに口を付ける。
ゆっくり数回に訳て飲み干し空になったコップをフレディに渡し先程まで騎士団長が座っていた椅子にディランが座ると、
「姉様にお土産です」
青いリボンにラッピングされた片手で持てる程の小さな白い箱を受け取り、
「ありがどう。早速だけど開けても良いかしら?」
嬉しくなりはやる気持ちを隠す事ができず聞けば、頷き返してくれたのでゆっくり慎重にリボンを解き箱を開けると、赤色い果実が4つ入っており
「なんでもラズベリーだそうですよ」
この領地のみ果実にすぐに食べてみたい気持ちもあるが晩御飯が近い時間帯なので気持ちを沈め箱を閉め
「食後の楽しみに取っておくわ」
後ろ髪引かれる思いでリボンを丁寧に巻きフレディに箱とリボンを渡し、
「街はどうだった?何か楽しい事や面白い事はあった?」
再びディランと向き合い早速問いかけた。
第40話
何故かとても書きやすかったです。
暑かったり肌寒かったり服選びが難しい日々ですね。皆様はどう対応されてますか?
誤字脱字報告ありがとうございます。とても嬉しく感謝しております。
ブックマークに評価や星を押していただきありがとうございます。
とても嬉しいです。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
よろしけれお読みください。
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