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姉、魔術省に報告へ行く

2023/04/12誤字修正をおこないました。教えてくださった方ありがとうございます。

灰白色の雲が空を覆い湿った空気が広がる中、馬車に乗りゆっくりと流れる風景を小さな窓からぼんやりと眺める。


久しぶりに両親に会い出かける場所に憂鬱な気分になる中、見送りに来てくれた弟だけが笑顔で見送ってくれた。


白いシャツに黒色のショートのスボン。

鷹色の髪が天使の輪を作り思わず手を伸ばしかけるも、


「姉様」


にっこりと笑いながらも目が笑っておらず、伸ばした手を慌て引っ込め誤魔化す様に笑った。


「姉様、これから行く場所は分かっているのですか?」


少し怒った感じと心配する言葉に、


「分かってる。いつも通りやってくるわ」


笑顔で頷けば、心配そうな雰囲気のまま頷かれ弟のエスコートで外で待っていた馬車へと案内をされ今に至る。


馬車が止まり父親の手を取り降りれば、騎士2人に促され館に足を踏み入れる。

室内に入れば見慣れた人物に一礼され部屋へ案内された。


「魔術省へようこそ。お忙しい中ご足労をいただきありがとうございます」


来慣れた応接間には何度も顔を合わせている細身の中年男性とお腹が出ている中年男性の2人がそれぞれ両親に挨拶をし、ソファーに促され腰を下ろす。

普段着なれないドレスのスカートに気を付けていれば先程案内をしてくれた人物が紅茶とお菓子を出してくれる。


目を合わせ微笑み目礼をすれば、目礼を返してくれた。


季節の挨拶や当たり障りない世間話をする大人達を眺め紅茶を1口飲めば、


「エスメ嬢、ご両親からお聞きしたのですが箒で空を飛んだと言うのは本当ですか?」


台本でも有るかの様にいつも通り、お腹の大きな中年男性が声をかけてくる。

何故かニヤニヤとしながら話しかけてくる彼に嫌悪感を感じながらもはいと返し頷けば、


「それはそれは。是非拝見させねばなりませんなぁ」


芝居の様に大袈裟な頷きと言葉がきっかけに全員で庭に出る。


やる事は変わらない。


新しくできた魔法のお披露目。


何度も何度繰り返し、手を変え形を変え同じ魔法を繰り返す。

できる出来ないの境目を見極め記録を作る。


今回は屋敷で飛んだ箒と魔術省で用意された数本の箒と交互に飛び、小さな違和感や違いを報告していく。


私が考えた魔法を他の人でも使える様に研究をし記録を作るのだとか。


生活魔法道具も1個作成しこの場で発表するとすぐ様類似の道具が発売される。


国の発展の為だと聞かされても、道具を作り出した者の宿命だと聞かされても、面白くない気持ちと納得する気持ちが混ざり合い複雑な気持ちになるも、魔法を使う者としての役割、淑女としての振る舞いで微笑み何事も無いように対応している。


気持ちがモヤモヤするのも嫌なので最近は魔法ばかりしていた。


癒しの弟は留守番でここには居ない。


早々に終わらせよう。


両親や先程の2人に更に人が増えるが全員が一定の距離を取り合図を出され、まずは屋敷から持ってきた箒に跨り風魔法に発動させる。


自分の体を中心に左右から抑えるように体を固定出来れば、今度は下から上へと風を起こし体を浮かしていく。


両親達の驚愕する表情を視界に端に捉えると少しだけ心が軽くなり浮上する中どこからか視線を感じ探せば窓に子供達が居り自分を見て驚きの表情をしていた。


ディランと同じぐらいかな?


弟が魔法を初めて見た時と同じ表情に嬉しくなり眺めていれば服装から女の子と男の子だと分かった。


兄弟かな?友達同士かな?幼馴染とかだったら素敵だよね。


微笑ましく思うも現状浮く事を止める訳には行かず、更に浮上すれば子供達の姿も小さくなり見えなくなった。


そろそろ良いかな?


建物の屋根が眼下に変わり、停止をしぐるりと周りを見渡せば目の前には一際大きな建物が見える。


王城かな?


どこか威厳を感じる雰囲気の建物を見つめた後、顔を左右動かし広がる街並みを堪能した後ゆっくり下りて行く。


畏怖、恐怖、困惑に嫌悪感


様々な感情が混じり合う雰囲気でも出迎える全員が笑顔の姿に、心の中でため息と裏と表の違いに気持ち悪さで顔を顰めるも、淑女として笑顔で見て見ぬふりをし早々に違う箒に持ち変え再び空へと飛んだ。


何度も何度取っかえ引っ変え箒を変え飛び真上にあった太陽が傾きだした頃、


「もう、大丈夫です。ありがとうございました」


終了の言葉が入り無事終わった事に心の中で安堵の息を落とし両親の元へ近寄れば背を向けられ全員で移動しお茶会へと入っていく。


両親とは違うテーブルに案内され周りはまた馴染みある顔ぶれが揃っていた。


全員が魔術師として省に務めているのだと初対面で紹介され、私の作った魔法を研究し後世に残すように集められた人達だとか。


最初はどこか纏う空気が一人一人違う人々に他国の人達なのではないかと思うも、自国の言語で会話が進められれば、探る事は失礼になるのではと見て見ぬふりをし、彼らから様々な質問に受け答えしながら紅茶を1口飲み込んだ。


それは今も変わらない。


「どうして箒で空を飛ぼうと思ったのですか?」


正面に座る人物の質問に


「箒を跨いだら空を飛べると思ったからです」


そう、私の夢中になった子は楽しそうに箒で空を飛んでいた。

違う子は箒に跨り海を越えていた。

また違う子は箒に跨りスポーツをしていた。


夢中になり憧れた子達は箒で空を飛んでいたから私も箒で空を飛びたかった。


だから飛んだ。

それだけ。


勿論憧れた人達の事は話さないけど、

それを言葉にすれば困惑の雰囲気が広がり出す。


「浮いた魔法は風魔法と聞いておりますが本当ですか?」


戸惑いを隠すことができず右隣の青年から少し早口で質問される。


「はい。先程お見せしました全てが風魔法で行なっております」


身体ごと青年へ向け、目を合わせ返事を返すもさりげないく逸らされ


「我々の魔力の量では人ひとり浮かす事などできません。さすがですね」


空々しく褒める言葉に微笑みの表情を変えず礼を返した。


気分転換に1口紅茶を飲むも美味しさを感じられず、何度目かのため息を心の中で落とす。


早く帰りたい。

帰ってディランに癒されたい。

勉強頑張っているかな?剣の稽古で怪我をしてないかな?


頭の片隅で弟に想いを馳せ、止まらない質問に答えを返す。


「飛んだ時に使用した風魔法は3種類で間違いないですか?」


いつもは黙って聞いていた左側に座っていた青年からの質問に少し驚きながらも


「はい。体を浮かしたり下ろしたりする為の下上へ動かした魔法と落ちない様に左と右から自分に向けた魔法この3種類です」


右にいた人物と同様、体を動かし目を合わせ返事をすれば目を逸らされる事は無かった。


彼だけは目を逸らさずにいてくれる。

他の人達より少しだけ好感が持てるし、質問も他の人が見逃しそうな基本な事を聞いてくれるし、

何より嫌悪も畏怖も無く受け入れてくれる貴重な人だ。


ほんの少し、ここに来て良かったと思える瞬間で自分の魔法を認めてくれている嬉しさを感じる事ができる嬉しい時間でもある。


それからは左側の青年が中心になり質疑応答で2時間程過ぎた頃終了となった。


見送りを全員でされ、父親の手を借り馬車へ乗り屋敷へ帰る。


その道中、父から


「屋敷内なら毎日でも飛んでもいいが外を飛ぶ時は人目を避けるようにしなさい」


そう注意を受けた。


なんでも平民達か見たら驚いてしまうから。


そう言われれば確かにと納得もできる。

ただ空を箒に跨って飛びたいと思っただけで今後の事は考えてなかったので父の言葉に頷き、


「分かりました」


返事を返せば安堵の表情で頷き返され、母の方に視線を動かすので釣られるように母を見れば、


「先日の落下もあります。できれば危険な事はしないで欲しいけど強制はしません。飛ぶ時は十分に気をつけてね」


母から言葉に頷き、


「はい。気をつけます」


力強く頷き返せば微笑み返される。


忙しくて中々会えない両親だけど、魔術省に行く時は必ず付いて来てくれるし休日にはお茶会や晩餐をしお互いの近状報告をする。

寂しさを感じるが少しでも会えるよう時間を作ってくれているのを知っているので我儘は言わない。


私より弟の方が寂しい思いをしているだろう。


しっかりしている弟でも私の前だと敬語が崩れる時がある。可愛いので指摘はしない。

出来ればずっと敬語と崩した言葉を交えて話しかけて欲しい。なにより気が付いた時に悔しそうに恥ずかしそうにする表情が本当にたまらなく可愛い。


早くディランに会いたいなぁ


恋しくなってきた気持ちを心の中を満たしながら、行き同様にゆっくりと流れる街並みを眺め続けた。


第4話です。

少しですがこの話の世界感と価値観を書きました。

主人公は弟の事が可愛くて仕方ないのです(笑)


沢山の方にお読みいただける更にポイントやブックマークをいただいたありがとうございます。


大変嬉しく思います。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。よろしけれお読みください。



https://ncode.syosetu.com/n4082hc/

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