姉、友達の言葉に悩む
日中と朝夕の寒暖差が無くなりバラも終わり、庭に色が少なくなり
樹木は休眠に入る為に葉の色を変えたり、風に吹かれて葉を落としたりと
間も無く訪れる冬の準備に入った。
秋から始まった学園も数ヶ月過ぎクラス全員とは顔見知りとなり
上級生の平民クラスとも挨拶を交わし続けたことで互いの存在を知る
仲となり、時に貴族クラスの制服を着た生徒から親しげに話しかけられる
事が多くなってきた事に気づき
「有難いことよね」
自分の席に座り前に座るルイと横に座っているマリーに話題として
話すとルイにはため息を落とされ、マリーは困った様に眉を下げながら
微笑み返してくれた。
「そんな困らせるような話ではないと思うのだけれど?」
2人の反応に返事を返すと
「エスメさんは好みの男とか好きな男とは居ないの?」
朝の挨拶の前に質問と共に自分の机に荷物を置いたボーイックの
言葉に朝の挨拶をした後に
「好きな人に好みの男性ねぇ」
突拍子も無い質問に首を傾げつつ考えてみるが、
「好きな人は居ないし、好みの男性は分からないわ」
誰1人思い出す人はおらず、ましてや好みの男性を聞かれても思いつく
事も無い。
前の人生の夫は好みというよりこの人となら困った時、助けて欲しい時に
声を上げれば手を伸ばしてくれ、喧嘩をしてもお互い様と思え長い人生
一緒に居られる。そう思い結婚し家族となった。
なので好みの人と結婚した分ければ無い。
今世の好みの男性と言われても周りは皆ディランと同じ歳で弟や
妹のようだし、上級生はと言われても相手の名前も知らないので
何も言えないのが現状。
考えた末に出した答えにボーイックはお気に召さなかった様で
「顔が良い、優しい性格、お金持ち、爵位持ちなど1つも無いの?」
何かあるだろうと告げられた質問に首を振り
「好みは無いわ。けど、お互い助け合える人が良いとは思う」
他人と1つの家に暮らすのだから同然、嫌な事も知りたくなかった事
も知るし嫌でも目に入る。
けれど、自分だって相手に嫌な思いや目に入れたく無かった事があるのは
当然だからお互い様いう理想を現実にしたい。
勿論ディランは、お互い様をきちんと理解ができ助け合える子なので
是非、ディランの所へお嫁さんに来て欲しい。
理想と現実の難しさを1人考え込んでいたが周りの空気が違う事に気が付き
「それは当たり前のことだろう」
ルイの呆れながらの言葉に
「いいえ。その当たり前の事が難しいのですよ」
マリーが真剣な表情で返していた。
教会には懺悔室もあるし、沢山の悩みを持つ人達が集まってくるから
人生のあれこれを聞いて知っている感じかしら?
説得力のあるマリーの表情と声の力にそんな事を考えていると
「ならば、僕と恋人関係になるのはいかがですか?」
突然のボーイックの言葉に驚きながらも、
「素敵な発案だけれどもお断りをさせていただくわ」
ミランダに習った淑女の微笑みと共にお断りを入れると
「そうですか。残念です」
あっさり引いたので自分の答えは間違ってなかったと思いつつも
「揶揄うつもりでそんな言葉を言うものでは無いわ」
一応と思い注意をすると
「揶揄うつもりはありませんが、今の所はその答えで良いです」
理解し難い返事が返り、どういう意味か尋ね様にも教授が来た事で
話を続けられなくなり、心の靄が残る中授業が始まった。
休憩の度に尋ねようと思うもタイミングが合わず、時間が過ぎれば
過ぎる程に聞き辛くなり、最後まで尋ねることができず放課後の
淑女マナーの時間となってしまった。
ルイと共に壁際に控えマリーとアメリアの様子を見守りつつも
どうしてもボーイックに言われた言葉が気になり集中できないでいると
「今日はどうされたのですか?」
アメリアの言葉に思考の渦に飲み込まれた事に気づき慌て思考を切り
替えると心配そうな表情をしたアメリアに
「申し訳ありません。少し考え事をしておりました」
講習の邪魔をしてしまった事へ謝罪をすると
「気にしていないわ。そうね、もしよろしければ話を
聞かせて貰えるかしら」
純粋に心配をしてくれているアメリアに嬉しくも申し訳なく思い
朝の出来事を話すと真剣に話を聞いてくれ
「そう。確かにそんな事を言われると気になってしまうわね」
自分の事のように返事をくれた上に
「本人がそのままで良いと言うなら今まで通りでよろしいかと思いますわ」
思い悩んでいた事への助言も貰え靄は晴れてゆく中
「思わせをするなんて、自意識が強い方なのね」
アメリアが小さな声で溢した言葉に
「将来は商会を任させ仕切る立場ですので、自分に自信がある事は良い事です」
同じように小さな声で返事を返すと小さな返事を返され、マリーとルイが
準備整えてくれたお茶会のテーブルの準備が整った事を告げると、
「まぁ。マリーさんルイありがとう」
嬉しそうに微笑みルイが引いた椅子に腰を下ろし全員が椅子に座ると
小さなお茶会が始まった。
第395話
赤蜻蛉が横切る風景を見ましたゆっくりと秋になっているのですね。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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