姉、突然の出来事に驚く
それは突然の出来事だった。
同じ年齢でも貴族クラスと平民クラスではお昼の時間も違えば
授業の終了時間も違う。
平民クラスである私やルイは貴族クラスのディランより30分程
早く授業が始まり、早く終わる。
平等と謳っているが、互いに身を守る為に自然とできたルールで
この数十年は大きな問題は発生していないらしい。
互いに気持ち良く過ごすための約束ではあるものの、時に
破られることもある。
「ルイさん」
放課後の淑女教育が終わりマリーとルイと歩いていると、
制服の違う少女にルイが呼び止められた。
自分達が着ている紺のワンピースではない制服は貴族である事を
示しており、呼びかけられたルイは表情を変えないが、
数年、ほぼ毎日過ごしてきたので
めんどくさい。
そう心の中で思っているのが分かり、心配の気持ちを込めルイに
視線を向けると
「マリー。エスメと一緒に先に行っててくれ」
気持ちを悟らせない普段と変わらない声と言葉使いにさらに心配に
なるが、さっさと行けと言わんばかりの視線を向けられ、
「マリー。お願いできるかしら?」
自分と同じ様に心配そうにルイを見ているマリーに声をかけると
ルイと交互に視線を向けた後、
「勿論です」
力強く頷いてくれた後、なぜか手を握られ足早にルイと少女が居る場
から離れて行く。
小走りとまではいかないものの、普段より早く足を動かしているので
息が上がり出した頃、馬車が見えフレディがこちらに向かって走って
いる姿が見えた。
「エスメ様。マリー嬢」
心配が籠った声で名前を呼ばれ、ようやくマリーの足が止まり荒くなった
呼吸を整える為の深呼吸を繰り返していると
「ルイさんが貴族クラスの女生徒に呼び止められまして。私達に先に行く
様に告げられました」
マリーが現状説明をしてくれ、
「左様でございましたか。エスメ様をお連れいただきありがとうございます」
フレディは胸に手を当て礼をした後、馬車の中に入る様に促してくれ、
座席に腰を下ろすとようやく一息つけた。
「ルイを呼び止めた女生徒さんは初めて声をかけて貰ったのだけど、
私の覚え間違いかしら?」
首を傾げ記憶を探すも全く思い浮かばずに居ると、
「私も初めてお会いしましたので、エスメさんの記憶が正しいと思いますよ」
困った様に眉を下げながらの返事にさらに首を傾げると
「エスメさんはご存知無いかもしれませんが、ルイさんは女生徒にとても
人気があるのです」
マリーからの言葉に驚いていると小さく笑われ
「入学式以降、同じクラスの女生徒から始まり魔術の実地授業後からは
貴族クラスにも人気が広がりました」
自分の知らないクラスの現状とルイの周辺事に戸惑い頷き返すと
「平民でもあるものの所作の良さと品のある言葉使い。身の危険が迫った
時に素早く動いて助けてくれたかっこ良さと武術の腕前が将来有望株と
判断されたようで」
得意げに話すマリーの言葉に、1つの答えが浮かんだものの言葉には
出さずにマリーの言葉を待てば
「彼氏、もしくは婿として欲しいと皆さん狙っているのですよ」
予想通りの言葉が返り思わず頭を抱えてしまった。
確かにルイはミランダから勉強面は教わっていたし、ミラの淑女教育を
見ていたから所作は良いと思う。
武術だってルイの運動神経あっての短期間ながらも急成長だった。
言葉使いは知らない間に直っていたけど、それはミランダと一緒に居る為
にルイが必要だと判断して自分で勉強した事で
まさか婿入りの候補に入るだなんて考えてもいなかったわ。
頭を抱えていれば
「ルイさんはエスメさん以外の女生徒全員を平等に対応しているのは
皆知っています。多分ですが思い人が居るのも」
言葉に惹かれゆっくり頭を上げるとにっこりと微笑まれ
「でも、好きになったら気持ちは止まりません」
年相応の笑みと共に告げられた言葉に、
「そうね。好きになったら気持ちは止められないわね」
苦笑しながら返事を返しつつも
「ルイがそんなに人気なのを私は知らなかったわ」
好奇心が目を覚まし、マリーに教えてくれるように話を振ると
「学園は勉強は勿論ですが彼氏や結婚相手を探す場でしあるのです。
お二人が長年仲が良いのは初日の雰囲気で皆分かっていましたから、
皆、候補者として考えていたんです」
意図を察してくれたマリーの言葉に、納得できると頷き返し
「1年間同じ教室で過ごせば相手の人柄も好みも分かるもの。
そこでお付き合いし卒業と共に就職し結婚はあるでしょうね」
「はい。特に平民クラスは皆、役所や商会などに職を持っている者の
集まりです。結婚相手も同じ職種なら生活の安定はできます」
自分の考えを伝えるとマリーはさらに情報を付けて返事を返してくれ、
「そして貴族クラスの淑女は平民に嫁ぐ事を考え、少しでも稼ぎが良く
見目も良い結婚候補者が欲しいという事ね」
勿論、全貴族の女生徒が平民になる事にも結婚相手を探している
訳では無い。どこかの屋敷に雇われメイドとして働くという考えを
持った方も居る。
どの時代も生活の安定は必須であるが、
恋する少女は可愛いし綺麗だと思う。
でも、ルイの一途に真っ直ぐにミランダを好きだという気持ちを
応援したい。
全てはルイの気持ち。
こちらも見守るしかできないのは歯痒いなぁ。
もどかしい気持ちを隠し、マリーの話に相槌を打ちつつも返事を
返しているとドアからノックの音が聞こえ返事を返すと、
「エスメ様、ディラン様がお帰りなりました」
扉越しからフレディの言葉に、
「教えてくれてありがとう。扉を開けてくれる?」
ディランを出迎える為に扉を開けて貰うと、マリーがフレディの手を借り
先に降り、同じ様にフレディの手を借りお礼を伝え馬車から降りると、
少し顔色が悪いディランが立っており
「お帰りなさい」
抱きしめたい気持ちを、ここはまだ学園だからと我慢をし伝えれば
「ただいま戻りました」
貴族らしく微笑むディランに心が痛み、我慢しきれず手を伸ばし髪に触れ
「疲れたでしょう。屋敷に着いたらゆっくりしましょうね」
ディランに伝えると気恥ずかしげにしながらも頷いてくれたので
「マリー、一緒にいてくれてありがとう。ルイ、明日お話ししましょう」
近くに居る2人にお礼を伝えると、
「また、明日」
そう返事を返してくれ、ルイとマリーは帰って行く姿を見送り、
「私達も屋敷へ帰りましょう」
2人の背中が見送り、ディランとフレディに声を掛け馬車に乗り込み
屋敷へと帰った。
第392話
夜に虫の声を聞きつつ秋の夜長に備え何をして過ごそうか考え中です。
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誤字脱字を教えていただきありがとうございます、只今、修正が大変遅れております。
大変申し訳ございません。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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