姉、お世話される
真っ暗な意識の中から乳白色の色か広がると、額の当たりが気持ち良く意識がゆっくりと覚醒していく。
「目が醒めましたか?」
太く低い声の問いかけに視線だけを向けると心配そうな表情をした騎士団長の顔が見え、
「おはようございます」
普段通りに声を出したはずなのに声が出し辛く掠れた声の挨拶になってしまい、初めて聞く自分の声に驚き喉に手を当てていれば、
「失礼します」
一言告げられた後に背中に腕が通り首に手を添えられゆっくりと体を起こしてくれ、クッションを集め背もたれまでも手早く作ってくれた。
なんだか手慣れている感じがする。
ぼんやりする頭で考えていると
「果実水ですのでゆっくりお飲みください」
言葉と共にガラスのコップが差し出されたので受け取り1口1口口に含んでから飲み込む。
柑橘系の酸っぱい味が口の中に広がると、先程まで鈍かった頭や重かった体が軽く感じ
「ありがとうございます」
微笑みながら礼を告げると今度は掠れる事なく声が出た事に心の中で安堵の息を落とす。
そんな私を見ていた騎士団長がベットサイドに置いてあったベルを鳴らすと、昨日と同じメイドがノックとの後に入室し、
「朝の準備をさせていただきます」
腰を折り1礼をしたのち、湯気が立っている桶と布などを手に持ちベットまでくると、
「自分は部屋の外で控えておりますので何かあればお声を掛けてください」
騎士団長が言葉を残し退出して行った。
迷う事なく手を動かし準備をしてくれるメイドを眺めていると、
「まずはお顔を拭かせていただきますね」
柔らかくどこか気遣う声に頷き目を閉じれば、額に温かい布が当たり優しく拭き取ってくれ、
次に、ネイトドレスと脱ぎ体を隅々まで拭いてくれ新しいナイトドレスを着せてくれた。
「ありがとう。とてもスッキリしたわ」
メイドに礼を告げれば少し驚いた顔をしたがすぐに戻し、
「お役に立て光栄です。すぐに朝食をお持ちしますのでお待ちください」
使用した桶と手ぬぐいを持ち退出をすると入れ替わるように騎士団長が入る、ベットサイドにある椅子に腰掛け、
「お体はいかがですか?どこか痛い所はありませんか?」
問いかけられた言葉に体を動かし、
「右腕が動かし辛いですが他は大丈夫です」
微笑み返せすと、
「右手は骨折の治療の為の固定器具ですのでしばらくは付けたままお過ごしいただきます」
真剣な表情の中に少し硬くなった表情と言葉に
「分かりました」
頷き返事を返すば、
「朝食後、もう1度医者に診ていただきます。その後ディラン様と今後の話をする予定となっております」
今日のスケジュールを告げられ頷き返すが、
「ディランはもう朝食を食べ終わったのかしら?」
良ければ一緒にと思うも
「ディラン様はフレディを供に今、こちらの領主の元へ挨拶へ行っております」
騎士団長の言葉に
「そうなのですね」
頷き、そこからは雑談をしているとノックの後が聞こえ騎士団長が立ち上がり対応をしてくれ
先程出て行ったメイドがワゴンと共に入室するも、すぐさま退出してしまい、代わりに騎士団長がワゴンを押しベットまで来ると、
「え!?」
騎士団長がスプーンを水の入ったコップに付け振り洗いをした後、布で拭き取り観察をする様にじっくりと裏表を眺めた後、ポタージュを掬い手の平に乗せ匂いを嗅ぎ口に含んだ姿に驚きの声をあげるも、聞こえなかったふりをされ、
「お待たせました」
椅子に腰掛けスプーンを手に持ったままポタージュを掬うとそのまま差し出されたので、ゆっくりと口を開ければ、スプーンと共にポタージュが口の中に入りジャガイモの味が口一杯に広がり微笑んでしまうと、
ゆっくりと引き抜けれたスプーンに再び差し出された。
何度も繰り返しポタージュを口の中に入れて貰いフッと騎士団長の眉間に皺が刻まれて折りよくよく見れば、怒っている訳でもなくなんとも表現しにくい表情に首を傾げるも、続け様に来るスプーンに奥を開け続けるしかなかった。
「美味しかったわ」
残す事なく食べたポタージュの皿を片付ける騎士団長の背中を見ながら感想を漏らすと
「それは良かったです。では薬もお願いします」
差し出された粉末の薬と水に、伸ばしかけた手を止め布団の中に両手を隠すと、
「ディラン様がこの領地の名物は果実に飴をコーデングしている食べ物なので姉様が薬を飲んでくださるのならお土産に買ってくると申していました」
如何なさいますか?
お伺いを立ててくる騎士団長からコップと薬を受け取り、水を少量口に入れた後に薬を入れ一気に水を飲み無理やり飲み込んだ。
「ご立派です」
どこか的外れな感じもするが褒めてくれた事が嬉しく思いながらも
「ディランにはいっぱい買ってくれるるといいなぁ」
先程出たお土産に気持ちけ、寝る為に体を動かすとすぐにクッションを取り除いてくれた。
横になったから眠れる訳もなく、騎士団長と今後立ち寄り街の話を続けていれば、ノックの音が聞こえ、
騎士団長が対応してくれると、
「姉様、気分は如何ですか?」
数時間ぶりのディランに会え、嬉しくなり体を起こし
「おはようディラン。心配ありがとう元気になりました」
笑いながら返すと
「そのようで何よりです」
微笑み返してくれ、
「朝食は食べれましたか?」
聞かれた事に
「騎士団長が手伝ってくれたから全部食べれたわ」
返事を返せば、とてもいい笑顔で
「良かったです」
頷きながら言うので、
「何かいいことがあったの?」
首を傾げ聞いてみるも、
「命令に忠実でさすが我が家の騎士団長だと思いまして」
含み笑いもしながらの言葉に
「本当に凄いよね。ディランも騎士団長の話を聞いてみると良いよ。すっごくかっこ良いのよ」
頷き返すと
「それは楽しみですね。時間を作って聞いてみたいと思います」
真剣な表情をしながら帰ってきた言葉にディランを見つめると
「先程、領主に挨拶を済ませてきました。午後から街へ行く予定をしています」
貴族として街にお金を落としていくのだと告げるディランに
「何か美味しそうな食べ物があったら食べてみたいわ」
自分の欲しい物を告げれば、
「分かりました。ですがこの後の診察次第になりますから他にありましたら言って下さい」
許可が出た事で、気分が上がり、
「物はいらないけど、街の様子は見てきて欲しいかも。生活魔法道具を使ってくれているか気になるわ」
我儘を言えば、
「フレディと行きますのでそれぞれの視点で見てまいります」
こちらも許可が出たので
「ざっくりで良いのでお願いね」
ディランの後ろに控えているフレディにも視線を向け告げれば
「承りました」
頷いてくれた。
再び聞こえたノックに騎士団長が対応に出てくれ昨日の医者がとおされ、互いに挨拶を済ませ、問診の後に触診があり、
「夜に熱が出たと聞いておりましたがやはり過労からの熱はでしたか。今は引いておりますが今日はゆっくりお過ごし下さい」
何かを紙に書きながら言われる言葉に
「先生、食事はどうすればいいです」
1番聞きたかった事を尋ねると
「固形物を食べても大丈夫ですが沢山は食べないでください」
急に沢山食べてしますと、弱っていた体が驚いてまた体調を崩してしまいますからね。
幼児に言い聞かせる様に優しい言葉の作りだったが、素直に受け入れることができ
「分かりました。気を付けます」
頷き返すと
「それと、腕ですが無理をすると痛む事がありますの痛みを感じたらすぐに冷やしてください」
添木で固定されている腕に視線を向けられ告げられた言葉に、頷きのみで返事を返した。
ではこれで。
先ほど書いてきた紙をフレディに手渡し、騎士団長と供に部屋から出て行った。
「お礼を言い損ねてしまったわ」
マイペースを崩さなかった先生に乗せられ頷く以外のことができなかった事を後悔するも、
「礼は騎士団長が伝えてくれていますのでお気になさらず」
ディランの言葉にそれならと納得し、気持ちを切り替えディランを見れば
「先生の指示に従い少しですが買ってきますので楽しみにお待ちください」
呆れも混じりながらの言葉だったが、
「ありがとうディラン」
今日1番の良い笑顔でお礼を言った。
第39話
粥よりポタージュスープの方が胃に優しいかと思いました。
香っていた空気があっという間に去ってしまい寂しく思っております。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
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