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親友は手紙で友の生活を知る



冷たく強い風が窓を叩きガラス窓をガタガタと揺らし、

持っていた手紙から視線を外し窓へと向けるも、

低いながらも太陽がまだ出ており、夜の時間帯だと言う事を

忘れてしまいそうになる。


「ミランダ様。いかがなさいました?」


暖炉の薪を調整していたコナーの声に微笑み


「何でも無いのよ」


そう返事をし再び持っている手紙に目を通す。


送り主はこの領主の孫であり親友のエスメ。

学園に入学する為に領から王都へ移住を移し2週間に1回

多いと1週間に1回と王都での生活を書いた手紙を送ってくれる。


学園の勉強内容にクラスの様子

一緒に入学したルイの様子などは事細かに書かれており

エスメの気遣いに苦笑する事もある。


最初に届いた手紙は無事に王都に着いた事と道中で起こった楽しく

面白い出来事が中心に書いてあった。


2通目は学園の入学式での出来事と初めて受けた授業の事。

弟であるディラン様とルイの仲の良さも書かれており


入学式でエスメが目撃した出来事は忘れたくても忘れられず奥底に

しまい込んだ出来事を思い出させ、手紙を読んだコナーが呆れながら


「無作法者はどこにでも居るのですね」


嫌悪感に顔を歪めながらの言葉に苦笑いし


「狙いではないと思うけれど、ディラン様が心配ね」


女生徒が打つかった集団の中には最愛の弟も居たと書かれており

その直後、入学式に向かおうとした時に自分も女生徒と打つかり

その後、同級生だったので友達になったとも書かれていた。


私の時と同じならば狙いはこの国の殿下と側近候補。

ディラン様には婚約者が居ないのは救いかしら。


心の中に溜息を落とし、その時に手紙にディラン様の周りを

気につける様にと返事に書き送った。


綴られる授業内容と教師の態度にエスメさんは何も思っていない

様だけれども明らかに教師陣にはよく思われていないのが分かり、

コナーと共に苦い感情を持ちつつも、この部屋で過ごした時間が

エスメさんやルイの助けになっている様で安堵の息を落とし、


クラスメイトであるマリーさんや商人であるボーイックさんの

様子に微笑ましくも時にルイとボーイックさんのやりとりに


ルイが一緒に行ってくれて本当に良かった。


そう思う事が増えてきた。


エスメさんの性格はもちろん文面でも人を下げたりする言葉無いが

以前自分がいた階級と立場と経験から、ボーイックと名乗る同級生の

印象は良くない。


明らかにエスメさんの立場や家の内情を把握して仲を深めようと

しているのが手に取るように分かり、


注意を促したいが、エスメさんの事


何を思っていても仲良くなった子だからと微笑み受け入れるのでしょうね


小さく息を落とし、エスメさんが傷つかずに入れるよう

ルイに対応してもらえる事を祈るしか無い。


そして数通目に届いた手紙に書かれていた事に思わず驚きで口に手を当て

ると手紙が落ちてしまい、


「ミランダ様。いかがなさいました」


キッチンに立っていたコナーが心配そうに小走りで駆け寄ってくれたが


「顔色が。一体何かが書かれていたのです」


あまりの衝撃で驚きと怖さで顔色を悪くし震えていると、素早く手紙を読んだ

コナーが


「温かい飲み物をご準備いたしますわ」


落ちた手紙をテーブルに置き、少しでも落ち着けるようにと言葉を残し

キッチンへと素早く移動する足音を聞きながら、改めてエスメさんからの

手紙を読み直す。


そこに書かれていたのは魔術の授業でミスがあり火球がエスメさんとルイと

マリーさんに向かってきた。

1つはルイが枝で叩き飛ばしてくれ、2個目は手で受け止め、3つ目は

マリーさんの光の魔術が発動し助けられたと書かれており、


ディラン様のことで学園裏へ呼び出しがあったと書かれていた時から

心配していた事が現実になり、血の気が下がった。


自分でこの有様なのだから領主ご夫婦は私以上の衝撃を受けているはず。


震える体を何とか持ち直し、ミスをしたと言う女生徒は学園のルールにて

罰を受けると書かれ、エスメさん自身もその様にお願いしたと書いてあった。



ミスは好意的で無かったとしても、次期国王と王妃になる立場の人物が

いる中での出来事。


無かった事にするにはマリーさんの光の魔術の関係でできず、

だからと言っていち生徒達に王家から罰を与える訳にもいかず


貴族社会特有の制裁が与えられるのだろう。


いっときの感情だったとしてもそれが抑えられないのは人として

貴族として如何なものか。


火球を掴んだエスメさんの手はマリーさんの魔術で火傷も赤みも無いと

書かれており、今度お礼にマリーさんを招待してお茶会を開くのだと

楽しそうに綴られている。


確か光の魔術を持つものは王家に保護されるのがこの国の法だったわね。


幼き頃に習った記憶を掘り起こし、マリーさんがこれから受ける淑女マナーなど

に少し同情する。


当たり前であった私ですら逃げ出したくなる程の学習量だった。

それが平民であるマリーさんが受けるのだと思うと。


私生活すら一変する事を思い心を痛めていると、コナーがブランデー入りの

ホットミルクを手渡してくれ、


「エスメさんとルイに何事もなくて良かったです」


正面に座ったコナーの言葉にゆっくりと頷き、


「明日、返事を書くわ」


今の気分じゃとても冷静に返事を返すことはできない。


そう伝えると、コナーは微笑んでくれ、


「そうですね。冷静になりエスメさんに無茶をしないようにしっかりと

言い含めませんと」


少しだけ目尻を上げ、強気な言葉に乱れていた感情が落ち着き


「私が書いても聞いてくれないかもしれないけれど、書かないよりマシね」


コナーと小さく笑い合いながらホットミルクを飲み心を落ちつかせ、

明日手紙に書く内容を頭の中で整理し始めるのだった。


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