親友は強く憧れを持った
数十年生きてきてままならない事など沢山あった。
でも自分の生まれた立場だと飲み込こむ事ができた。
今回もソウだった。
立場を理解して、意思など無いふりをして、
分かりました。そう、頷き
目の前にいる学園の最上位の方々に言わなければならないかったのに
嫌だと
納得できない
そう言いたくて声に出そうとするも、心の一部が冷静に判断し
言葉を消してゆく。
納得しなければならないのに
理解したくなくて
反する気持ちがぶつかり合い溢れる感情は涙となって表に出た。
1粒流してしまうと止めることは難しく次々流れてしまい、
前に座る殿下とその周りにいる側近の方々が驚きと戸惑わせ
申し訳ない気持ちと
嫌なのだと
受け入れたく無いのだと
叫びたい気持ちで首を振り続けれてば、この部屋にいた唯一の女性が
頬を伝う涙をハンカチで拭いてくださり、
「急な事ですもの。驚いて当然ですわ」
少し上向きの目尻とどこか近寄りがく、思うも目が離せない程に
綺麗な人は見た目と反して優しい人の様で、溢れ続ける涙を
拭いてくれながら肩をそっと撫ぜてくれる。
「貴女が不安に思う事は無い。上手く馴染めるように手配するので
心配しないでくれ」
安心を与えてくれる様に微笑みながら告げられても、
貴族の生活マナーも知らない出来ない分からない自分が、いきなり入っても
無理なのだとどうしてこの方々は解らないのだろう。
平等だと言いながらも貴族の方々とクラスも違えば制服も違う。
食堂の使用時間も違えば、メニューも違う。
この方々は私達の昼食のメニューは貴方達の残り物だと
知っているのだろうか?
授業内容も全く違う事も理解しているのだろうか?
次々と浮かんでくる疑問は口にする事は憚れることばかりで、
ぐっと喉の奥で潰すと、涙となってこぼれ落ちた。
双方、手詰まり。
説得したいがどう言葉を繋げ伝えれば良いのか分からなくなった様で、
殿下も側近候補の方々も口を閉ざし、私が落ち着くのを待ってくれている。
平民の自分が最上位の方々を困らせる事があってはならない。
でも、頷いてしまうと楽しかった学園生活が無くなり
エスメさんとの楽しい会話や教師陣の質問を軽々答える姿。
ルイさんとの気安いやり取りに、ボーイックさん達との
不思議な雰囲気の会話
どれ1つ無くしたく無い楽しい時間。
でも、断る事は出来ない。
自分の返事1つでこの先、楽しく無い日々を過ごさなければらない。
理性と感情が反して返事ができない中聞こえたノックと
対応の為に開いた扉から
「親友を迎えにきました」
エスメさんの声に、緊張していた心がもう大丈夫だと解れ、
大粒の涙が溢れだす。
入室と会話の許可が下りたエスメさんは私の横に膝を付いて、
幼な子をあやすように、優しく柔な声で
「何があったか教えてくれる?」
慈愛と親しみの籠った視線で私を見てくれ
「く、クラスの編入するようにと」
喉に言葉がつっかえ話しにくかったものの、私の気持ちを
分かってくれた様で会話途中で私を守る様に抱きしめてくれ、
改めて私の気持ちを確認してくれた後
「分かったわ。お姉ちゃんに任せて」
自分にしか聞こえない小さな言葉は安心感ともう大丈夫だと
確信が湧き起こり、ぼんやりとする意識の中、エスメさんは
側近候補の方と話合いが行われ、
自分が言わなければならない言葉を全て言い、
放課後、貴族の生活マナーを学べる様に提案までしてくれ、
話を纏めくれた。
なんと頼りになる人なのだろう。
こんな素敵で優しい人になりたい。
自分の事を親友だと言ってくれたエスメさんに恥じない様に近づける様に
明日の放課後から頑張ろう。
平民である自分にハンカチを使ってくれ慰めてくれた
彼女の期待に応えたい。
そう思い、気合たっぷりで迎えた放課後のマナーの勉強は姿勢からで
こんな事が役に立つのだろうか?
足先から指先まで力を入れ背筋を伸ばし佇む。
数分過ぎただけで身体中が悲鳴を上げ始め、心の中で首を傾げだすも
釣り上がった目と尖った雰囲気で血が寄り難い雰囲気の、
教育係のアメリア様は
「基本中の基本よ。これができなければドレスは綺麗に着れないし
魅せられない」
ダンスもできないわ。
無理にお願いして同行してくれたエスメさんとルイさんを微笑みで
向かい入れてくれ、知っている貴族女性のかで誰よりも優しい方だった。
怒らない、嫌味を言わない、小さな事でもできた事を褒め
教会で練習した事を認め、成長を喜んでくれる。
この素晴らしいお方が殿下の婚約者なのだと思うと、嬉しくて
殿下が王となった際は安心して生活ができるのでは無いと神父様に
お話しした事もある。
休憩中のお菓子もマナー教育の1つだけれども、エスメさんとルイさんも
一緒に楽しく会話をしながら美味しい紅茶とお菓子が食べれるのは
ご褒美のようで嬉しい。
残ったお菓子は持って帰っても良いとアメリア様はいってくれたので、
遠慮なく持って帰って子供達と神父様へ持ってり感謝を捧げた。
苦痛を感じるマナー教育も、優しい気持ちと楽しい時間でなんとか
こなす事ができた頃、
「ルイ、マリー。これを受け取って欲しいの」
真っ白で上質だとわかる封筒を手渡され、
「今週末に我が家でお礼を兼ねたお茶会の招待状よ」
いきなりの事で驚き戸惑うもルイさんに促されエスメさんにマナーは必要ないと
言われてしまえば断る事などできず、受け取った。
服は何を着ていけばいいの?
エスメさんのお家はどういった地位なの?
ぐるぐる考えなければならない事が頭の中を占めその日は
気がついたら教会に帰っており、道中の記憶がないまま次の日の朝を迎えた。
第368話
蝉が元気に鳴いておりますね。涼しいという事かも知れませんが体調管理は気をつけていきたいです。
ブッマークや評価、いいねボタンをいただき誠にありがとうございます。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
https://ncode.syosetu.com/n9341hw/




