令嬢は微笑む
冷たい風が吹き馬車の中でも寒さを感じ、専属のメイドに視線を向ければ
心得たとばかりに火の魔法石と風の魔法石を発動させ車内を素早く温めてくれた。
無意識に強張っていた体をほぐし、今日の予定を頭の中で確かめてゆく。
と、言っても毎日大きな事が起こる訳では無いので大体は学園のスケジュールと
屋敷に戻った後の勉強がある程度。
程度。
そう心が切る変えるまでに数年かかり、途中で何度も嫌になり逃げ出した幼き思い出が
頭をよぎり、懐かしくて当時感じた驚きと嬉しさも甦り気恥ずかしさを感じ
そっと目を逸らし窓の外へ視線を流した。
魔術省へと忍び込み、箒に跨り楽しそうに笑う少女。
当時、淑女のマナーとして感情を悟られないように常に微笑みんでいる事を
教養され、それが当たり前なのだと思っていた自分の中で楽しそうに笑う少女の姿は
衝撃で信じられず唖然としていれば、目が合ったと思ったその時、
楽しそうに笑っていた表情から、愛おしそうに微笑み手を振ってくれた。
自分の事を知らない人が愛おしそうに微笑んでくれた事が嬉しくて、
大事にしてくれている両親でも無い知らない人が愛してくれ愛情をくれた事に
涙が出そうになり、泣いては見えなくなるからと目に力を入れた。
懐かしくも少し心が痛む大切な思い出。
あの時、出会った人は貴族家に生まれながらも貴族籍が無く、
だからと言って平民なのかと言われると違うと言う曖昧に立場であるのに
ご本人はそんな事は些細な事だとばかりに今を楽しんでいる。
生活魔法道具の開発に販売。
屑石となった魔法石の再利用し再び価値を持たせ販売
女性雇用を中心とした紙刺繍の発案と販売。
生活魔法道具だけでも国の生活レベルが向上し他国から一目置かれる様になり
外交が優位に立てる様になった国への恩恵が大きいのに、次々と功績を作り上げる
姿は微笑ましくもあり、その身が危険になるのを危惧してしまう。
体の中にため息を落とし、見慣れた建物の庭へと馬車が進んだ事で気を引き締め
心を律し、停車した馬車の扉が開いた事で微笑みの仮面を被り
「おはようございます」
出会ったクラスメイトや先輩方から挨拶を受け
「おはようございます」
同じ様に挨拶を返し、目的の場所に向かえば
「アメリア嬢、おはようございます」
先程、思い出した人物の弟君がおりよく似たお顔で微笑み挨拶をくれる。
「ディラン様、おはようございます」
共に会話をしながら殿下の到着を待てば側近候補の顔見知りも集まり
「おはよう」
殿下が到着し、そのまま全員で生徒会室へと移動しようやく一息つく事ができる。
気遣いのいらない会話を楽しみつつ、
「アメリア嬢、マリー嬢と同級生達はいかがですか?」
弟としては姉の事を知りたいのと、フッとした瞬間に突拍子の無い事をする姉の心配もあり
毎日同じ質問を受けるが、報告も兼ねているので、
「マリー嬢はようやくマナーの初手を覚えたと言った所ですね。終わってから
練習をしているようで少しづつですが日に日に良くはなっております」
まずば先日の複数の令嬢のやらかしで光の魔術を発動させたマリー嬢の報告をし
「同級生の方々も壁側に控え見守っておられ、昨日から休憩時のお茶にお誘いをした所
快く受けていただきましたわ」
殿下も側近候補の方々も真剣な表情で聴いている姿に内心いたずら心が芽生え
「女子生徒は話題選びもマナーも良くできており、王城でも何ら問題の無い
完璧なマナーでした。卒業後にわたくしの専属として置いても謙遜ありませんわ」
そんな事は絶対あり得ない未来を口にすれば、面白そうに微笑む殿下と眉間に皺を寄せる
ルカ様とディラン様の表情に心の中で笑い声を上げつつ
「男子生徒も護衛として良い働きをするのかもしれませんが、その活躍を目にする事は
ありませんが、彼もマナー良く己の立場も理解している様で口を開く事はありませんわね」
彼も報告書で知ってはいたものの実際会ってみて、御当主が気に入っていると言うのが
よく分かった。
一途で真っ直ぐで、でも大切な人や物を守る為ならどんな苦労も超えてゆくのだろう。
現に学の無い言える立場だったのが、学力も武力もぐんぐん身につけ学力を知るための
試験でも平民クラスで2位、貴族ラクスでも上位に入る事ができる知識を持っている。
好きこそモノの上手なれ。
信念があれば嫌な事があってもつい辞めたくなっても続ける事ができる。
それを表した人ね。
殿下や側近候補の顔馴染みには悪いけれど、思い出の中の人に毎日会えるだけではなく
対話する事もできる。今の立場を存分に楽しみ満喫せねば。
わたくし幼心を射抜いたのですもの。御息女様には責任を取って貰わないとね。
毎日が嫌で嫌で逃げ出したあの日。
見知らぬわたくしに愛おしいと告げたのだもの。
わたくしだけでは飽き足らず、殿下に側近候補の彼らの心すら射抜いてしまうなんて。
心の中で重い息を吐きつつ、
独り占めはいけませんもの。皆様にもお裾分け致しませんとね。
ああ、でも。
「ディラン様」
姉と友の報告を受け安堵の表情をしている彼には少しイタズラしても許されるはず
「仲直りできましたか?」
あの日、マリー嬢を心配して駆けつけた御息女様に視線で叱られた事を尋ねれば、
ゆっくりと視線を横に外す姿に、
あらまぁ。と、心の中で驚きつつ
御息女様なら即座に許したでしょうに。何かあったのかしら?
慣れない誤魔化し行うディラン様に殿下と側近候補達を視線を合わせ、
仕方ないと、誤魔化し出した話題にのる事にした。
第365話
学生さん達は夏休みに入ったと聞きました。え?もう、7月後半なの??6月いつ終わったの??
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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