姉、懐かしくてもどかしい
箒に跨り空を飛んでいれば冷たい風に体の中から冷えてくる。
最初は心地良くても今は冷えすぎて身を震わせる程の寒さの為、
火魔術と風魔術を掛け合わせ体を冷やさない様に対応する。
「姉様」
前にいるディランの呼び掛けに
「なぁに?」
返事をすると、
「クラスではどう過ごされているのですか?」
何か気になる事があるのか遠慮がちに尋ねられた言葉に首を傾げつつ
「楽しいわよ。全員と仲が良いという訳では無いけれど、挨拶を交わせるし
何気ないやりとりも遠慮なくできる程よい距離感でお付き合いできてるわ」
毎日、学園からの帰り道で話す事はその日の授業やルイやマリーにボーイックと
楽しかった出来事や話題などを中心に話している事に気がつき、
「年齢の差もあるのかも知れないけれど、皆、妹や弟の様に可愛いのよ」
ディランが心配している部分に触れながら話を続けると、
「何かご不便な事はありませんか?」
「これと言って不便は感じた事は無いわ」
尋ねられた言葉に間を置かず返事を返す。
ディランの中で何を不安に思っているのか考えてみるも思いつく事はなく、
内心どうしたものかと思い悩むも
「放課後の淑女教育で必要な物などはございませんか?」
次に尋ねられた事に意識を切り替え考えてみる。
学園で行われているので何か足らないと感じた事は無い。
休憩の紅茶もティーフードもアメリアが用意してくれいるので私がするのは
カップに紅茶を淹れ、テーブルまで持って行くだけ。
他はマリーの様子を見て気がついた事を促すぐらいだけれども、それすら
アメリアが先に気が付きマリーに伝え修正を促すので
休憩時のお茶以外、何もしていないので不便を感じる事は無い。
何より、アメリアの話を聞いて自分のマナーをもう一度見直しつつ、
筋肉を改めてつけ直している最中だと、
思いついたままを言葉にしディランに使えると、
「わかりました。時折ティーフードと茶葉を我が家から差し入れをします」
身長差が縮まった事で今、ディランがどの様な表情をしているか分からないので
声から感情を読み取るしかないのがもどかしくあり、
何を不安に思っているのさえ思い付かず、姉としての情けなさを感じつつも
「ありがとう。アメリア嬢が私の手作りのお菓子でも大丈夫ならば
差し入れをしたいと思っている事も伝えてくれると嬉しいわ」
姉としての意地でそんな情けなさなど微塵も見せずお願いを伝え
「そろそろ、お母様の所へ行ってみましょうか」
下から見守ってくている騎士団長を視界に入れつつ庭の回遊から違う場所を提案すれば
頷き返してくれたので、昔の様にゆっくりと浮上し屋敷の壁を伝う様に飛び、
目的の1つであるガラス窓に到着し部屋の中を覗くと、
お母様が机に向かう背中と、壁に控えているお母様専属のメイドさんと目が合い、
小さく手を振れば、微笑ましそうに笑ってくれた。
お母様もメイドさんの動きで何かを感じたようで、振り向いてくれたので
先程同様に手を振りガラス越しに
「お母様」
そう呼びかけると、椅子から立ち上がり窓を開けてくれ
「エスメ、ディラン。よく来てくれたわね」
昔と同じ言葉で出迎えてくれ
「お仕事中にお邪魔してしまい申し訳ございません」
ディランの詫びの言葉も昔と同じで、
「構わないわ。会いに来てくれてありがとう」
お母様の返事も昔と同じで懐かしく思っていると
「エスメ、ルイとマリーとのお茶会だけれども庭園はどうかしら?」
急に振られた話題だったが、事前にお母様に話をしていたので
「大丈夫です」
頷き返事をすると
「気温が下がったり雨の時は室内に変更もするけれど庭の方が
マリーが気負わずに楽しめると思うわ」
付け加えられた言葉に大きく頷き、
「お気遣いありがとうございます」
お礼を伝えると微笑んでくれ
「さ、そろそろ寒くなってきたわ。2人とも空中散歩はおしまいにして
部屋で暖まって頂戴」
話の終了と自室に戻るように促され、
「わかりました。失礼致します」
ディランの言葉の後に
「では、失礼します」
別れの挨拶をし、少し後ろに引くとお母様はガラスの窓を閉めた後、
手を振ってくれ見送りをしてくれた。
ゆっくりと庭に戻り、低空へと移し地面に足がつくのを確認し跳ぶ為の発動させていた
風魔術を解き箒から降り、
「姉様。ルイとマリー嬢のお茶会について決まっている事、考えている事を
お聞きしてしたいです」
「ええ。ディランの案も欲しかったの。聞いてくれると嬉しいわ」
先程の空中散歩の時にもたくさん話したというのにまだまだ話す事は途切れず、
「騎士団長。今日はありがとう」
「ありがとうございました」
ディランと共に護衛についてくれた騎士団長にお礼を伝え、フレディとマルチだと共に
ディランの部屋へと向かって歩いた。
第363話
暑くても外に出なければならないのは中々に辛く。熱中症対策をしご自愛ください。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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