姉、嬉しくも愛おしい
差し出した手を取ってくれてので手を握りディランの部屋を出る。
久しぶりにディランと手を繋いだわ。
領へ行く前は毎日手を繋ぎ歩いていたのを思い出し、握った手に意識を集中すると
自分と変わらない程の大きな手があり、横を歩くディランの頭へ視線を向ければ、
まだ肩を超えない程の大きさで、
あっという間に身長も抜かされてしまうんだろうなぁ。
ディランの成長はとても嬉しいけれど、まだまだ可愛い弟であって欲しい。
自分勝手なわがままな願いに心の中で苦笑し館を出て庭に向かう。
フレディかマルチダかが伝えてくれていたようで、
「お待ちしておりました」
騎士団長が声をかけてくれ、
「お久しぶりです」
数年ぶりの再会に嬉しくなり返事をする言葉とは違う言葉を口に出すと
「お話は常々。お元気そうで安心いたしました」
少しほころんだ表情と共に伝えてくれた言葉に嬉しくなり、
「お心使い、ありがとうございます」
お礼を伝えると、ディランが半歩前に出たのを皮切りに、騎士団長が頷き
「前回同様に警備体制を整えてはおります。けしてお一人の時は敷地内から出ない様に
お願いいたします」
改めて注意の言葉すら懐かしくつい頬が緩んでしまいそうになるが、
「分かりました」
真剣な騎士団長の言葉に同じ様に真剣な表情で頷き返し、マルチだから箒を受け取り
箒に跨り、風魔術を発動させる。
ディランを前に乗せ、改めて魔術の調整をし
「では、行ってきます」
見守ってくれているフレディにマルチダと騎士団長に警備についてくれている
人達に声をかけ足を浮かせ上へと浮上させる。ゆっくりと左右に揺れない様に
気をつけ慎重に空へと近づいてゆく。
箒にディランを乗せて改めて大きくなったことに気づく。
肩幅が大きくなりそれに伴い体も成長しているからか、後ろから回した腕は箒を掴むのに
届かないのではと思う程で、視界もディランの肩から少し見えることができる程度。
落とさない様に気をつけないと。
久しぶりの空中散歩であろうディランはどこか楽しげな雰囲気を感じ、
「懐かしいわね」
そう言葉をかけると、
「本当に。昔見た風景と同じはずなのに違って見えます」
楽しそうに帰ってきた言葉に、心が弾み
「ゆっくりと屋敷の上を数周してお母様の部屋の窓を叩きに行きましょう」
屋敷にいる時に毎日飛んでいたルートを提案すれば、
「お母様のお邪魔をする訳には」
数年前に聞いた言葉に
「大丈夫よ。覗きに行くだけだもの」
数年前と同じ言葉を返すと、ため息まで同じで懐かしく思いながらも、
「ディラン。最近はどう？忙しいの？」
数年前とは違う言葉をすると
「学園の言葉まだまだ始まったばかりでので、この後の行事などの準備を進めており
慌ただしくもありますね」
先程より固くなった声に
「ディランのクラスと私達のクラスとは授業内容が違うから、行事も違うのでしょうね」
授業以外予定のない学園の予定を思い出しながら返事を返すと
「そうですね。僕達のクラスは社交界に出る為のマナーを習う授業もありますから、
机に向かうばかりではありませんね」
改めて聴く授業内容に
「それは、マリーが放課後に習っている淑女教育と一緒なの？」
疑問が浮かび尋ねると
「いえ。マリー嬢がアメリア嬢から習っているのは基本中の基本です。
姉様も王都にいる時にマルチダから習ったと記憶しております」
聞こえてきた言葉に、
なるほど、編入させなくて本当に良かった。
心の中で呟くと
「我らの考えが浅くマリー嬢の保護のみを優先で編入を推し進めましたが、あの時に
姉様から提案があって本当に良かったと生徒会役員皆で感謝をしております」
続けて聞こえた言葉にすぐに返事を返せないでいると
「アメリア嬢もあのまま編入させていればマリー嬢はクラスに馴染めず苦しい
思いをするところだったと。姉様にお礼を伝えて欲しいと伝言をいただいております」
自分の表情が見えていないディランは次々に言葉を伝えてくれ、
「姉様のマナーも大変素晴らしく王城でも難なく過ごせる程のマナーだと褒めてくださいました」
まるで自分が褒められた様に嬉しそうにまた誇らしく伝えてくれるディランが愛おしくて
「副会長を務めるアメリア嬢に褒めて貰えて嬉しいわ」
箒から手を離しディランを抱きしめると、驚いたのか大きく体を動かした後、
大きな溜息を落とした後
「僕も姉様がアメリア嬢から褒めの言葉をもらえ嬉しいです」
気恥ずかしげに小さな声で告げられた声に、さらに愛おしくて目一杯抱きしめた。
第362話
各地で高温注意報が出ております。水分を1口でも多く飲んでください。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です？婚約者のお義姉様はどうなさったの？大変！廃嫡とざまぁを回避しなければ！
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