姉、体力の無さを痛感する
2022/01/28 光魔法の発動方法を「手を触れ」から「手の甲に唇を当て」に変更いたしました。
騎士団長の剣を探しに行こうと話が纏まり4人全員で移動する物だと思っていたら、
「場所は把握しておりますので自分1人で行って参ります」
騎士団長からの言葉に
「どうしてですか?」
首を傾げ尋ねると
「あちらにはまだ数人の賊が居り、仲間が帰ってくるのを待って居る状態です」
大きな体と高い身長から雨の様に降ってくる様な声に先程の出来事を思い出し、
「それなら尚のこと全員で移動してお互い目の届く場所にいた方が守りやすいと思うの」
震える心に気づかないふりをして提案をすると、騎士団長の視線がディランへ流れ再び目が合うと
「畏まりました。但しディラン様から絶対に離れないで下さい。この約束が守っていただけるのなら全員で移動をします」
できますか?
真剣な眼差しに固い声で告げられた言葉に頷き、
「はい。約束します」
騎士団長の真剣な言葉と同じく真剣な表情で頷き返事を返すと後ろから来たディランに左手を繋がれ
歩き出した。
騎士団長が先に歩き、ディランと手を繋ぎ歩く後ろにはフレディが居る。
ゆっくりと慎重に歩き時折視線を動かし周囲を見るも、木々が鬱蒼と生え太陽の光が時折直接当たり頬に暖かさ感じる。
慎重に歩くが木の根っこやでこぼこした道に蹴躓つくとフレディが支え時に引っ張って転けるのを止めてくれる。
「大丈夫ですか?」
足を乗せた所が悪く後ろに滑り転けかけた所をディランとフレディに助けられなんとか体勢を整えた後、ディランからの心配そうに尋ねてくれる言葉に、笑いながら
「大丈夫よ。心配かけてごめんね」
後ろから支えてくれたフレディに視線を向けると手袋を直している姿が目に入るも
「フレディもありがと」
見慣れた光景気にする事なく礼を告げると微笑み返してくれた。
後ろへ転けかけた驚きと体力が切れかけ息が上がりながらも返事をかけし、前で待ってくれている騎士団長へ向かって歩き出す。
息が乱れ、体が重く感じ、動かしている足を止め休憩を求めてしまうが、息を乱す事なく無く歩いているディランとフレディを盗み見ては、
お姉ちゃんなんだから頑張らなきゃ
と、自分自身に発破をかけ歩き続ける。
1歩1歩慎重に気をつけ歩き続けると急に左手が引っ張られ慌て振り返れば、ディランが立ち止まっており
「姉様、この辺りで待機しましょう」
いきなりの言葉に戸惑い口籠ってしまうと
「この先に賊達の小屋がありますので、安全を考えこの辺りで待つのが宜しいかと」
フレディの言葉にそれならと頷き騎士団長に視線を向ければ頷かれ1人歩いて行った。
必死で動かしていた足を止めた事で、心臓の音が早く大きく聞こえるので宥めるように肩で息をし呼吸を整え、最後に深呼吸をすれば
「お嬢様、宜しければこちらを口にお入れ下さい」
フレディの言葉と共に差し出された透明で飴の様に丸い形の物受け取り口の中に入れると、口の中に水が広かった。
数回に分けて飲むと喉が渇いていたのだと実感し、差し出された分だけ飲み込む。
「ありがとう」
微笑みながら礼を告げると、
「私の魔法がお役に立てて光栄です」
どこかの役者の様に大袈裟に従者の微笑みと胸に手を当て腰を曲げる礼に可笑しく思い、小さく笑ってると、安堵の色の入った目を見て
「心配かけてごめんなさい。もう大丈夫」
乱れた息も、重かった体も治ったのだと告げれば、微笑み返される。
騎士団長が離れてから少しし、足音と共に腰に剣を着け
「お待たせ致し申し訳ございません」
詫びの言葉と共にどこかスッキリした表情に
「賊の人達はどうしました?」
思わず問いかけると、
「彼らとは語り合いをしまして反省をしているという事でしたので王都の騎士団が到着するまで小屋で待ってもらう事になりました」
とてもいい笑顔で告げるので
「そうですか」
頷き事しかできずにいれば、
「そろそろ日が暮れです。馬車の戻るよりも先程の小屋に行くのが良いと思います。そちらで夜を過ごし夜明けと共に馬車に戻るのが良いかと」
すぐさま真剣な表情に変え告げる言葉に返事ができずにいると、
「それが良い。森の中は暗くなるのが早いと聞きます。夜行性の動物も出てきますので急ぎましょう」
騎士団長の言葉に同意する言葉の後、こちらに向き告げられた言葉に渋々頷く。
ディランは何も思っていないのかな?
怖くないのかな?
思い出さないのかな?
あの光景を思い出し体が震えだすが、
「お嬢様。失礼します」
フレディの声と共に視界が上へと上がり驚きと体が傾きかけ思わずフレディの首に腕を回し抱きつく。
「急ぎますので非礼をお許しください」
耳近くから聞こえる声に抱き上げられたのだと理解しフレディの顔を見れば、申し訳なさそうに眉を下げるので、
「こちらこそ重いのにごめんなさい」
同じ様に申し訳なく謝り告げれば、
「騎士団長様程ではありませんが、力はある方だと自負しております」
先程より早く歩きながらも息を乱す言葉く返される言葉に、揺れ怖い思いをする事は無く
「フレディがそんなに力持ちだとは知らなかったし、ディランがそんなに体力があるのも知らなかったわ」
フレディに身を任せ、会話が続く様に話せば、
「武術を嗜んでいますので少しでしたら対応できます」
下から聞こえたのでディランに見るために顔を下に向けると、どこか誇らしげな表情をしており
「さすがディランね。格好良いわ」
余りの可愛さに頬を緩めると
「姉様は体力が無さすぎます。領地に着きましたら少し体を動かしましょう」
すぐさま真剣な表情に戻り、少し諫める言葉に
「ディランが付き合ってくれるなら頑張る」
調子に乗り、提案に乗り掛かれば
「直ぐに空を飛んで移動するのは良くありません。しばらく禁止して歩いて貰います」
戒めるように返ってきた言葉に、苦笑し
「そうね。そうするわ」
自分の体力の無さと迷惑をかけている事が申し訳なく頷き返す。
それからも会話をしながら進めば先程出た小屋に着き、騎士団長が1人で小屋に入り安全確認をした後に中へ入って行った。
高い視界だからだろうか部屋全体を見渡すと何か違和感を感じなからも、フレディに椅子の前に下ろして貰い腰をかけ首を捻る。
何か変だけど、何かが分からない。
なんだろう?
もう一度、部屋全体を見渡すも分からず、一旦考えるのを止める事にし、
「騎士団長にお願いがあるのです」
椅子から立ち上がると、騎士団長の元へ行き
「扉の前と窓の前に土魔法を使って大きな穴を作って欲しいのです」
思い付いた事を告げれば、
「なるほど落とし穴ですか。畏まりました。すぐに発動させます」
納得し関心したと頷いた後、扉と窓の前に立ち土魔法を発動させ深く大きな穴を作ってくれた。
「相変わらずですね」
関心しているディランの言葉に嬉しくなり笑えば、邪魔にならない様に直ぐに椅子に腰掛け、
フッと思い出す。
「フレディ」
名を呼べば、目の前に立ち用伺いをしてくれるも、
「両手を出して欲しいの」
にっこり笑い告げると気まずそうに目を泳がしだすも
「痛いんだよね?いつまでも痛いより直した方がいいと思うの」
少し強めに言えば申し訳なさそうに両手を差し出してくれたので、左手を手に取り甲に唇を当て光魔法を発動させゆっくりとフレディの手の平へに乗せる。
煌めきながらフレディの手や腕の周りから体全体を光の粒子が舞い飛ぶとゆっくり消えていった。
「どうかな?」
恐る恐る様子を見ながら聞けと、
「ありがとうございます。痛みが無くなりました」
微笑みながら礼を言ってくれるも、本当に痛みが取れたのか分からず
「本当に痛くない?」
問いただせば、両手の手袋を取り
「見て下さい。火傷で爛れていたのですが綺麗に治っています」
目の前に出された手の甲は傷や爛れも何も無く節が太い男性の手で
「良かった」
安堵の息と言葉を漏らすと、
「ありがとうございます」
手を握り返され告げられた言葉に
「どういたしまして」
微笑みながら返した。
第36話
長くなってしまいすみません。切り所が分からずにおります。
台風は如何でしたか?こちらは強風のみでした。
ブックマークと評価に星を押していただきありがとうございます。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。
よろしけれお読みください。
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