姉、友達のマナー教育に同行する
学園に通い始め、様々な事があった記憶はあるものの今日程
沢山の人に囲まれた事は無いかも知れないと、ぼんやりと思いながら
輪の中心になっているマリーを見守っている。
クラス全員に囲まれ、もしかするとクラスが違う貴族の同級生も
混じっているのではないかと思える和が重なっており、
「マリーさん心配しました」
「お体の調子は以下がですか?」
「王族の庇護に入ったとか」
本当に心配しているのかと問いたくなる程の明け透けな言葉に
心の中でため息を落としつつルイを見れば、何も感じていない表情ではあるものの
目の奥は大変大きな怒りに満ちており、
その気持ち分かる。
心の中で深く頷き、あまりにも酷い様ならば助けようと機会を見定める為に
周りのを注意深く観察すると
「マリーさんは王族の庇護に入ったなら、殿下が在籍している貴族クラスに
編入しないの?」
ボーイックの言葉に周りが静まり返りマリーの返事を聞き逃すまいとする中、
「ありません。私は平民ですし貴族のマナーや編入した所で授業についていけませんし」
言葉を妻ある事なくハッキリと伝え事で言葉の裏や嘘では無いと伝えたマリーに、
集まっていたクラスメイトは肩を落とし、同級生であろう貴族クラスの子が
数人教室から出て行くのを眺め、
「確かに庇護とするのは法律でありましたし授業で習った通りです。ですが
国王様が管理されている学園内に身の危険を感じる事は無いと思いますので」
殿下を始め側近の方々や騎士の方達とお話しする事は無いですよ。
にっこりと笑いながらの言葉を言い終わると、貴族の同級生は
何も無かったかの様教室から出て行き、残ったクラスメイトは居心地悪そうな
表情と雰囲気になってしまい、
「残念。マリーさんをとうして高位貴族の繋がりが持てて商売が広がるかと
期待したのに」
悪そびれ無く告げたボーイックに、
「ご期待に添えられずすみません」
気を悪くした雰囲気も無く、マリーは笑いながらの返事を返すので
「実は少し殿下や側近の方々と会えるのでは無いかと期待したの。ごめんなさい」
申し訳なさそうに眉を下げながらの謝罪に
「顔を覚えて貰い職場の斡旋があればなぁなんて思って」
「普段遠くからじゃないと顔を拝見できないからもしかしたらと思ってしまって」
次々に謝罪の言葉が告げられ
「気にしていないわ。私も同じ立場だったらそう思うもの」
先程と変わらない表情と雰囲気で返事をしたマリーに皆は安堵の息を漏らし
再び謝罪の言葉が告げられる中、
「そろそろ、教師が来るね」
ボーイックの一言に皆が自分の席に戻り準備を行い出した。
無事に終わって良かったと思いつつも、自分も授業の準備に取り掛かり
教師の到着を待った。
朝イチにマリーの言葉があった為がその後も穏やかに授業は進み、
昼食も変わりなく終わり、午後の授業と魔術のテスト返還もあり
少しざわつきながら本日の授業は終了し、皆が教室を出て行くのを
マリーとお喋りをしながら待つ。
今日からマリーの淑女教育に同行する為なのだけど、朝の事もあり
少し時間をずらした方が良いと思い、たわいも無い話題をマリーとルイに振り
時間を稼いでいる。
「なんだか名残惜しそうに話しているけれど」
意味ありげに微笑み尋ねてきたボーイックには
「朝の事があってマリーとお話し足りないの」
微笑みながら返せば
「それはすまなかったね」
眉を下げ謝りつつ
「お邪魔して悪いから僕は帰るよ」
また、明日。
空気を察した様で鞄を持ち手を振り教室から出て行く背中に
「ええ。また、明日」
何も言わず分かれの挨拶を告げ、3人しかいない事をと廊下が
静かになった事を確認したのち、マリーが指定された図書館へと向う。
少し離れた図書館の扉を開ければ本の匂いが広がっており、
好奇心がくすぐられ、並べられた本に視線を彷徨わせると
数冊気になる本が見つかり、思わず読みたい衝動に駆られたものの
ここに来た目的を思い出し、帰りに借りて帰る事を決め
奥へと足を進め、
「お待ちしておりましたわ」
姿が見えたと同時にかけられた声に全員で足を止め礼をし
「到着が遅くなり申し訳ございません。本日からよろしくお願いいます」
マリーの言葉に
「顔を上げて」
品良く上品に聞こえる声と従う事に慣れている言葉に従いゆっくりと礼を解き
顔を上げると、柔らかく微笑み
「遅れは気にしておりませんわ」
帰ってきた言葉は、そのまま捉えても良さそうで心の中で息を落としつつ
様子を伺っていると
「そちらの方が同行者の方ね」
自分に話を振られたので
「はい、エスメと申します。本日よりよろしくお願いしたします」
先程の腰を曲げた礼ではなくカーテシーで挨拶をすると、
「まぁ、お上手ですわね」
お褒めの言葉の後、礼を説く様に告げられ背を伸ばすと
「そんなに深く膝を曲げて貰えるとは思わなかったわ」
扇を広げ、微笑みを深くし返された言葉に微笑みだけで返事を返すせば
「マリーさんにはわたくしが教えるよりご友人からご教授をいただいた方が
よろしいかも知れませんわね」
ころころ微笑みながらの言葉にゆるりと首を振り1歩後ろに下がると
「そう」
自分は教える意志無いと伝え1歩下がった意図を読み取ってくれたようで、
「では、マリーさん。早速始めましょう」
その言葉にマリーが緊張した表情で頷き、まずは基本の立ち方から指導が始まった。




