弟は考え込む
遠くから紙が擦れる音が聞こえた様な気がし、瞼を開け最初に視界に入ってきたのは
見慣れた天井で、大きく息を吸い込んだ後に目を横に動かすと、煉瓦色のカーテンの隙間から
光が部屋に入っており、
「あねさま」
昨日一緒に寝たはずの人物が見つけられず重い体を動かしベットから起き上がると、
ソファに座り真剣な表情で紙を見ている姿に安堵の息を落とし、
「姉様。おはようございます」
ようやく回り出した頭と口にで朝の挨拶をすると
「おはようディラン」
見ていた紙から視線を外し、自分へと向けてくれ嬉しそうに笑いながら挨拶をくれた。
夢で見た姉様とは違い、広げていた紙を簡単に片付け足取り軽くベットまで来たかと思うと
何を思いつかたのかいきなり抱きついてきて
「朝から可愛いディランを独り占めできるって最高で幸せな時間ね」
嬉しそうに笑い、幸せそうに告げられ
「そうですか」
釣られる様に幸せで嬉しくもあり、恥ずかしくも思う気持ちもあり戸惑っていれば
自分達が起きている事に気が付いたのか聞こえてきたノックの音に入室の許可を出すと
「おはようございます」
フレディとマルチダが入室してきて、
「おはよう」
姉様と声をそろえるつもりは無かったが偶然揃ってしまい思わず口を閉じると
「そろっちゃった」
嬉しそうに微笑む姉様にどう反応すれば良いの分からず困り微笑みかえし、
姉様はマルチダを連れ自室で着替えなどの朝の準備の為に部屋から出て行くのを見送り
「ディラン様、こちらを」
フレディから差し出されたハーブと果実入りの水を貰い、酸味が口の中に広がると
重さを感じていた体が軽くなった様に感じ、フレディの手をかり手早く朝の準備済ませ
朝食の為にフレディ達の邪魔にならないようにソファに座ると、
姉様が見ていた紙が視界に入り手に取り目を通してゆく。
自領に居るミランダ嬢から紙刺繍工房の運営報告書と春に行われる神事で販売する
デザイン画も同封されたおり、姉様の危機管理の無さにため息を落とすと
「ディラン様。眉間に皺が寄ってますよ」
小さく笑いながら揶揄う様に告げられた言葉に無言で返すと
「紙刺繍工房の報告書ですね」
文面が見えたのか紙に書かれている文章から的確に読み取り告げた言葉に
「ああ。運営もうまく行っている様子が書かれている」
頷き、読み終えた感想も添えると
「まぁ、ミランダ嬢の立場を考えれば失敗する方が難しいでしょうし」
困った様に微笑むフレディに、頷きつつ同じ立場であるアメリア嬢を思い出す。
ミランダ嬢もあの騒動に巻き込まれなければ王家へ嫁ぐ者としてアメリア嬢と
同じ教育を受けていたのだ。１つの工房を運営するなど簡単にやり遂げるだろう。
現に姉様からミランダ嬢へ運営が変わったが功績が落ちた事はなく
緩やかに上がりを見せている。
中々進まなかったハンドクリームにも本格的に着手できそうだと報告も受けている。
ミランダ嬢とアメリア嬢。
隣国同士会う機会もあったかも知れないが今では立場が違い、
ミランダ嬢は職業夫人
アメリア嬢は殿下の婚約者であり王妃殿下になる立場。
思う事はあるも言葉することは憚れるので呼吸と共に飲み込むと
そう言えば、姉様からマリー嬢に放課後行われるマナー教育に同行する許可を頼まれていたな。
光の魔術が使え王家に保護されるマリー嬢とは違い、同じ光魔術が使えるが法により
姉様は保護はされない。
姉様とマリー嬢は似ているようで似ていない。
果たしてお祖母様とミランダ嬢からマナーを教えられた姉様にこれ以上のマナー教育が
必要かと問えば完璧にできているので不必要。
マリー嬢の心情を鑑みての姉様の気遣いと優しさなのだろう。
それに応えられる自分でありたい。
まずは、殿下への報告とアメリア嬢の許しを貰わなければ。
今日行う業務の中に重要だと位置付け、聞こえてきた2回のノックと対応したフレディと
姉様の声に、考え混んでいた意識を止め
「遅くなってごめんね」
紺色のワンピースの制服を着た姉様と共に朝食を食べるべくフレディが引いた椅子に座った。
第357話
七夕ですね。笹飾りに願い事は書きましたか？今夜の天気は晴れるのかな？
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です？婚約者のお義姉様はどうなさったの？大変！廃嫡とざまぁを回避しなければ！
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