姉、考えを言葉にする
馬の歩く音と馬車の車輪が回る音。
ガタガタと揺れる車内にいつもとは違う雰囲気が流れる。
話し合いをしようと先手を打って声をかけたものの、マリーの件で生徒会室で
声なき声で咎めたのは理解しているようで、反省している姿に怒りすぎたかと
心苦しくなるも、やってはいけない事をしたのだと分かって貰いたいので、
「ディラン」
正面で少し顔色を悪くし座るディランに声を掛ければ、恐る恐る顔を上げ
何かを言いかける様に唇を動かしたが直ぐに閉じ、聞く体制に入った。
「マリーの事だけど」
こくりと頷いたディランと心配げにこちらを見ているフレディを視界に入れつつ
「昨日話した通り教会で生活をしているわ。その為、奉仕にみえる貴族夫人や
令嬢と接する事はあるけれど、それは教会内の事よ」
気持ちが伝わるようにゆっくりと、なるべく感情が揺さぶられない様に冷静さを
保ちつつ話しを進めるように心がけ
「何も知らないマリーをいきなり貴族クラスへの編入は間違った判断だと思うわ」
言葉作りに気をつけてげれば、ゆっくりと頷き
「今思えば、そう思います」
魔術見学の授業から予想外のことばかり起こり冷静に判断ができなかったのと
「これはね、お姉ちゃんの予想なんだけれど」
前の人生と今日までの経験を踏まえ、1つの答えを導き
「ディラン達はマリーを思って、最優先にして考えて動いた事は凄いことだとよ。
ただ、貴族である生徒会役員と平民である私達と勉強も違えば生活も違う。
急な事で悪い予想しか思い浮かばなかったからマリーは怖がって泣いたんだと思うの」
誰しもが未経験や未開拓の場所に進むのはとても勇気が入るし
最初に思い浮かび予想する事は、悪い事、不安になる事が多い。
持論であるが故に感情を乗せすぎて押し付けない様に気をつつ
「だから、マリーが自信を持って行動ができるまで待ってあげて欲しいわ」
マリーを思っているという体の自分勝手なお願いを言葉にすると、
少し考えてくれたのち
「なるべく、彼女の希望に添えれるようにします」
普段と変わらない声でしっかり返事を返してくれたことに微笑み返し、
「私も教えてあげられる知識は少ないと思うけれど協力するわ。
それと、放課後のマナー教育にマリーから同行して欲しいとお願いがあったので
一緒に行くね」
マリーからのお願いも伝えると
「解りました。明日、アメリア嬢に伝えておきます」
同行の許可が貰えそうな事に安堵の息を落とし、
「なんだか色々あったからお腹空いたね」
雰囲気と気分を切り替える為に、関係ない話題を言葉に出すと
「そうですね。帰りましたら何かご準備いたします」
安堵の表情のフレディの言葉に、
「お母様から許可が落ちていればキッチンに行ってプリンでも作れたのに」
唇を少し尖らせ、ため息と共に言葉をこぼすと
「キッチンより学業を優先。と、お考えなのですよ」
困った様に眉を下げたフレディの言葉に渋々頷き
「分かっているわ」
返事を返したものの、やっぱり納得はできなくて不貞腐しつつ窓の外に視線を向ければ、
「今度のお茶会の時に食べれるのを楽しみにしております」
聞き慣れたディランの声に窓から視線をディランに戻し
「そうね。その時は沢山作るからいっぱい食べてね」
笑顔で返すと
「お土産としてお渡しするのも良いと思います」
微笑みながらのディランの言葉に、先程までの落ち込んでいた雰囲気は一切無く
心の中で安堵の息を落とし
「そうね。なら練習も必要よね」
お母様にお願いしてないとね
普段通りの会話と雰囲気に戻った頃、馬車はゆっくりと止まり屋敷へと到着した。
第356話
高音注意報や雨の被害など沢山の情報が耳に入っております。今一度身の安全をご確認をお願いします。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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