姉、夜明け前に考え事をする
パチリと開けた瞼とすっきりとした意識は眠さを訴える事なく目を覚ましたものの
自室とは違う雰囲気とすぐ近くから聞こえる寝息に、昨夜の出来事を思い出し
寝ているディランの頭を撫ぜる。
お父様の書斎に間は少し元気になったものの、気落ちしているディランの手を取り
フレディへ視線を向けると考えている事が伝わったようで頷かれ、
そのまま視線を横にずらしマルチダに向けると小さく頷いてくれディランの部屋の前で別れた。
今はどんなに言葉を尽くしても聞き取れないだろう。
ならば極力一緒に居て不安を少なくする事がいい。
そう考え久しぶりにディランのベットで手を繋いでおでこがぶつかるのではないかと思う程に
近付け、たわいも無い話をゆっくりし眠ったディランを確かめてから眠りについた。
起こさない様に気を付けなからディランの顔色を伺うと少し青いものの
起きれば元に戻りそうに見えホッと息を溢し
さて、ここからどうしようか。
いつもならベットから起きて予習と復習をするのだけど、今日はディランの部屋。
起き上がるのは良いが何をして数時間過ごそうか案が浮かばず、
とりあえず喉の渇きを潤す為にベットから降りようと体を動かせば
「あねさま」
振動で目を覚ましてしまった様で寝起きのどこか舌足らずの言葉に愛おしさを感じつつ
「まだ寝ていても大丈夫よ」
微睡の中にいるディランを今一度眠りの世界に誘う様に頭を撫ぜるも
「どちらへ」
眠りを拒否する様に何度も瞬きをするディランに
「喉が渇いたから水を飲みに行くの」
ディランも飲む?
いつもより高さを落としゆっくりと話かけると、むずがった後
「だいじょうぶ、です」
眠りに抗ってはいるものの中々勝てない姿を視界に入れつつ、少し離れる事を頭を
撫ぜていた動きから止め、素早くサイドテーブルに置かれた水と共にハーブや果実が入った水差しからコップに淹れ素早く飲み、ベットに戻る途中で見つけた魔術の教科書を手に取り、ベットへ戻り
「まだ夜が明ける前よ。おやすみなさい」
自分が戻って来るまで瞬きをし起きていたディランに話しかければ安心した様に微笑み瞼を閉じる姿に
様々な感情が生まれ主張してくる。
可愛い
愛おしい
それだけではなく
苦しめている事への謝罪
罪悪感
詫び
自分がディランと立場が客ならばどういただろう。
あの、複数の火の魔術がディランに向かってきたら?
ディランが自分の様に身を挺して友達を庇ったら?
持てる力全てを使ってディランと庇うし、傷を負う事があれば1つ残らず治すだろう。
ただ、ディランの様に冷静で居られると言えば無理かもしれない。
己を律し、最優先にするべき事をしたディランを抱き締めてたくさん褒めてあげたい。
瞼を閉じているからか幼く見えるディランの額を指先で撫ぜるとくすぐったかった様で
笑っいながらディランの手で払われてしまった。
可愛い。
どんなに大きくなっても、この先、身長が抜けれ多くな体になっても
可愛いくて愛おしい弟に変わりない。
ディランの日々が楽しくて穏やかでありますように。
そう願い振り払われた手で額を撫ぜ、持ってきた魔術の教科書を開き
ディランが起きるまでの時間はテスト勉強をする事に決めた。




