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姉、前世を思い出し受け入れる


剣が抜かれ、剣先がディランの頭上にきた瞬間、足を動かしディランを抱え込んで倒れた。


怖かった。


人の悪意というものがこんなに怖いものだと知らなかった。


必死だったのもあってディランの頭を抱き込んで床に打つけることを回避できたが

勢い良く倒れ自分の頭は守れず、壁と床に打ちつけた。


真っ暗な視界の中、体が勝手に動く感覚に驚き戸惑っていれば、

ディランが自分を呼び声が聞こえ返事をしなければと思うも、


「あなた、だれ?」


口が勝手に動き、体も勝手に動いていく。


「頭痛いし、気持ち悪いし、なんなのこれ?」


自分じゃない誰かが言う言葉に、


なるほど。視界がグラグラしているのが気持ち悪いと言うのね。

確かに打ち付けた頭は痛い。


初めての体験を体感し納得できた。


痛いと言うのは知っていたけど、気持ち悪いというのはこう言うことを言うのね。


妙に納得をしていれば、


「何これ?頭から落ちて脳が揺れる程の強打なんて笑えない」


呻く言葉に、


確かに勢い良く打ち付けたのはあってるけど落ちてはいないわ。


脳が揺れるはこの頭の中が揺れている感覚のことよね?


知らない事なのに勝手に喋られるなんて不思議な事ね。


未知なる体験をしてるはずなのに何故だか心が驚きも荒れる事なく冷静に判断できた。


いつもより視界が高く、自分じゃないのに慣れたように体が動いていく。


小さな板のような物を手に持ち、


「仕事休めないのにこれじゃあ運転できない」


痛みと気持ち悪さに耐え、カバンらしき物と黒色で小さな箱の様なものを手に持ち、

部屋の中をウロウロして、


「あーもう嫌だ。仕事行きたくない」


「体調の所為にして休みたいけど人足りないから休めない」


「本当にヤダなぁ。行きたく無いなぁ。働きたくないよぅ」


口に出した後、靴を履きドアノブを握ったその時


「あねさま」


何処からか聞こえた戸惑い怯え震えたディランの呼びかけに、


「私に弟なんて居ない」


ひどく冷たく尖った声に怒りを覚え


「違うわ。可愛い弟が居るわ」


怒りをぶつける様に声に出せば、不思議そうに首を傾げ


「おとうと?」


戸惑うような音に、


「そう。可愛くて愛おしくて愛くるしい弟のディラン」


視界が低くなり、目の前には自分より身長の高い成人女性が立っており

困惑しながらも視線が会うとお互いの姿が見えた。


黒い髪に肩までしかない短い髪。

黒い瞳と茶色の眉。

艶めく唇に違和感を感いるも淑女らしく顔には出さず見つめ合う。


この人は私だわ。


目の前に居る初めて見る人だが、何故かこの人は自分なのだと思った。


目の前の人物をじっくりと上から下へ視線を動かし信じられない物を見るような目をしながらも

何処か納得をしている表情に微笑みかければ、戸惑う様に


「でぃらん?弟?」


聞いてくるので


「大切な弟なの」


笑いながら告げるも、ふっと思い出し


「そう。その弟を傷つけようとした」


言葉に出すと、怒りが生まれ膨らんでいく。


「大切な弟を傷つけようとした?」


確認なのか同じ言葉を言う目の前の女性に、頷き


「私達を怖がらせる為にディランに剣を向け振り落とした」


告げた言葉に女性が驚きいた後すぐに怒りの表情に変わり、


「何それ、怒って当然だよ」


自分の感情を固定し正しいと認めてくれた事で怒って良いのだと納得し


「許せないわ」


一言告げれば、視界が揺らめき2人同時に驚き同時に手を伸ばし手を繋ぐ。


やっぱり私なんだ。


心から納得し頭で理解すれば、ゆっくりと思い出される昔の日々。


嫌だ嫌だと言いながら行った学校に辞めなかった仕事。

友達と喧嘩したり旅行や遊びに出かけた楽しい思い出。

ドキドキしながら待ったプロポーズに結婚式

初めての出産に子供達との笑い怒り泣いた大切な思い出。

旦那と2人で泣き笑いした子供達の独り立ち。

1人置いて逝ってしまう申し訳なさ。


私が生きた証


精一杯生きて終え、生まれ変わったのだと。


目に涙が溜まり零れそうになる。


前の私が驚いた後、勝気に微笑んだ。


あの表情はやって良しと覚悟を決めた顔だわ。


そうよね。


大切な弟を傷付けようとしたのだもの。


そんな人達に容赦なんて要らないわよね。


互いに微笑み頷くと


「姉様!落ち着いてください」


何かを察したディランの声にお互い苦笑するも止める事はなく


どうすれば怒っているのだと分かってくれるかな?


首を傾げれば、力強く親指を立てられた。


何も考えるな。そのまま行けと言うのね。


分かったと頷き返す。


ふつふつと湧く怒りに身を任せていれば、


「姉様、腕が痛いので縄を解いてください!」


助けを求めるディラン声に我に返り、


「ごめん!すぐ解くからね」


慌て告げれば、目の前に居た前世の私は居らず、ディランを庇い倒れ込んだままの姿に、

急ぎ腕を頭から抜き取り腕を使って起き上がった。


腕を使わず器用に起き上がったディランの背中に回り


「痛いよね。すぐに解くからね」


腕を持ち上げ縄に触れると痛みが走ったが


「姉様の力では手を痛めてしまいます。何処かに刃物があれば良いのですが」


ディランの言葉に先程の痛みの原因が分かり頷き周りを見るも刃物らしきものは無く

指先に火魔法を少し集め


「ディラン。動かないでね」


身動いていたディランに声をかけ、縄に触れ焼いていく。


白い煙が出て臭いがひどくなる前に結び目部分を焼き切ってしまえば後は縄を解いていくだけで

ディランの腕は解放された。


「ありがとございます」


自由になった腕を動かしながらのお礼に微笑みかえせば


「いつ賊が戻ってくるか分かりませんから小屋から出ましょう」


手を差し出しがながらの言葉に頷き、左手を乗せ立ち上がり小屋から出ていく。


連れられるまま小屋から少し離れ、もしかすると戻って来るかもしれない賊を木々の間から待った。


ディラン曰く


「慌て出て行ってしまいましたが、冷静になり戻ってくる可能性が高いです」


「その時に僕達が居なければ探し出す為に仲間を呼びに行くと思いますので、後を付ければフレディと騎士団長に会えると考えています」


自分では思い付かなかった事に感心し


「さすがディランだね。お姉ちゃん思い付きもしなかったよ」


思ったままを言葉にし伝えれば、なんとも表現しにくい表情をしながら、


「僕などまだまだ考えが浅はかで非力です」


帰ってきた言葉に、


「そんな事ないよ。私なんて全然思い付かなくて歩き回っていたと思う」


視線を落と何故か気落ちしているディランの頭を撫ぜ、


「ディランと一緒で良かった。一緒に居てくれてありがとう」


自分なりに励ませば、


「姉様のそう言う所、直した方が良いと思います」


怒り睨んでいるのだけど頬を赤く染め身長差のせいで上目遣いになっており、我慢できず


「可愛い!大好き!」


言葉と同時に勢い良く抱き着けば、


「止めてください。僕はもう子供じゃないんですよ」


嫌がり身じろぎながら離れようとするも、さらに力を込め


「私の弟には変わりないわ」


少しでも自分の気持ちが伝わればと告げる。


もう2度とあんな言葉を言わない様に。



第34話


ようやく前世のお話が書けました。2話に跨りましたがご容赦いただけると幸いです。


台風の本土上陸はなさそうで一先ず良かったです。雨どうなりますかね?


ブックマークに評価に星を押していただきありがとうございます。

誤字脱字を教えていただき感謝しております。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。

よろしけれお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/

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― 新着の感想 ―
[良い点] 世界観や雰囲気は良いと思う。 [気になる点] 俺の読み込み不足かもしれないんだけど、全体的に描写不足で何が起こってるのかよく分からない気がする。 過程が抜けてて結果だけ書かれてる感じ?
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