姉、弟と休日を過ごす
学園に通い始めて初めての休日。
何をしようと考えながらも、朝の勉強の再開をお願いにお母様にお伺いを立てるも
学園に通っている間は中止し手を治すことに専念するようにと告げられ、
改めて自分の手を見ると、
「そんなに酷くと思うけど」
溢した言葉に
「姉様の頑張りが離れ過ごしていた僕にも良く解る手です」
横に座るディランの言葉に
「ええ。ミランダさんとミラが作るハンドクリームが早くできると良いですね」
ソファより半歩離れたフレディの言葉に改めて自分の手を見た後、ディランの手を取り
自分の手を比べるも
「手が硬い」
細くあるものの皮は硬く、剣を持っているからかタコもあり記憶にある手とは違う手に
まじまじと見つめていると、
「エスメ様、紅茶のおかわりはいかがですか?」
フレディの問いかけに、
「ありがとう。いただくわ」
淹れて貰った紅茶を飲むためにディランの手を離し、カップを持ち上げると香りを楽しみ、
一口飲む。
「美味しい」
ホッと息を落とし、感想をフレディに伝えると微笑んむ事で返事を返して貰え、
「そうだ。ディランは学園はどう? 授業とかどんな感じで受けているの?」
学園が始まってからは自分のクラスの事ばかり話していた事を思い出し、尋ねると
「姉様のクラスとそう変わりは無いかと」
カップをソーサーに置きながら返してくれた言葉に
「クラスの子が変わったとかは無いの?」
再び尋ねると
「ええ。皆様とこれから3年間同じクラスですね」
ディランの返事に頷き返し、
「そう言えば、入学式の日にぶつかってしまった子は大丈夫だった?」
「ええ。お2人共お怪我はありませんでした」
返ってきた言葉に良かったと返事を返すも、
あれはどう見てもゲームの始まり方と一緒だった。
違和感が拭えず、まじまじとディランの顔を眺めていると不思議そうに首を傾げるので、頭を撫ぜつつ
「ディランが好きになった人を反対する気はないけれど」
ため息と共にこぼしてした言葉に、ディランは怪訝そうな表情をしたのち
「僕の婚約者はお父様がお決めになります」
真剣な表情で返された言葉に、
「そうなんだけれどもね」
どうしても頭の片隅から警鐘が鳴っているのが気になり頷けないでいると、
「姉様が何を心配しているのか分かりませんが、お相手になる方を蔑ろにする事は
一切しないと誓います」
不安を取り除いてくれようとするディランの気持ちが嬉しくて思わず抱きしめて
「そうよね。ディランはいい子だもの大丈夫よね」
自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐと、ディランの手が背中を撫ぜてくれ
「ええ。お父様とお母様の様な関係を築いていける様に努力します」
安心できるように告げられた言葉に微笑み
「そうね。何かあればお母様に相談するのも良いかもしれないわね」
もう大丈夫だと意味を込め背中を撫ぜるとディランから腕を離してくれ、
「明日はディランの友達のお菓子を作るから、明後日の学園に持って行ってね」
先程までの話は終わりだと違う話題を振れば、
「お手数をおかけし申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします」
眉を下げながらの言葉に
「気にしないで。私が作ったのでよければいつでも作るから遠慮せずに言ってね」
首を振り伝えると、嬉しそうに笑ってくれたので
頑張って作ろう。
意気込みと珍しくディランの笑った表情が見れたことが嬉しくて、
起こらないかもしれない未来を心配しても無駄よね。
不安な気持ちが消し去り、昔の様にディランの部屋で夜の晩餐を済ませ、
「おやすみなさい。また明日ね」
「おやすみなさいませ。明日もお待ちしております」
互いに夜の挨拶を済ませ、ディランの部屋を出て隣にある自室へマルチダと共に戻り、
手早く入浴と寝る準備を済ませ、
「マルチダ、今日もありがとう。おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」
綺麗な礼を貰い、部屋から出てゆくマルチダの背中を見送った。




