姉、入学式に向かう
ディランやルイから学園の事を聞いた翌日。
今日は入学式という事で少し落ち着かない気持ちもあるものの、領にいた時と同様の時間に起きたが朝の勉強の許可を貰らっていない為、何をして過ごそうかと思いつつ部屋を見渡した。
大きな家具っは領に行く前と同じ配置ではあるが、並べられている本が少なかったり机の上が散乱していなかったりと、どこか慣れない感じがあるものの、
本はその内に増えるでしょうし、
机は、生活魔法道具や紙刺繍の関係で散乱するのは分かっている。
ゆっくりと馴染み心休める部屋に戻してゆこう。
1人で頷き、まだまだある朝の時間は読書をする事に決め目についた本を手に取りソファにに座り火魔法を発動させ手元を明るくし、表紙を捲った。
見知らぬ人の考え方や生きた歴史。
どうやら日記だったようで、日々の自分に起こった出来事やご近所さんに街や国で出来事はど幅広き書かれたおり、時折心の中で突っ込みを入れつつ楽しんで読んでいると、聞こえてきたノックに顔を上げ返事をすると
「おはようございます」
「おはようマルチダ」
部屋に入ってきたマルチダと朝の挨拶を交わし、
「本日着ていただく制服をお持ちしました」
平たく白い箱から出された制服は着慣れた紺色のワンピースではあるものの、白い襟と袖の部分に加えスカートの裾の部分にも刺繍が施されており、
袖を手に取り縫われた刺繍を眺めてじっくりと見ていると
「なんでも、こちらの制服の刺繍は大奥様を始めエスメ様にゆかりが深い方々が、刺繍を施したと聞いております」
告げられた言葉に驚き見ていた袖を改めて見直すと、1部分だけデザインが歪な箇所を見つけ、
「もしかしてミラかしら?」
皆の心使いと自分の事で忙しい中に刺繍をしてくれた事に感謝し、
「お礼の手紙を書かないと」
嬉しく思い、手早く着ていた服を脱ぎ制服に着替えて鏡で全体を見ていると、左右の襟も違う人物の刺繍で誰が刺繍をしてくれたのか想像しつつ、髪に櫛を通すのみの髪型にした。
領に居た時はメイド服に室内防とエプロンだったが、
これからはメイド服のデザインに近い紺色のワンピースが制服となる。
同じ様で違う服の仕様に新しい日々が始まるのだと実感し、何度も鏡を眺めスカートの刺繍を眺めていると、
ノックの音が聞こえたので返事をし、マルチダの対応を待つと
「ディラン様が、朝食のご招待をいただきました」
フレディでは無くマルチダの言葉に頷き、
「ぜひ、お伺いするわ」
頷き鏡から離れ、部屋を出て隣のディランの部屋の扉をマルチダがノックすると聞こえてきたディランの声と対応に出てくれたフレディに
「ご招待ありがとう」
言葉をかけると、フレディは微笑み扉を大きく開けて入室を促してくれ、お礼を伝え部屋に入ると
「ディラン。ルイ。おはよう」
すでにルイも着ており、
「おはようございます」
「おはよう」
2人から朝の挨拶を貰い、フレディが引いた席に腰掛けると紅茶が置かれ馴染みのある青豆のスープに焼きたての白パンが置かれ
「いただきましょう」
ディランの言葉で朝食が始まった。
ディランは昨日と同じ形の制服にルイは白いシャッに紺色のズボン。
一目れ分かる制服の差に昨日聞いたルカの話を思い出すも
行っても居ないのに、良くない出来事の想像をして不安になる必要はないわ。
何か起こったらその時々に対応すればいいのよ。
暖かく甘い焼きたての白パンを食べ、気持ちを切り替えながら朝食を終え食後の紅茶も楽しみ
「ディラン様、エスメ様、馬車の準備が整いました」
フレディの言葉に頷き全員で席を立ち、
「ルカ。今日から寮生活になるのでしょ?忘れ物は無い?」
後ろを歩くルイに声をかければ、
「さっきも確認したから大丈夫」
にっこり笑いながらの返事に
「不足な物があったら遠慮なく言ってくれ。すぐに準備させるから」
ディランが言葉を返すのを聞き仲の良い2人を微笑ましく思っているとディランとルイから物言いたげな視線をを貰ったが、気にせずフレディの手を借り馬車に乗り込み
「行ってきます」
見送ってくれるマルチダに手を振り声をかければ
「行ってらっしゃいませ」
腰を曲げ一礼の姿を視界にいれ馬車はゆっくりと動き出した。
フレディも加え4人で馬車に乗ると言う初体験になぜだか楽しくなってきて、
「私の制服ね、お祖母様や私に縁がある人が刺繍をしてくれたんだって」
話題を振れば、3人の視線は制服の刺繍に注がれ、両袖を少し前に出し
「左右、違う人が刺繍をしているのだけれども、ここだけ形が個性的でね」
良く見える様に動かすと
「左がミランダで、右がマルチダさんの刺繍だな」
ルイの言葉に、
「ええ。そうだと思う。と、するとこの個性的な刺繍はミラだと思うの」
対面に座るディランとフレディに良く見える様に腕を動かすと、
「上手に刺せておりますね」
ディランの言葉に頷き
「私、ミラが刺繍を習っている事を知らなかったわ」
小さく笑いフレディに視線で伺うと
「ミランダやコナーさんから手習をして貰っていると手紙に書かれておりました」
苦笑しながらのフレディの言葉に、微笑ましく思いつつ、
「そして、襟なんだけど」
顔を上げ見えやすくすると、
「お母様の刺繍ですね」
予想外のディランの言葉に驚いていると、
「刺している姿を拝見したことがありますので間違い無いかと」
フレディの言葉に
「そうなのね」
そっと右の刺繍を撫ぜ嬉しさを噛み締めていると、馬車が止まり到着の声にフレディが降り、ルカ、ディランが降りた後、ディランの手を借り馬車から降りれば、
目の前には赤煉瓦で作られた大きな建物と満開のピンク色の花が視界に入り、
なんだか乙女ゲームみたい。
前の人生で宣伝として映っていた風景と良く似ており、思わず声に出かけた感想に、
首を捻った。
私、今なんて言おうとした?
秋だと言うのに桜のような花が咲き乱れ時折、風で花びらが舞い落ちる。
心に引っ掛かりを覚えつつも、動くのを待っているディランとルイに気づき
「フレディ。行ってくるわね」
ディランの入学式が終わるまで馬車で待機しているフレディに声をかけ、ディランの案内で学園内を歩いてゆく。
「入学式は講堂で行いますので、始まるまでは座ってお待ちください」
ディランと講堂の入り口で別れ教師であろう人に名前の確認をされ後、好きな場所に座る様にと指示をがされたので、ルカと共に2人で座れる場所を探し、
「すみません。こちらの席は空いておりますか?」
2つ空いている席を見つけたので隣に座っている少女に声をかけると
「はい。空いてお…」
言葉が途中できれたかと思うと目がこぼれ落ちるのでは無いかと思う程に驚き見開いている姿に
「いかがなさいました?」
声をかけると前後に座っていt人達も振り向いた後、驚く表情に首を傾げると
「空いているなら座ろうぜ」
ルイの言葉に、戸惑い頷けないでいると
「座っていただいて大丈夫かと思いますよ」
前に座っていた青年の言葉に、
「教えてくくださり、ありがとうござます」
微笑みと共にお礼を告げ、ルイと共に腰を下ろした。
沢山の言葉が混じりザワザワしている雰囲気に見られている視線を感じつつ、お祖母様とミランダの教えを思い出し淑女の様に微笑み、気にしていないと態度で表す。
幸い隣に座るルイも冷静の様で、失礼に当たらないよう周りを見渡していた。
制服かしら?
周囲が反応する理由に当たりをつけ式が始まるのを待つも、どうしても気になる事があり
「ルイ。私、ちょっと行ってくるわ」
一声かけ、席を立ち講堂の扉を潜り来た道を早足で歩き、門が視界に入った所で通り過ぎた場所から聞き慣れた声が聞こえ足を止め振り返ると、
ディラン?
生徒会の仕事かしら?
廊下をディランと数人の人物が歩いていると、横から走ってきた少女と誰かがぶつかってしまい
少女は体勢を崩しお尻から地面へと倒れていった。
地面にお尻をつけてしまった少女に、少年が手を差し伸べている姿に
宣伝で見たゲームの始まりと一緒じゃない!
待って。ディランが!
慌て声を掛けようと動くと、横か何がとぶつかった衝撃で先程の少女と同じ様に転けてしまい
「すみません。大丈夫ですか!?」
聞こえてきた声に、
「大丈夫よ。こちらこそ、ごめんなさい」
顔を上げ返事を返すと、咲き誇っている花と同じ桜色の髪と新緑を思わせる緑の瞳に見惚れていると、
「エスメ!何やってんだよ」
聞こえた声に視線を向ければ、息を切らし走ってきたルカに
「すみません。私とぶつかってしまいまして」
桜色の髪を持つ少女が申し訳なさそうに頭を下げる姿に
「違うの、私が確認もせずに急に動き出したからで」
慌て、立ち上がり自分のせいだと主張するも
「怪我は無いか?」
心配してくれるルカの言葉に頷き返すと、式が始まる時間だと言うルカに急かされ、
少女と共に3人で行動へと戻る際にディランに視線を向けると、
周りにいる少年達と共にこちらを見ており
帰りに謝らないと。
心配そうに見ていたディランに微笑み返し入学式がある講堂へと戻った。
第320話
夏服に衣替えをしましたら、気温の低さに再び春服を着ました。温度の差は落ち着かない様です。
ブッマークや評価、いいねボタンをいただき誠にありがとうございます。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
https://ncode.syosetu.com/n9341hw/




