弟は呆然とする。
じわじわと後ろに回された腕と縛られた手首に痛みを感じだし、ジリジリと精神が削られ焦りが生まれ苛立ちが表に出始めそうになり、深呼吸をし心を誤魔化す。
「ディラン」
僕にしか聞こえない程小さな声呼ばれたので顔を動かし見れば、
「どうしたの?痛い?」
心配の色を乗せた瞳と表情に微笑み返し
「いえ。大丈夫です」
同じ様に小さな声で返し、改めて周りを見回す。
3人の成人男性が机に木のコップを置きイスに座りながら軽く雑談をしているが腰には剣が付けられている。
姉様と僕が子供だと気を抜いているのは雰囲気で分かる。
このまま油断をさせて、隙をついて逃げるのが1番良いだろう。
早期解決するのが良いが焦り判断を間違う訳にはいかない。
まずは手首を縛られている紐をなんとかしなければ。
焦る心を数回に渡り空気を多く吸う事で落ち着け、賊達の動きに対応できるように集中をする。
聞こえてくる話は彼らの身分を明かす役に立つかと思い耳を傾けるも、過去に犯した旅人からの強奪の話に盛り上げりを見せ、毎日のように犯罪を起こしている様だった。
捕縛したのち調書に書けるよう覚えておこう。
強奪した金品より僕達の身代金が多く取れそうだからこれからは貴族に狙いを定めようかなど、
面白おかしく話しを聞いているのはやはり怒りを覚えるが、
貴族として当主として常に冷静であれ。
感情に振り回され判断を間違えれば守らなければならない家族や領民が守れなくなる。
家庭教師から習った言葉を繰り返し声無き声で繰り返す。
「ディラン」
思考の中にいた意識を姉様の声に戻し顔を向ければ、なぜが微笑んでおり
「お姉ちゃんに任せて」
ウインクと共に告げられた言葉に一抹の不安を覚え、引き止めようとするより
「ちょっとそこの貴方」
上からの物言いに慌て賊達を先程までの雰囲気が一変し怒りに満ちた表情と
「なんだよ」
怒りの篭った声に、すぐに姉様を庇える様に中腰になる。
「お花畑に行きたいのだけど」
突拍子の無い姉様の提案に賊達は意味が解らなかったようで
「あんた、自分がどういう立場なのか分かっているのか?」
貴族令嬢の我儘と勘違いをしたのを姉様が理解をし、わざと大きなため息を吐き
「不浄に行きたいと言っているの」
どこかバカにしたような言い方に
「最初からそう言えよ!紛らわしい」
吐き捨てるような返事か返り、姉様の腕を引き立たせた。
そのまま何処かに連れて行こうとする中、
「お待ちなさい。貴方、もしかして着いてくるつもりなの?」
姉様の一言に動きが止まるも
「当たり前だろうが」
さも当然だと言う言葉に
「淑女の不浄に着いてくるだなんて恥知らずなのかしら」
姉様の嫌悪感と軽蔑した視線に戸惑いを見せると
「早く腕を解いてくださる?」
要望を告げれば、1人が縛りを解いた。
「おい、勝手なことをするな」
「子供だぜ?大丈夫だって」
小さな言い争いをしながらも姉様の腕を離さなず、待つ事に飽きたのか
「本当なら従者を連れて行くのだけど仕方ないわ。代わりに弟を連れて行くから準備をして」
我儘貴族令嬢を装った態度と言葉に賊の1人が
「我儘も大概にしろよ」
怒りに飲まれたのか姉様の腕を離し、腰から剣を抜きゆっくりとした足取りで僕に近づくと
「立場が分かってねぇみたいだな」
ニヤついた笑いと共に剣が振り落とされるのを目を閉じずにいれば、
「ディラン!」
慌てた姉様の声の後、姉様に抱き込まれ2人して倒れ込んだ。
背中を強打する痛みを感じ痛みに顔を歪めるも、姉様が心配になり声をかけるも反応は無い。
「姉様?」
動かせない体がもどかしく思いなから覆い被さっている姉様にもう1度声をかける。
「姉様、返事をして下さい」
意識を失っているのか反応が無く、焦り出すも微かな呼吸音が聞こえたたのを確認でき
硬った心が少し解れ、冷静さを取り戻せた。
心が落ち着いてくれば先程まで聞こえなかった声を拾い出し、
「おいおい。そんなに怖がらせたらダメだろ」
「まさか、本気にするとは思わねぇだろ」
「切る訳無いのにあの必死な顔。笑えるよな」
揶揄する声にバカにする声が耳に入り、怒りに震える中、姉様が意識を取り戻したのか身じろぎ
ぼんやりとした表情で目を彷徨わせているので
「姉様」
小さな声で呼び掛ければ目が会い、
「大丈夫ですか?何処かい痛い所はありませんか?」
意識を僕に向ける為に小声で問いかけるも相変わらずぼんやりとしたままだったが、
じっと僕と目を合わせた
「あなた、だれ?」
聞こえてきた言葉が理解できなかった。
第32話
ディランの視点で書ければと思いましたが思いの外難しく。
もう暫く続きます。
ブックマークに評価や星ありがとうございます。
誤字脱字を教えていただき感謝しております。ありがとうございます。
心地よい秋晴れですね。このまま穏やかにと思った矢先に台風情報が届きました。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
よろしけれお読みください。
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