弟は葛藤する
2023/04/22誤字修正をおこないました。
教えてくださった方ありがとうございます。
姉様が帰ってきた。
どうしても祭りまで居て欲しいと領民からの要望を受けお祖父様とお祖母様が判断をし、お父様とお母様が了承しての今日の到着になった。
道中は何事もないように遠くから警備が付き、順調に進んだようで報告書を見ると姉様もルイもあまり街に出掛けたりなどせずに宿の中で過ごしたと書かれていた。
好奇心旺盛の姉様だけど、ルイの心身を配慮しての事だろうと。
お父様もお母様も嬉しそうに報告書を読んでいた事を思い出していると
「ディラン様。お顔が緩んでおりますよ」
正面に座ったフレディの言葉に、視線を強め抗議するも
「変わらずお元気そうで良かったですね」
気にもしていない様で微笑み返して来た言葉に、心の中で重い息を落とし
「そうだな」
短い返事を返すと、
「相変わらずディラン様を愛しておられるようで安心いたしました」
微笑ましそうに告げられた言葉に、昨夜の姉様の行動を思い出し大きな息を落とした事で返事にかえれば
こちらの心情など分かっていると言わんばかりに意味ありげに微笑んだ姿が少し怒りが湧き、視線を窓の外へ移動させ学園までを過ごした。
いつもなら門で殿下や側近候補の方々をお待ちするのだが、先に講堂へ行き式典準備の進み具合を確認するために一足先に向かった。
大勢の行者が出入りするのを邪魔にならないように気をつけ講堂へ入ってゆくと、
「ディラン様、おはようございます」
柔らかな声に名前を呼ばれ振り向くと
「アメリア様、おはようございます」
殿下の婚約者でもあるアメリア様が微笑み、
「お早いのですね」
まだ自分達以外到着をしていないのだと伝えてくれ
「ええ。どこまで進んだか気になりまして」
来た理由をそのまま伝えると柔らかく微笑んでくださり
「明日から楽しみですわね」
表に出していない気持ちを悟られたらしく、自分の力量の無さを実感しつつも
「はい」
どう返して良いのか判断できず素直に返事を返すと、
「ステージの出来上がりを確認しに行きませんか?」
アメリア様が察してくださり、違う話題と行動を促していただけたのでそれに同行する事にした。
午前中に平民クラスの式典と受け入れをし、午後からはここでは無い講堂で貴族の令息や令嬢の入学の式典を行われる。
今年は王家である殿下が在籍されるので、貴族の式典だけではなく平民の式にも参加し生徒達に挨拶をする事が決まり、警備の問題や進行などの打ち合わせなど今日の予定は沢山ある。
明日、この講堂で姉様とルイが入学を認められるのだと思うと、
姉様と自分の置かれている立場を目にみえる形で理解し複雑な気分になる。
貴族籍の無い姉様と公爵籍の自分。
勿論、これだければどどまらず勉強内容や教室の格差。
想像を超える格差が出てくるだろう。
姉様は、大丈夫だろうか。
心のどこかでいつもの様に笑って何事も無い様に笑ってくれるのではないかと思ってはいるものの、自分の知らない場所や隠れて落ち込んでしまわないかと不安にもなり、
姉様に会えた嬉しさと同じぐらい不安でたまらない。
姉様に悟られる訳にはいかなくて、奥底に隠して見ないふりをしてきたが
気付かれての昨日はずっと抱き締めてくれたのだろう。
姉様と離れて少しは成長できたと思っていたがまだまだなのだと思い知り、そしてアメリア様にも心情を悟られてしまい、
情けない。
きちんと整理し切り替えないと殿下や皆様にも気を使わせてしまう。
アメリア様に気付かれないように数度深呼吸をし気持ちを切り替えステージの確認終え客席へ降り、1列1列念入りに座席の確認をしてゆくと
「アメリア、ディラン。おはよう」
殿下の声が聞こえ慌て体制戻し近くまで行き
「おはようございます」
家臣らしく挨拶を返すと、
「うん。おはよう」
どこかいつもとは違う微笑みにルカ様に尋ねるように視線を送ると、意味ありげに微笑まれたが
「アメリア、どこまで進んだ?」
ルーク殿下の質問に
「ステージ上は確認が終わりました。後は客席ともう1つの講堂の確認ですわね」
アメリア様が返答すると
「では、二手に分かれて行おう」
ルーク殿下の提案に全員で頷き、引き継きアメリア様と自分で今の場所の確認と進行の打ち合わせを終える事になり、
「ディラン様、引き続きよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
再び挨拶を行い手早く確認を終え、アメリア様を中心に進行を担当る教師と打ち合わせを終え生徒会室へと向かうと、ルーク殿下達は先に終えた様で、
「お疲れさん」
ザッカリーの出迎えの言葉にアメリア様と笑顔で返し、打ち合わせ内容をルーク殿下やルカ様達に伝えすり合わせをしてゆく。
生徒会が発足して初の仕切り担当をしている式典。
失敗をすることは許されないが、ルーク殿下を始め側近候補の方々は慣れているようで気負う気配は無く1人気負わなくても良いのだと安心感が得られ、
お疲れであろう皆様に紅茶でもと準備を行っているとザッカリーも一緒に手伝ってくれ、紅茶とティーフードで一息入れた所で
「抱きしめてもらえて良かったな」
何気ないザッカリーの一言に、なぜ知っているのかと問いただしたくなるも、
目からの王家や高位貴族に報告が行われている事を思い出し、
顔がら火が出るほど恥ずかしくなり、紅茶を飲んで落ち着こうとしたが
「中々離してもらえなかったと聞いているよ」
ルーク殿下の言葉に
「離す様に言われても離さなかったそうですね」
アーロ様の言葉に
「それだけお互い寂しかったんだろうな」
レジー様の言葉に
「そう、揶揄うのは如何かと」
ルカ様の言葉に
「仲が宜しくて微笑ましいですわね」
アメリア様の言葉に全員が知っているのだと告げられ、恥ずかしさの余り下を向き熱くなる顔を見せないようにしているが
「数日前から気そぞろで道中が心配そうだったが、無事で安心したよ」
ルーク殿下の言葉に、皆様に心配をかけていた事に気づき顔を上げ
「ご心配をおかけし申し訳ありませんでした」
言葉を同時に頭を下げ伝えると、
「いいよ。ディランの必死に隠そうとする姿を見ているのも楽しかったしね」
アーロ様の言葉に自分も態度に出ていた事と皆様に迷惑をかけていた事に気づき改めて謝罪をしようとすると、
「なぁ、こっちに来たて事はまた作るんだよな?ショートブレット食べたいんだけど作るように言ってくれよ」
場の雰囲気にぞぐわないザッカリーの言葉に
「え、ええ。作ると思いますので伝えておきます」
戸惑いながら返事を返すと、
「いいね。僕の分もお願いできないかな」
ルカ様の言葉に頷くと
「あら。2人だけずるいですわ。わたくしの分もお願いいたしますわ」
小さく笑いながらお願いと伝えてくれるアメリア様の言葉の後、部屋の雰囲気が変わったのが分かり
「皆様分をお願いしますので、よろしければ召し上がってください」
アメリア様とルカ様の心使いに感謝し提案をすれば皆様嬉しそうに微笑み頷いてくれた。
今だに慣れない言葉の裏表に反省と、姉様の行動に注意する事を決め屋敷に帰ったものの
「お帰りなさい」
両手を広げ、嬉しそうに自分に向かって走ってくる姉様に注意することも行動を制しする事もできず、そのまま抱き付かれ、
「ただいま帰りました」
自分の意思の弱さに叱咤したくなるも、笑顔で出迎えてくれ、嬉しそうに抱きしめてくれる事が嬉しく思う自分も居て、
心の中で葛藤するも、勝敗なんてものは決まっていて
ゆっくりと姉様の背中に腕を回し抱きしめ返した。
第318話
気温の差が大きくなっており心身を整えるのが難しくなっております。皆様ご自愛ください。
ブッマークや評価、いいねボタンをいただき誠にありがとうございます。
誤字脱字を教えていただきありがとうございます。遅くなっておりますが近日中に対応してまいります。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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