姉、王都へ到着する
2023/04/22誤字修正をおこないました。
教えてくださった方ありがとうございます。
馬の蹄の音とガタゴトと馬車の揺れる音。
王都から領は自分の骨折もありゆっくりと進んでいたが、今回は行きの時よりスピードを上げ立ち寄る街を少なくし、王都へ進んでゆく。
ルイが初めての馬車と言う事も配慮しつつ、空がオレンジ色の染まる頃最初の街に着いた。
前回の様に領主様に挨拶と言う事は無いのでそのまま街の宿に入り一晩過ごし、早朝また馬車に乗り次の街を目指す。
途中通り過ぎる街の説明をし、こんな街だったと立ち寄った雰囲気と街の特徴をルイに説明をして馬車の中を過ごし、それでも話す事が無くなるとそれぞれの知識からクイズをしたり、ミランダから習った隣国の言葉のみでその日を過ごしたり、
太陽がゆっくりと傾き出した頃、ようやく王都へ入り屋敷へと向かう。
「ルイ、見て。王都に入ったよ」
検問を通しずぎ窓の外を見る様に誘うと興味深に視線を窓に向け、
「すげぇなぁ」
街民が住む場所には沢山の商店が並び、沢山の人が行き交う。
領とは違う雰囲気の感想に頷き返し、
「もう少し進むと、また雰囲気が変わるからそのまま見てて」
街民の区域から貴族の屋敷が立ち並ぶ地域へと入ると、賑わっていた雰囲気が一変し静かで落ち着いた雰囲気に変わり、
「王都って凄いんだなぁ」
雰囲気に圧されているルイに、
「領とは違うから驚くよねぇ」
王都を出て領で過ごしたからこそ違いが理解でき、ルイの気持ちも理解でき頷いて返す事ができた。
「そろそろ着くと思うんだけど」
数年前の早朝に通った記憶なので曖昧な言葉で伝えると、
「エスメもディランも良い所の出だったんだなぁ」
しみじみと告げられた言葉に、
「凄いのは、お父様やお祖父様にご先祖様であって私ではないわ」
笑いながら返事を返すと
「まぁ、そうなんだろうけどさぁ」
視線をそらし言葉を濁すルイに
「私もディランも領にいた時となに1つ変わらないわ。だから今まで通りでいてね」
笑いながら伝えれば、
「うん。そうだな」
曖昧な返事に苦笑ししていると馬車の速さが遅くなり、見慣れた門の前で止まった。
「ルイ。門を超えたら到着よ」
居心地悪そうにしているルイに声をかけ、ちらりと見えた門番さんに笑顔で出を振れば微笑み返してくれ、嬉しくて気そぞろになりだすも、馬車が止まり扉を開ける許可を求めるノックの音に、
「開けても大丈夫です」
外に向かって声をかければ、扉が開きフレディのお父様である家令さんが見え
「ありがとうございます」
お礼を伝えると微笑み目礼をくれた後、視線でルイを下す様に伝えてくれたので、
「ルイ。降りれる?」
戸惑っているルイに声をかければ、頷きの後ぎこちなく立ち上がり馬車の外へ降りたのを見届け、家令さんが差し出してくれてる手を借り馬車を降りると、
「おかえり」
お父様と
「お帰りなさい」
お母様が出迎えてくれ、
「ただいま戻りました」
嬉しくて飛び込んで行きたかったが、お祖母様とミランダから教えて貰った様にカテーシーで挨拶をするとルイの驚き息を飲む音が聞こえたが、
「無事に到着して喜ばしく思うよ」
主として言葉をくれたお父様に
「長旅お疲れ様でした」
公爵夫人としてお母様の言葉を貰い
「頭を上げて、横に居る少年を紹介してくれるかな」
お父様の言葉にカテーシーを解き、
「私とディランの親友のルイと言います。ルイのお父様は領でお祖父様の下で勤めているのよ」
促されルイの説明をし終わった後、軽く背中を押すと
「ルイと申します。この度は学園に通わせていただける事、嬉しく思います」
深呼吸をした後、背筋を伸ばし堂々とした態度と言葉で挨拶をするルイにお父様もお母様も微笑み
「ディランとエスメの手紙で知っているよ。子供達を助けてくれてありがとう」
お父様がルイに近づき手を差し出すと、ルイもゆっくりと差し出し握手をしたのを見届け、
「長旅で疲れたでしょう。中に入りましょう」
お母様の言葉に頷き屋敷に入ると、
「お帰りなさいませ」
王都の屋敷を出た時と同様に皆に出迎えて貰え
「ただいま。これからよろしくお願いします」
挨拶をすると、
「我ら一同、エスメ様をお支えできる事を嬉しく思います」
胸に手を当て礼を取るフレディのお父様の言葉に、
「ありがとう」
改めてお礼を伝えると
「皆、エスメとルイを休ませたいわ。準備をしてちょうだい」
お母様の言葉にそれぞれの持ち場に戻り、
「マルチダ。久しぶり」
近くに残ってくれたマルチダに声をかけると
「エスメ様の専属担当をさせていただきます。よろしくお願いいたします」
腰を折り礼の姿勢のまま告げられた言葉に、
「顔を上げて。迷惑を沢山かけると思うけれど、よろしくお願いします」
主従関係をはっきりさせる挨拶を自分なりの言葉で返すとマルチダも頷き返してくれ
「ではお部屋へお着替えをお願いいたします」
案内されるまま移動しようと思うも、ルイの事が気になり視線を彷徨わすと
「ではルイさんには私がお部屋にご案内させていただきます」
フレディのお父様の言葉に頷き、
「ルイ、着替えたらそっちに行くから部屋で待っていてね」
マルチダを連れ、かつて自分が使っていた部屋へと向かった。
部屋に入っても記憶のままだが、本棚を見れば領で買った本や本屋の店主さんに借りたままの本も並べられており、
「入浴とお着替えを」
ぼんやりと見回しているとマルチダに声をかけられ、そのまま入浴と着替えを済まし紅茶を飲んでいると
ノックの音が聞こえ、返事をしたのちマルチダに対応して貰うと
「エスメ様。ディラン様とフレディが学園からお帰りになりましたよ」
告げられて言葉に勢い良く立ち上がり、マルチダが開けてくれた扉を出て走り玄関ホールへ向かえば、足音に気がついたディランとフレディが気づいてくれ、階段を降りるのがもどかしく風魔法を発動し飛び降り、そのままの勢いでディランに抱きついた。
少し小さくなったように感じるディランを抱き込み、
「ディラン、フレディ、お帰りなさい。会いたかった」
出迎えの挨拶を言葉にすると、
「ただいま帰りました。姉様も長旅お疲れ様でした、お帰りなさい」
背中に腕を回してくれ抱きしめ返してくれると、愛おしさが溢れ
「会いたかったよぅ」
思わずこぼれた本音に
「はい。僕もお会いしたかったです」
背中に回された腕に力がこもりながらの返事が嬉しくて
「お姉ちゃん。ディラン不足でもうダメかと思ったわ」
「よく分かりませんが、お元気になられて良かったです」
多分眉間に皺を寄せているでディランの言葉に
「ディラン大好き」
懐かしくもあり嬉しくもあって、思いの丈を伝えると
「ありがとうございます。僕も姉様のことが大好きですよ」
恥ずかしそうに頬を染めながら伝えてくれている表情が見れなくて寂しいもののどうしてもディランから離れたくなくて、抱きしめたままでいると
「よぉ、ディラン。相変わらずだな」
背後から聞こえたルイの声に
「久しぶりだね。元気そうで何よりだ」
ディランが嬉しそうにルイに話しかけているがやはりディランから離れたくなくて、嬉しそうにルイと話すディランが見れないが、それは後ほど堪能しようと決め今は自分の心を満たすことに決めた。
「エスメ。そろそろ離してやったらどうだ?」
ルイの言葉にも
「やだ。まだディランが足らないわ」
首を振り
「エスメ様。また後ほどにしてディラン様に着替えを」
フレディの言葉にも
「だめ」
首を振れば小さなため息が胸元に溢れ
「姉様。お疲れではありませんか?ルイもこのままでは疲れるでしょうし僕の部屋でお茶でもいかがですか?」
ディランの嬉しいお誘いに、
「分かったわ」
頷くとディランを抱き上げ歩き出すとフレディから仕方ないとばかりに微笑まれ、階段を登る際には風魔法を発動させディランの部屋へと入ってゆく。
「姉様」
背中を軽く叩かれ下す様に告げられてしまい、渋々下ろし腕を解くと
「すぐに戻って参ります」
フレディを連れ入浴室へ入ってしまい、寂しくて佇んでいると
「エスメ。ディランはすぐ戻ってくるから座って待とう」
ルイが手を引いてソファに座るように連れて歩いてくれたので腰を下ろし、マルチダが用意してきた紅茶を飲む気にはなれず、入浴室の扉を見つめていれば、制服から室内着へと着替えてきたディランが早足できてくれ隣に腰を下ろし
「姉様。お待たせしました」
手を広げてくれたのでそのまま抱きついた。
少し小さく感じるディランは数ヶ月前に会ったままで、ディランはルイに座る様に告げた後
「姉様、身長がまた伸びましたか?」
「自分では自覚はないけれど、皆そう言ってくれるわ」
なるほど。だからディランが小さく感じたのね。
心の中で納得すると少しだけ余裕が出てきて
「ディランもお父様やお祖父様の様に大きくなるわ」
肩に凭れているディランの頭を撫ぜれば、
「ええ。そうなる予定です」
願望がこもった言葉に
「楽しみだわ」
大人へと成長してゆくディランが近くで見れる事が嬉しくてさらに抱きしめると
「ええ。必ず姉様を超えてみせますので楽しみにしていてください」
さらに嬉しい言葉をくれ、力の限りディランを抱きしめた。
第314話
新しい年度はいかがお過ごしでしょか?慣れない日々は心身が疲れやすいですのでたっぷり休息を取ってください。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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