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姉、別れの挨拶をする

2023/04/12誤字修正をおこないました。教えてくださった方ありがとうございます。


いつもの時間に目が覚め、本当だったら着るはずの紺色のメイド服と室内帽を身に付けず着慣れた綿のワンピースを着てドレッサーの椅子に座り髪をブラシで解き左右に分け耳たぶの位置でリボンで結ぶ。


普段と同じ格好だけど何処か見慣れぬ姿に、今日は特別な日なのだと実感が増してドレッサーから立ち上がり今度はソファに座り部屋を見回した。


1年と少しだけ過ごした部屋。


最初はディランの部屋で過ごす時間が多かったから寝るだけの部屋になっていたけれど、ディランとフレディが王都へ行ってからは沢山の時間をこの部屋で過ごし、

沢山の初めてを経験した。


沢山の思い出が詰まった部屋でぼんやりしていると、ノックの音が聞こえ


「起きてますので、どうぞ」


扉に向かって返事をすると、開けて入ってきてくれたのはハンナさんテアさんボアさんで、


「おはようございます」


3人から朝の挨拶を貰い


「おはようございます。今日もよろしくお願いします」


朝の挨拶にいつもと同じ言葉を伝えると、微笑んで頷いてくれ


「間も無くルイが到着すると思いますので、今暫くこちらでお待ちください」


ハンナさんの言葉に返事と共に頷き、


「本日はハーブティーをご用意いたしましたが、いかがですか?」


テアさんの言葉にお礼の言葉と共に飲みたい事を伝え、


「リボンをお直ししてもよろしいですか?」


立て結びになっているらしく、ボアさんの言葉にお願いとお礼の言葉を伝え直して貰う。


いつもはキッチンで慌ただしく朝食を作っているこの時間。


今日は領を出て王都へ向かう。


王都から領へ来る日は、寂しさもあったけれどディランとフレディと一緒だったから楽しみにしており、

道中、色々な事があったけれどそれでも楽しかった。


ディランの博識の所に関心し、この日の為に沢山勉強をしてくれたのだと思うと愛おしくて街の成り立ちや食事のマナーを少し得意げに教えてくれる姿は本当に可愛かった。


今度は自分がルイに教える番。


ディランとフレディから宿泊する予定の街の約束事に食事のマナーが書かれた手紙も届いている。


前日に見直してルイに伝えれば大丈夫。


出発の後の事を考えると緊張が心を占めるも、テアさんが入れたハーブティーを飲んで心を落ち着かせ、ソファから立ち上がり


「ハンナさん、テアさん、ボアさん。今日まで沢山助けていただきありがとうございました」


領にきてから今日まで沢山お世話になったお礼を伝えると、


「勿体無いお言葉」


ハンナさんの言葉に、


「勉強にドレスの流行りに刺繍の練習に付き合って貰ったりと、本当に嬉しかったです」


沢山お礼を伝えたい気持ちがはやり、うまく言葉が作れずにいると


「私達も、勉強した事がお役に立て嬉しく思います」


テアさんの言葉に何度も頷き


「私が作った料理を食べてくれてありがとうございます」


初めてみる料理を率先し躊躇いなく食べてくれた事を思い出しお礼を伝えると


「役得でございました」


微笑みながらのボアさんの言葉に、嬉しすぎて思いが膨らみすぎて言葉に詰まると


「学園では沢山の事があるかと思います。エスメ様のお気持ちで動いてください」


ハンナさんの言葉に頷き、


「沢山お友達を作ってくださいね」


テアさんの言葉に何度も頷き返し


「何かあったらディラン様がどうにかしてくださいますから遠慮はいりませんよ」


ボアさんの言葉に驚いた後、


「そうね。ディランも一緒だもの心強いわ」


笑顔で返事を返す事ができ、皆の学園での思い出を聴いているとノックの音が聞こえ、


扉に近かったボアさんが対応してくれると、イルさんが部屋の中に入り


「エスメ様。ルイが到着いたしました」


出発の準備ができたのだと伝えてくれ、頷き返事をした後


「イルさん。沢山助けていただきありがとうございます」


これまでの事へのお礼を伝えると、


「この歳で沢山の初めての経験させていただき、とても楽しゅうございました」


お仕えできたことを誇りに思います。


言葉と共に胸に手をあて1礼を貰い、


「そう言っていただけて嬉しいです」


返事を返すと、礼を解いたイルさんから


「王都に居る息子と孫を存分に振り回してやってください」


少しおどけた感じの言葉に、周りの雰囲気が明るくなり


「ええ。お父様に叱られない程度にやりますね」


イルさんが変えた雰囲気を壊さないように返事をすると皆で笑い、


「そろそろ参りましょうか」


エスコートをする為に差し出してくれた腕に手を添えればボアさんが扉を開けてくれ部屋から出た。


ゆっくり進み、階段の下にお祖父様とお祖母様とルイを見つけるも、両壁に料理長にメイド長など沢山の人達が集まってくれており、驚きながら階段をおりルイさんのエスコートを解くと、


「エスメ、忘れ物は無いか?」


お祖父様の大きな手が頭を撫ぜてくれ


「はい。皆に確認してもらっているので大丈夫です」


嬉しく思いながら伝えると、


「なら、大丈夫なら。何か必要な物があったらすぐに遠慮せず連絡をするんだぞ」


その言葉と共に抱きしめてくれ、


「はい。すぐに手紙に書きますね」


腕を背中に回した事を頷いた返事の代わりにし、暫くした後互いに離れ、


「お祖母様」


言葉を同時にお祖母様へ抱きつくとすぐさま抱き返してくれ、


「ミランダ達との食事、ありがとうございます。とても楽しかったです」


秘密にされていた贈り物のお礼を伝えると


「喜んでもらえて良かったわ」


普段と変わらない声と音で返ってくるも、お祖母様の気持ちは知っているので


「3年後、帰ってきます」


腕に力を入れ伝えると


「ええ。楽しみに待っているわ」


少し震えた言葉に涙が溢れそうになるも、


「ルイが待ちぼうけてしまうわ」


お祖母様から抱き合っていた腕を解かれ、


「ルイ。遅くなってごめんね」


見守ってくれているルイに声をかければ首を振り返事をくれた。


深呼吸をし、


「行ってきます」


大きな声で伝えると


「行ってらっしゃいませ」


壁側で見守ってくれていた使用人の人達から言葉を貰い、お祖父様とお祖母様の顔を見た後ルイと共に玄関を潜り馬車へ乗り込んだ。


出発の合図をノックで伝えると、ゆっくりと馬車が動き出し窓から開いている玄関の中を見ると、

お祖父様がお祖母様の肩を抱いながら手を振ってくれる姿を見えなくなるまで見続けていると、


街道には沢山の街の人が並んでおり、馬車に向かって手を振ってくれ時折


「行ってらっしゃい」


「お気をつけて」


声をかけてくれ、子供達は精一杯背伸びをし手を振ってくれ、気がつけばいつもの噴水広場を一回りしており、嬉しさで目が熱くなる。


ゆっくりと進む馬車の速さなので街の人達の顔がよく見え、お世話になった本屋さんの店主さんを見つけ、

ギルトの前ではギルト長と受付でお世話になった人も手を振ってくれ、


紙刺繍工房の近くでは、工房で働くご婦人や青年が手を振って声をかけてくれ、少し離れた所で


「ルイ!外を見て」


慌て正面に座るルイに声をかけ窓の外を見るように促すと


「ミランダ」


溢れ落としたルイの声に席を譲り、ミランダの隣にいるミラとコナーさんに手を振り、行ってきますと伝えると届いたのか頷き手を大きく振ってくれた。


胸元をぎゅっと握りしめているルイを視界の端に入れながら、手を振っているとぬくもり亭まで馬車は進み、領地を少し離れた所でスピードを上げ走り出した。


胸元を握り顔を伏せたままのルイの隣に座り、かける言葉が見つからず抱きしめ宿泊の街に着くまで過ごした。



第313話


桜が終わりましたがまだまだ沢山の花が咲き出しましたね。散歩する時間が楽しいです。


ブッマークや評価、いいねボタンをいただき誠にありがとうございます。


ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。

お時間ありましたらお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n4082hc/


フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。


お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!

https://ncode.syosetu.com/n9341hw/


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