姉、やりたい事はやるべきと思っている
2023/03/28 誤字修正をおこないました。
教えてくださった方、ありがとうございます。
朝の勉強を終え、日課となった入浴にマッサージを受け工房の仕事へ取り掛かった所で、
「エスメ様。ギルト長から急ぎ来て欲しいと。伝言が届きました」
ノックの後に入ってきたイルさんの言葉に首を傾げつつも、
「分かりました。準備ができ次第すぐに向かいます」
至急来て欲しいとの伝言に緊急性を感じ、ハンナさんに手伝ってもらい中で身なりを整え馬車へ向かうと、
「ミランダ?どうしたの?」
この時間はお祖母様と紙工房の運営や営業の為の勉強をしている筈と疑問と口にすれば、
「イルさんからエスメさんと一緒にギルト長の元へ向かう様にと指示を受けまして」
返ってきた返事に驚きつつも、
「ミランダと一緒なら心強いわ」
どんな内容なのか想像できない中、1人では無くイルさんとミランダと一緒にギルト長と対面できるのは安心感が増し、少しだけ感じていた緊張感を解き全員で馬車に乗りギルトへと向かった。
イルさんのエスコートを受け、ミランダの後に降り
「お忙しい所、お呼びだてしてしまい申し訳ございません」
出迎えてくれたギルト長の謝りの言葉に小さく首を振り
「気にしていないわ」
返事を返し、ここではとの言葉の後に建物の中へと案内された。
数度きた事ある部屋は記憶のままで、案内されるままソファへミランダを共に腰掛け斜め後ろにイルさんが立ち待機してくれると、紅茶をローテーブルに用意されると、
「早速で申し訳ないのですが、会っていただきたい人物がおりまして」
言葉の中に少し困惑の色を混ぜて告げられた言葉に頷き返せば、ギルト長は扉の外に向かい少し大きな声をかけると、ディランより少し年齢が下に見える男の子が姿を現し、ギルト長に視線を向ければ
「実は、彼に紙刺繍工房で働きたいと、告げられまして」
聞こえてきた言葉に驚き男の子の顔を見ると、驚いた表情と共に体を揺らしながらも
「一生懸命働きますのでお願いします!」
大きな声と勢い良く頭を下げる姿に、ミランダと視線を合わせ互いの答えを確認すると、
「働きたいとのことですが、紙刺繍工房でお間違いありませんか?」
ミランダの問いかけに、
「はい。間違いないです」
声が振るわせながらの返事に、
「確認させてくださいね。刺繍を刺したいとの事で合っていますか?」
ミランダが柔らかな声で尋ねると、
「はい。刺繍がしたいです」
ハッキリと大きな声で告げられた言葉に聞き間違いでは無いようで、
「まずは顔を上げて」
いつまでも礼をさせたままではと思っていた所にミランダの言葉がかかり安堵の息を心の中で落とし顔を上げた男の子の顔を見るも、会った記憶はなく、
ミラと一緒にいる子じゃないのね。
全員の顔を覚えてい無い自分に少し落ち込みつつも、ミランダの問いかけにはしっかりと受けごたえできており、
「この質問は工房で働く全員聞いているのですが、刺繍を刺したことはありますか?」
淑女の微笑みに似た笑みを浮かべながらのミランダの質問に、
「刺繍と言えるか分かりませんが、おばあちゃんから少し習いました」
自信が無い様で視線を彷徨わせるが、
「そうですか。針を持ったことがあるのですね」
言葉を変えミランダが頷きと共に返事をすると、安心した様に不安そうな表情が少し明るくなった。
男性の雇用
それも力仕事ではなく刺繍の方では流石のギルト長も返答に困るわよね。
ミランダとのやりとりを見つつ、採用する方向で考えを固めミランダに視線を向ければ、
「ありがとう。質問はここまでとしましょう」
視線の意味を察してくれた様で、1度言葉を切った後
「採用とします」
お願いした言葉を告げてくれ、喜び頬を赤くしている男の子の姿に微笑ましく思っていると、ギルト長が何か何か言いたげな表情だったので、
「男性だから、女性だからと区別する事はしません。やりたい。その気持ちが大事だと私は思っています」
自分の気持ちをギルト長へ伝えると、困ったように笑われ、
「エスメ様でしたらそうおっしゃるだろうと思っていたのですが、確認を取る様なことをして申し訳ありません」
謝りの言葉が返ってきたので、
「男性の雇用は初めてですもの。戸惑いもあれば決断する事に躊躇する事もあること。何よりギルト長に声をかけてもらえて嬉しかったです」
淑女の微笑みを作りつつ返事を返すと、ギルト長はどこか照れくさそうに頭に手を当てた天を仰いだ後、ソファから立ち上がり、契約書を作成し男の子と紙刺繍工房の契約を結んでくれた。
「エスメ様。私はこのまま彼を連れ紙刺繍工房へ向かおうかと思います」
ひと段落し部屋の雰囲気が軽くなった所のミランダの言葉に頷き、一緒にと腰を上げると
「エスメ様、この後の予定がありますので」
すぐ後ろで待機をしてくれていたイルさんの言葉に内心首を傾げつつも、
「分かりました。ミランダお願いね」
イルさんの言うことだから何か意味がある筈と従う事に決め、ミランダにお願いすると頷きいてくれ一足早く男の子とギルトを出て行った。
「では、我々も」
イルさんの言葉に頷き、ソファから立ち上がりギルトを出て見送りに来てくれたギルト長に
「見送り、ありがとうございます」
お礼を伝え馬車に乗り込み、イルさんと共に屋敷へ帰る馬車の中で
「ずっとディランより下の年齢だと思っていたのですが、彼が年上だった事に気づけませんでした」
優しげな雰囲気を纏い、少し下がっている目尻と柔らかな声と細い体つきに先入観で判断してしまった事を反省していると、
「あの者ならばすぐに工房に馴染むかと。慣れた頃に様子を見に行くのがよろしいかと思います」
イルさんの言葉に頷き、
「お祖母様へ報告をしないと」
屋敷に戻った後の事の予定を組み直しながら言葉にすると、
「かしこまりました。お伺いをいたします」
イルさんから返事を貰え、お願いをすることにした。
第305話
桜が間も無く満開を迎えようとしており、スマホで写真を沢山撮りました。同じ木でも毎年咲き方が違って良いですね。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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