姉、思わぬ好意を知り受け取る。
朝夕の温度差はあるものの穏やかな日が続き、街を歩くと皆どこか嬉しそうな雰囲気を楽しみ、声をかけてくれたご婦人達と会話を楽しんだ後、教えて貰った新しく開店したお店を覗き、焼き菓子を購入し街の人達と会話をし足を進める。
目的の扉を少し開け中の様子を伺うも、静かな雰囲気に首を傾げつつも扉を開け
「こんにちは」
挨拶をし本棚の間を歩き進めカウンターに到着すると、
「いらっしゃい」
どこか疲れた雰囲気の店主さんに心の中で苦笑しつつ
「焼きお菓子はいかがですか?」
手に持ってきた焼き菓子を差し出しながら伝えると、
「いただこう」
疲れた表情のまま手を伸ばし、袋の中から焼き菓子を取り出し食べ始めた姿を見つつ近くにあった椅子に腰を下ろし、
「先程、ご夫人達からお店に子供達が頻繁に来ていると聴きました」
自分がお願いした身としては、ご夫人から聞く前に様子を伺いにこなければ行けなかったのだが、つい今になってしまい、
「伺うのが遅くなり申し訳ございません」
謝りを言葉にすると、
「いや。こうなると分かっていて引き受けたのはこっちだ気にするな」
数枚のお菓子でお腹が膨れたのか少し元気になったようで、
「ゴーフル、ありがとう。美味かった」
先程手渡した焼き菓子のお礼を貰い
「お口に合って良かったです。ご婦人から新しくできたお店と伺ったのですがご存じでした」
お礼の返事を返すと会話を広げるために繋げると
「前、旅先で食べてな」
頷きと共に帰ってきた言葉に頷き、
「そうだったのですね。この凹凸したの焼き菓子は誰でも食べれるお菓子ですか?」
まだ残っている焼き菓子は前の人生でワッフルと呼ばれていたお菓子だけど、砂糖の甘みは無くシンプルに小麦粉を水で溶き、味付けは塩のみ。
食事の代わりにしている人もいるのだと店主さんは話してくれ、
「焼くにはこの凹凸を出す専用の板がある」
「なるほど。屋敷で作るのは無理ですね」
「そうなるな」
一通り会話が終わり、
「子供達ともこんな感じでお話をするのですか?」
本題に水を向けると
「そうだな。静かに聞いてくれる時もあればそうでない時もある」
苦笑いをしながらの言葉に、
「旅の話が人気みたいですか?」
この本棚に囲まれた少し暗い空間に好奇心で目を輝かせた子供達が沢山いるのだと想像すると頬が緩みそうになるのを抑え、微笑みながら尋ねると
「そうだな。どの子供達も楽しそうに聞いてくれる」
返ってきた言葉に頷き返し
「他はどんな話を?」
さらに尋ねると
「お嬢さまが王都に行くと聞いたらしく、王都はどんな所だと尋ねられることが多くなった」
返された言葉に驚くと
「どれだけ遠いのか、どうやって行くのか、どれだけ日にちがかかるのか」
指を折りながら告げる言葉に返事を返せないでいると、
「王都の学園にはどうすれは入るのか。とも聞かれたな」
あまりの予想外の事に戸惑うながら意味も無く頷けば、
「皆、君と離れるのが寂しいらしく、外を歩くと大人達にも同じことを聞かれるぞ」
告げられた言葉に驚きを隠せないでいると、
「それだけお嬢さまが、みんなに愛されていると言うことだ」
さらりと告げられた言葉に嬉しさと恥ずかしさに、
そんなことは。
そう言葉にしそうになるが、
「嬉しくありがたいことです」
謙遜せずに言葉で返す。
そこからは、少しの雑談の後
「そういえば、1人、王都の学園に入れても良いと思う子供がいるんだが」
思い出したかのように告げられた言葉に頷き返すと
「お嬢さまが3つ下らしく入れ替わりで入学させても良いと思う」
ミラが入学するまでの間にちょうどいい人材だ。
「わかりました。お祖父様にお伝えしておきます」
深く頷き、返事を返すと
「ミラの授業で事足りると思うが、足らない知識はこちらで教える。そう伝えてくれ」
頼まれた事を頭に刻み、その後少し話した後は会話が途切れたのを良い事に互いに本に手を伸ばし文字で綴られた世界に入っていった。
第298話
花粉で車が色が変わり慄いて、引きこもる為に本を数冊買いました。紙の本は久しぶりなので楽しみです。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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