姉、空を飛ぶ
2023/03/10 誤字修正おこないました。
教えてくださった方、ありがとうございます。
寒さの和らぎ、暖かい日が続くとどうしても屋敷にいてミランダは話をするだければ落ち着かなくなり、
ミランダがお祖母様とイルさんから紙刺繍工房の運営の勉強をしている間、
箒に跨り、久しぶりに空を飛ぶ事にした。
急な思い付きだったにも関わらずボアさんは快く乗馬服を用意してくれ着替える手伝いまでもしてくれ、
「ありがとうございます。行ってきます」
玄関先でボアさんと近くにいた使用人さん達に見送られ空へと飛んだ。
暖かな空気だったが空では寒く、少し低空を意識し街の上をゆっくりと1周しながら街を見下ろす。
いつも笑顔で挨拶をくれる屋台の人達にご婦人達。
勉強中にも関わらず歓迎し向かい入れてくれる子供達と仕方ないと息を落とすミラの姿も見え微笑ましく眺めた後、
山へ向かって飛ぶと複数人の男性の声が聞こえたので興味を惹かれ向かえば、騎士の人達が声を出し撃ち合いの練習を行なっているのが見え、
イルも練習をしているはず。
目を凝らし探すと、大きな体格の人達に囲まれた中に居た。
指導を受けている様で、向かい合い話していたが次の瞬間小走りに相手の所へ向かい、剣を持ち撃ち合いを始める姿を見て
怪我ではないようで良かった。
安堵の息を落とし、これ以上は邪魔になると旋回し今度は魔法道具工房へ向かう。
そういえば。
親方さんにお願いをしていたままになっていたことを思い出し、工房の前で降り玄関の扉をノックし訪問を知らせると、
久しぶりに会う青年に挨拶と約束はしていないが、親方さんに会う事ができるかを尋ねれば、室内に姿を消し、
「お嬢さま。久しぶりだな」
お祖父様に良く似た体の大きな親方さんが室内から出てきてくれ、
「お久しぶりです」
淑女の微笑みと共に挨拶を返すと、中に入る様に告げられ親方の大きな背中を見ながら案内された席に座る。
「で、今日は何を思い付いたんです?」
楽しそうに笑い尋ねてくる親方さんには申し訳ないが、
「今日は以前お願いしていた物の進行具合を尋ねたくてお邪魔しました」
微笑みを崩さないまま返事を返すと、
「ああ。魔法石のアクセサリーな」
思い出したかの様に頷いた後、椅子を立ったかと思うと小さな箱と共に戻り
「こんな感じに仕上げたがどうだ?」
蓋を取り、言葉と共に見せてくれたアクセサリーには0.3カラット程の透明な魔法石を中心に色とりどりの小さな魔法石が配置されており、
「素敵ですね。ありがとうございます」
言葉だけの説明だったにも関わらず想像以上の綺麗に配置をしてくれた親方さんにお礼を告げると
「チェーンの長さは短めと言っていたが、前に作ったのと同じ長さで良いのかい?」
「はい。同じでお願いします」
プレゼントする人物を思い浮かべ頷き返した後、
「後、数本お願いしたいのです」
「構わないぜ。期限はいつだ」
笑顔で頷いてくれ、日にちを決め付けて欲しい魔法石は改めて持ってくると約束をし、
見送ると言葉をもらい一緒に玄関へ向かい歩いていると
「お嬢さま。もうすぐ王都へ行くんだろ?」
「はい。学園に入って3年学んできます」
工房で働く人達に軽く挨拶をし返事を返すと
「夏の祭りはどうするんだ?それまでこっちに居るのか?」
尋ねたれた言葉に瞬きをし
「夏の祭り」
思わずこぼすと、
「なんだ。まだ決まってないのか?」
驚いた表情と共に尋ねられた言葉に頷き
「そういえば、出発する日にちは聞いてませんでした」
眉を下げ困ったように微笑み返すと、
「まぁ。色々あるんだろうな。決まったら教えてくれ」
ぽんと大きく皮の硬い手が頭に置かれ
「気をつけて帰れよ」
入り口に立てかけていた箒を手渡してくれたので頷き箒に跨り
「では、よろしくお願いします」
親方さんが頷いたのを見て、空へと飛んだ。
そうだわ。王都へ行くことは決まっていたのに日にちを知らないだなんて。
屋敷に帰ったらイルさんに聞いてみよう。
真上にあった太陽が少し傾きを確認し屋敷に戻ると、ボアさんとイルさんが出迎えてくれ、
「ミランダがエスメ様の自室にて待っております」
イルさんの言葉に頷き足早に自室へ向かい、ボアさんにノックと扉を開けてもらい部屋に入れば、
立ち上がり出迎えてくれたミランダに
「遅くなってごめんなさい」
謝りと共にソファに座るように促し、ミランダから今日習った事の報告を受けた後は先程見てきた街の光景を話、互いに笑い合い、
「そうですか。ルイが元気の様で安心いたしました」
「遠くからだったけれど大きくなっているのは分かったから会えるのが楽しみね」
紅茶を飲みたわいのない話をし、
「そろそろお暇をいたします」
ミランダの言葉に頷き
「明日も待ってるわ」
いつもの約束を交わし玄関まで見送る。
勿論、ミランダ1人で返すわけは無く、騎士の人を護衛にアパートメントへ送り届けて貰う。
姿が見えなくなるまで見送り、自室へ帰る途中
「イルさん。私、いつ王都へ向かうかご存知ですか?」
親方さんに聞かれた事をそのまま尋ねれば、
「準備と護衛の関係もございまして、只今調整をしているところでございます」
いつもの微笑みの中にほんの少し困ったような雰囲気を感じ取り、
「いえ。急いでいると言うではないのです。ただ気になっただけです」
慌て首を振り返事を返すと
「決まりましたらお伝えいたします」
イルさんの言葉に頷き、この後は魔法石のかけらの選定する事を告げイルさんと別れ自室に戻った。




