姉、助言を貰う
2023/03/02 誤字修正を行いました。教えてくださった方ありがとうございます。
2023/03/05 誤字修正をおこないました。
教えてくださった方、ありがとうございます。
数日前から暖かくなり、ベットから出やすく魔法を発動させる事が少なくなり、キッチンから井戸まであった積雪も土が見える範囲が広くなり、新芽が顔を出してるところもあった。
朝の勉強に工房の報告書や書類制作。
この日は、紙刺繍工房で技術試験が行われ、工房の代表者であるお祖母様の判断待ちであることが書かれており、
「1人でも多くの人が合格できるといいのですが」
試験を受けた名前が書かれた紙を眺めれば、ミランダの名前もあり、ポツリと言葉を漏らすと、
「さようでございますな。合格者が増えれば作品も増え流通も多くなり沢山の方々の目に留まり手に取ってくださる方が増える。とても喜ばしい事です」
イルさんが微笑みと共に頷いてくれ、
「屋台で拝見した作品は様々な色や形のミモザの刺繍がありました。皆の素敵な所は消さず作品の特徴としていただけると嬉しいです」
同じに見えてよくよく見れば違う色や形。
必ず誰かの好みに引っ掛かるはず。
勿論同じ型と糸で作る作品も作り販売をすることが前提にはなるが、
みんな違ってみんな良い。
夢物語のようなこの言葉を実行したいのだと伝えれば、微笑みを深くしてくれ、
「奥様にお伝えいたします」
一礼をして自室から出てゆくイルさんを見送り、残りの書類に目を通し終えると、
「では、行ってきます」
ボアさんの見送りを貰い、いつものように街へと歩く。
太陽の光が温かく、新芽の色が目に入り季節が変わり終えているのだと体感しつつ歩き、目的である本屋さんの扉を潜り、
「こんにちわ」
カウンターの内側で出筆をしているのが見え、驚かさない様に小さな声で挨拶をすると、
「ああ、お嬢様か。久しぶりだね」
手を止め顔を上げてくれので改めて挨拶をし、聞いて欲しいことがあるので時間を貰えないかと尋ねれば、
「わかった。キリの良い所で終わらせるから、それまで待ってて」
言葉を言い終わると、返事を待たず再び紙へ視線を戻し手が動き始めたので、周囲に視線を走らせ気になる本を手に取り、いつもの席に腰を下ろし厚手の表紙をめくった。
どこかの国の少年から始まるこの本はどうやら日記のようで、日付と共に1日の事が書かれたおり、
勉強の内容と教科で先生の話
家族の事
友人達と過ごした日々
成長するにつれ、
家族との考えの違い
自分の立場
家のしがらみ
友人との交流関係
婚約者との過ごした日々
様々な日常が書かれており、喜びと葛藤が手に取るように細かく書かれていた。
どうやら少年の学生時代の途中で終わっており、続きが気になり顔を挙げれば、
「終わった?」
店主さんと目が会い、問われた言葉に頷き、日記の続きのがあるのか聞きたかったが
「話って何?」
店主さんから切り出され、お邪魔をしている目的を思い出し
「あの、実は考えている事がありまして」
ミランダに話た本の貸し出しについて、思いつくままに話をすると、
「良いとは思う。けど管理は大変だし紛失があった時の対応なども考えないと」
反対ではなく頷いてくれた事に心の中で安堵の息を落とし、思い付く様々な提案をし意見交換を交わす中、
「生活に余裕が出てくれば、趣向品は喜ばれるが反対の時代も必ずあることを理解するべきだ」
真剣な表情で告げられた言葉に、前の人生を思い出し
「生活魔法道具の収入も紙刺繍の収入も無限だとは思っておりません」
流行り廃りは必ずくる。
それも理解はしていると強く伝えれると、ため息が落とされた後
「イルさんとご当主様に話て許可がでれば、協力させて貰うよ」
その言葉を貰い、
「ありがとうございます」
お礼を伝え、足早に屋敷に帰りミランダと本屋の店主さんと話た事を書類にまとめ、イルさんとお祖父様のもとへ届けて貰うと、すぐさまイルさんか部屋に来てくれ
「とても素晴らしいお考えかと思います」
微笑みと共に告げられた第一声に、嬉しく頷くも
「ですが、今すぐと言うのは大変難しくお時間をいただければ幸いでござます」
聞かされた結果に、驚き返事を返せないでいると
「間も無くエスメ様は王都へと旅立たれます。できればそちらを優先していただきとうございます」
すっかり忘れていた事をイルさんの口から告げられ、思わず頭を下げてしまうと
「領にお戻りになった際に着手しても遅いことはございません。それに王都には沢山の本もございます。本の選別をするのも良いかと思いますよ」
浮かれていた気持ちが一気に落ちてしまった事でイルさんから慰めと提案を貰い、
「そうですよね。どんな本でも良いと言うわけにはいきませんよね」
落ちた気持ちは上がって来れないが、イルさんの気持ちに微笑み頷き返した。
その後お祖父様から届いた返事も同じような事が書かれており、
「エスメの考えはとても素晴らしいが、王都から帰ってからでも遅くないと思う。よければ子供達を本屋につれて行き店主に紹介するのはどうだろうか」
信頼関係ができれば本の貸し借りもできるのではないか?
お祖父様からの提案は目から鱗が溢れ、
「そうね!どうして思いつかなかったのかしら」
思わず大きな声での独り言を言ってしまうも
明日、街に行き本屋の店主さんにお伺いを立てて許可が出たら、ミラ達に知らせよう。
希望者がいれば私と本屋に通えばいいわ。
1度は諦めなければならないかと思った提案が違う形で実行できそうな事に嬉しくなり、いそいそとベットに入るも、
なかなか寝付けず翌朝を迎えた。




