姉、意気込む
ガタゴトと馬車の車輪が動く音と馬の足音が聞こえる中、
「我が領地は隣国との境目にあり、代々辺境伯と共戦をし国を守ってきた家でもあります」
硬い声と表情で淡々と話すディランの表情を眺め耳を傾ける。
「今は、国同士の争いをせず助け協力し合う約束をしているので戦はありません。
が、野獣が出て畑や街に出て来た時の対応や治安の為に我が家で作った騎士団があります」
時折、頷き返し聞き覚えをしていく。
「ここまでは大丈夫ですか?」
伺いを立ててくれるディランに頷き、
「森があるけど主に農業を中心として税を納めているで合ってる?」
基本ですと一言目に言われ教えてくれた事を改めて言葉にすれば、頷いてくれ、
「森の中に隣国との国境があります。到着しましたら確認に行きますので、予定を開けて下さい」
お互い対面する位置に座り、目合わせ予定を伺う言葉に
「今の所、予定は無いから前日に言ってくれれば大丈夫よ」
すぐさま返事を返した。
屋敷を出てからディランの横には従者のフレディが居るが、今、自分の横は空席で専属メイドは居ない。
独り立ち
1人で生活ができるように領地では訓練をするのだとお母様から告げられている。
着替えも、食事の準備も、部屋の掃除も洗濯もなんでも自分1人でするように言われても、
驚くことはなかった。
屋敷にいた時に、生活魔法道具を作り為にランドリーメイドの元へ通い、ハンカチを洗ったりもした。
掃除もメイド達について周り、箒を持ったり、雑巾で窓を拭いたりもした。
大丈夫。
頑張って独り立ちしてマルチダに褒めてもらうんだ。
領地に行ったら魔法だって好きなだけ使えるから新しい魔法もいっぱい考えて、箒で空も飛んで、
新しい生活魔法道具も作りたい。
やりたい事、叶えたい事を思い描き1人微笑んでいれば、
「楽しい想像をしているのは良いのですが、もう少しこちらに集中をして下さい」
ディランからの言葉に意識を戻し、
「ごめんなさい」
素直に謝れば、
「いえ。それで、何を思い浮かべていたのですか?」
ゆっくりと首を振られた後いに聞かれた言葉に、
「新しい生活魔法道具を作りたいなぁて思ってね」
膝の上に置いてある布の袋かた魔法石の屑を取り出した。
採取後、形と大きさを変える為に削られ捨てられて職人達から屑だと言われた欠片を
もう1度魔法石として生き返らせ、平民の人に手に取って貰いたい。
そう願い、取り出した1粒の欠片を握り締め魔法を入れ込む。
が、亀裂の入る音がしたのち手に中で粉々になった。
「石が小さい分より精密な魔法をコントロールしないといけませんね」
ディランの言葉に頷きながら、開いた掌の上には粉々になった魔法石をどうするべきか
左右見渡し探しているとフレディがどっから取り出したのか、
「エスメ様、こちらの上に乗せてください」
差し出された紙の上に砕けた魔法石を乗せるように言われた後、ハンカチで丁寧に拭き取られる。
「ありがとう、フレディ」
礼を告げると
「お一人では何かとお困りの時もあるかと思いますので遠慮なくお申してけください」
微笑みながらの言葉に
「ありがとう。もし、本当に無理だったら相談に乗ってね」
再び礼を言い、フレディの優しさに甘えると告げれば、
「姉様。無理と思う前に僕やフレディに言ってください」
ディランの優しさに嬉しくなり
「ありがとう。何かあったらすぐに言う約束したからすぐに相談に行くね」
小さく笑い声を含ませながら言えば、
「ええ。領地でも約束は必ず守ってください」
真剣な表情のままの言葉に
「勝手な行動はしない。助けを求められても一旦保留にする。騎士達から離れない」
指を折りながらあの日にした約束を上げれば
「覚えていただき嬉しいです。必ず守って下さい」
表情を先程から変える事ないディランと同じ表情で頷き返すも、
「領地では姉様に騎士団は付きませんので、外へは僕がご一緒しますので声をかけて下さい」
初めて知った事に驚き聞き返せば
「姉様が独り立ちの練習をするのです。僕もお父様から護衛をするようにと命を受けております」
領地に行けば、何をするのも1人だと思っていた思っていけど、予想外の言葉に
「ディランと一緒にいても良いの?」
思わず確認とすると
「1日中とは行きませんが、今まで通り魔法の練習の時と外に出る時は一緒です」
少し微笑みながら返してくれるので
「そうなのね!良かった」
両手を鳴らし喜べば、ディランもフレディも微笑んでくれた。
自分勝手に考え込んで気負いすぎて硬っていた心が解け、弾みだし楽しみな気持ちが溢れた。
第29話
前回が長かったので今回は短くしてみました。
ブックマークに評価や星を押してくださりありがとうございます。
誤字脱字も教えていただき本当に感謝しかありません。ありがとうございます。
台風が来ていますね。備えは大丈夫ですか?何事も起きませんよう祈ってます。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。
よろしけれお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/




