姉、街へゆく
雪の降る日より太陽を照らしている日が多くなり、ゆっくりと春に近づいているのだと実感すると、
「明日は街へ行ってきます」
春の神事の準備がどこまで進んでいるのかを見たくて、用事も無いのに街へ行く予定を告げれば普段より少し早い勉強の進みで2日間分を終わらせ、
晴れれいればいいなぁ。
そんな事を思いベットへ入ったのが昨日。
願いは叶い、井戸の水を汲んでいると空が白みだし太陽の光に雪が照らされる。
キラキラ眩しく目を細め、体中から息を吐き出せば何故だかホッと安堵を感じ不思議に思いながら水を汲み終えキッチンへと入り水瓶に水を移し、手早くじゃが芋の皮を剥いてゆく。
今日はポタージュを作り、朝食のメニューにしお祖父様とお祖母様と屋敷の皆で食べ、ランドリーへ行き慣れた洗濯量をこなし、自室へ向かい入浴にマッサージを終え、
手早く工房の書類と報告を受けた後、箒を片手に
「行ってきます」
見送りにきてくれたボアさんに手を振り、行き道を歩いてゆく。
数日ぶりの光景は見慣れてはいるものの、麦畑には一面雪が積もり真っ白な世界が広がり、木々には霜か雪が薄ら付き、白い花が咲いている様にも見え、
確か、不香の花と前の人生で好んで読んでいた小説に表現されていた光景だと思おうと感動が押し寄せ心を満たしてゆく。
見慣れた光景も言葉に変え表現すればこんなに心が揺さぶられ美しく見えるのだと実感し忍び笑いをし街道を歩いて行く。
毎日繰り返していた生活も細かく見れば日々違う事が起こり、楽しい出来事ばかりが思い出される。
辛い事、泣きたい事、叫びたい事、怒りたい事
沢山あったはずなのに、思い出す事は楽しい、嬉しい、そう言えばと苦笑する事。
時間が癒すと良く聞いたけれ、今はその時なのだろうか?
なんだか不思議な気持ちで道を歩いていると、見慣れたストロベリーブロンドの後ろ姿を見つけ声を掛けようとか思うも、何やら真剣な表情で周りの子供達と話しており、
ゆっくり近づきなから聞き耳を立てれば、
「どういう理由でそれになったんだよ?」
男の子から強い口調で問われており、
「それは。その」
困惑を示した聞き間れた声に、
「それはね」
名前を呼ぶ事は無く問われていた答えを告げれば、全員が目を大きく開き驚いた表情に
「こんにちわ」
微笑み挨拶をすると、
「エスメ様」
問い詰めていた男の子に名前を呼ばれたので、微笑み返すとバツ悪そうに顔を伏せてしまったので、
「君は凄いね。私達も気付かなかった事に気づき答えを求めるのは早々できるものじゃないもの」
目の前にある頭を撫ぜ、告げると申し訳なさそうに恐る恐る顔を上げたので、
「ミラ。私達もまだまだ勉強不足だわ」
気付かせてくれた事に感謝しないとね。
彼を咎める事も、答えられなかったミラを責める事もせず話すと、2人は視線を合わせた後、
「ごめんなさい」
込められた意味は違うも互いに謝りの言葉を告げればその後すぐに雰囲気が良くなり、全員が楽しそうに時に頭を悩ましミラの話を聞いていた。
見聞を広げて欲しい。
ミランダの願いをミラは自分なりに理解し、触れ合いが少なくなっていた子供達と仲を深めている。
多分、ミラの言葉の作り方と彼の捉え方と感情を真っ直ぐ出した事で起こった事だろうと判断し、聞き役に徹しつつミラが困った時に言葉を足す事で円滑に進む様子を眺め、
ミラはとても優しくて良い子だもの。
言葉の作りと伝え方を変えればもっと素敵な子になるわ。
ミランダからの教えを思い出すのか、時折、間を開け話している事を見れば取得は早そうだと思い。
見守る形でいれば、あっと言う間に子供達が帰る時間となり、
「エスメ様。今日はありがとうございました」
最初に名前を呼んでくれた彼の言葉の後に皆がお礼を伝えてくれたので
「みんなが楽しそうにしている姿を見て、楽しかったわ。私の方こそありがとう」
自分の気持ちを伝えると、笑い合い自然と帰路について行く。
彼は勉強に興味があるのね。
私が言葉にしなくてもミラにも伝わっている様で
「怖い人じゃないのよ。ただ質問が多くて」
答えられない自分が情けなく思うのだと告げるミラに、
「ミラ。毎日は無理だけど私もここに来るから彼と一緒に学んでゆくといいわ」
教えられた事が当たり前で、それだけで終わるのでは無く疑問に気づき言葉にできるのはとても凄い事なのたと伝え、
「私もまだまだ勉強不足だと痛感したわ」
ミランダやイルさん達から教えられる事に疑問なんて思わす、告げられた事だけを覚えていた。
人に合う事が大事と聞いていたけれど、こう言う気づきがあるからなんだろうな。
傾いて行く太陽をぼんやり眺めながら、反省と気づけた事への感謝し
ミラを送り届け、屋敷に戻った。




