姉、猛烈に反省する
暖かくなったかと思えば寒さがぶり返し、また雪が降る。
春に向けてゆっくりと季節が移動し始めている中、ミランダがお祖母様との面談に屋敷を訪れ、一緒にきたミラは話し合いが終わるまで私の部屋で待って貰う事にした。
興味深そうに小さな顔を左右を動かす姿に、微笑ましく思い見守っているとやはり本棚が気になった様で近付いてゆき、
背伸びをしながら本を珍しそうに眺めるので、
「ミラ。気になる本があるなら読んでもいいわよ」
本を触る許可を出すと勢い良く振り返り、
「ありがとう。お言葉に甘えるわね」
お礼の言葉と共に嬉しそうに笑い、再び真剣な表情で本を選び出すも題名が書かれていないので、ミラの元へ行き本の内容の説明を簡単にし
「これにするわ」
選んだ植物図鑑を引き抜き手渡すと、大事そうに両手で抱え込み
「こちらでお読みください」
「ありがとうございます」
ハンナさんが五指で指したソファにミラはお礼を言いながら腰を下ろし、好奇心と楽しみだと告げる表情で表紙を開き本を読み出した。
その本は、以前ハーブティーを淹れる際に勉強した事やフレディに淹れ方やディランに試飲をお願いした事をを思い出し、懐かしい気持ちで紅茶を飲み自分も選んだ本を読んでゆく。
時折聞こえるミラの小さな声に耳を傾け、薪が爆ぜる音を聞き文字で書かれた世界を想像し主人公と共に世界を歩いてゆく。
普段居ないミラが居る部屋は今までに無い雰囲気で時折聞こえてくるミラの様々な声に、ひっそりと微笑み楽しんでいると聞こえてきたノックの音に顔を上げ入室の許可を出すと
「エスメ様、ミランダさんがお見えです」
対応に出てくれたハンナさんの言葉にソファから立ち上がり、入室してくるミランダを出迎え
「お疲れ様でした。疲れたでしょう?」
ミラの横に座るように促し、ハンナさんにミランダの紅茶をお願いすると植物図鑑から顔を上げたミラが
「お帰りなさい。ミラお姉ちゃん」
図鑑を閉じ、甘える様にミランダとの隙間を埋め近づけば、
「ただいま」
愛おしそうにミラの頭を撫ぜたミランダに2人の関係性が深い事が分かり、微笑ましく見ていると
「許可をいただく事ができましたわ」
全員の紅茶を置いたハンナさんが壁際へ控えたのをきっかけにミランダの言葉に
「良かった」
安堵の息と共に喜びの声を出すと
「もうミラお姉ちゃんと勉強ができなくなるのね」
寂しげに下を剥き落とされたミラの言葉に、申し訳なく思い誤りの言葉を紡ごうとするも
「ミラ。私はミラの見聞を広げて欲しいと思っているわ。知識も大事だけれども使える場所がなければいけないと思わない?」
ミランダの優しげな声で紡がれる言葉に開けた口を閉じ、耳を傾ける。
「ミラは沢山の事を知った今、今度は人と沢山出会い仲良くなり、困っている人が居たら知識を使って手を差し伸べて欲しいの」
ミラを目を合わせ諭すミランダに悲しそうに顔を顰めミラは勢い良くミランダに抱き付いた。
2人の時間に話し合いはしていたと思う。
言葉で告げられ理解しても心が追いつかずにいるミラに心が締め付けられるが、自分の考えが足らずお願いした現実にミラに告げる言葉が思い付かず、
慈しむ様にミラを抱きしめ
「今まで通り休みの日に遊びに来て欲しいわ」
柔らかな言葉でミラの悲しみを和らげてゆく。
その分、心に自分都合に振り回してしまったミランダとミラも申し訳なさが広がる。
「エスメさんも、今まで通りに遊びに来てくださいね」
ミラを見つめていた同じ色の視線と声を貰い曖昧に微笑み返せば
「あら、まだまだエスメさんから学びたい料理があるのに来てくださらないなんて酷いわ」
私の味覚を弄びましたのね。
揶揄い混じに付け加えられた言葉と大袈裟に悲しむフリをするミランダに驚き、
「そんなつもりは無いわ。勿論、遊びに行くわ」
慌て告げれば、微笑んでくれ
「いずれ働くつもりだったの。早まっただけの事よ」
ミラの頭をひと撫ぜし、腕を解き
「夏にはエスメさんが王都へ行くわ。それぞれが動き出す時期よ」
力強く告げらミランダに頷き、ミラもミランダから離れ涙を拭いて貰い気持ちの整理をつけようとしている。
謝るのはまたの機会にしよう。
紅茶と共に言いたかった言葉を飲み込み、ミラが落ち着くのを待ってからミランダとミラは手を繋ぎ馬車で帰って行った。
第272話
寒波が到来と聞きました。暖かくしご自愛くださいませ。冬眠したいです
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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