姉、準備を始める
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姉弟だけで領地に向かう。
先日、ディランから告げられた言葉に驚くも魔法を存分に使える様にというお父様の優しさと言う事なので返事はすぐに返した。
気がかりだったディランのお友達も気にしなくても大丈夫だと言うので男の子同士の関係もあると思うので心配しないでおく。
忙しなく動くマルチダを目で追いながら領地に持っていく本の選別に勤しんで居れば、
「エスメ様。こちらの本も荷馬車に積み込んでもよろしいでしょうか?」
下僕の声に頷き、
「まだまだ持って行きたいのだけれども荷馬車に乗るかしら?」
壊物を扱うように慎重に本を持ち上げる下僕に問うと、
「書籍ならもう少し乗ります」
優しく笑いながらの答えに、
「そうなのね、教えてくれてありがとう」
自分も微笑みながら礼を告げれば、黙礼をし退室をした。
もう少しかぁ
できれば自室にある本は全部持って行きたいけど、無理だよね。
肩を落とし、再び選別作業へと戻った。
明日の早朝に領地で必要な荷物だけを乗せた馬車が一足早く出発する。
そこには、私とディランの洋服や書籍など数日無くても大丈夫な物を入れ、私達は身軽な状態で後日出発するとの事で、
朝から荷物の選別をしている為、ディランにも会えていないし生活魔法道具の作成も止まっている。
洋服なんてどれでも良いと思うけど、マルチダを始めメイド達が楽しそうに選別をしているのを眺め、
時折呼ばれるので着いて行けば、洋服の合わせを繰り返しされ、ああでもない、こうでもないと意見を出し合っているのを眺めるの繰り返しをしている。
楽しそうだなぁ
声を弾ませ、楽しそうに笑い合い、時々意見が合わない時もあるけど空気が悪くなる事もない。
私も流行に興味をもてば楽しいのかな?
メイド達の解らない単語を聞きながらぼんやりしていれば、
「エスメ様、お疲れになりましたか?」
初めて話すメイドの問いかけに首を振り、
「皆、楽しそうだなぁて思って」
微笑ましく思い返事を返せば、
「そうですね。エスメ様は何を着ても、
どんな色を合わせに持ってきても似合いますからね。楽しいです」
楽しそうに笑いながら弾む声の返事に、
「そうなんだ。洋服の事は気にした事なかった」
改めて来ているワンピースを見れば初めて見る服で、裾を指先で弄っていれば
「エスメ様のお洋服はマルチダさんが選びますからね。似合わない洋服は選びません」
それに、マルチダさんのセンスは素敵ですし流行も敏感で先読みも外した事がないんですよ。
自分のことの様に誇らしげにマルチダの事を伝えるメイドに頷き、自分の知らない一面を知る事ができ嬉しくなった。
それなのに、
「私は領地には行かず、こちらでお使えします」
夕食を自室にて1人で取った後のティータイム時の一言に驚き
「どうして!マルチダは私の専属メイドなんだよね?
それなのにどうして一緒に来てくれないの?」
心の制御が効かず、大きな声と早口で捲し立てれば、
「奥様から、独り立ちをさせる為の訓練に私が居ると
エスメ様が甘えてしまうからと聞いております」
自分とは正反対に淡々を話すマルチダの言葉の中に疑問を感じ
「独り立ち?」
首を傾げながら問えば
「着替えを始め、なるべく1人で多くの事ができる様に訓練をすると聞いております」
しっかりと言い含めるかの様に強く告げられた事に
「そうなのね。初めて知ったわ」
後日お母様から告げられる課題を聞き頷くも、ずっと一緒だったマルチダが居ない事の寂しさが大きく気落ちしていると、
「私も寂しく思いますが、素敵な淑女になられたエスメ様とお会いできた時に
メイドとして恥じぬ様、しっかり学んでおきますので元気な姿で
王都へお戻りくださいませ」
励ましの言葉をかけてくれ、
「ええ。マルチダの期待に答えれるようにしっかり学んでくるわね」
笑顔で頷き返せば、
「明日も荷馬車に乗せる物の選別をしますので今日は早めに休んで下さい」
空になったティーセットを片付けながらのマルチダの言葉に驚き顔を向ければ
「洋服はまだ1部だけ乗せましたが、生活魔法道具の作成図面や道具など沢山ありますよ」
すっかり忘れていた物達の存在を告げられ
「そうだった。忘れてた」
うっかりな事を思わず言葉に出してしまい
「エスメ様やディラン様の頭の中に全ての図面は入っていると思いますが、必要な物と不必要な物と選別しましょう」
そうだろうと思ってましたと言わんばかりの雰囲気と言葉に頷き、
「重要な物ですので運び方も特殊になると聞いていますので極力選別しますのでよろしくお願います」
了解と頷きカートを押し退出するマルチダの背中を見送った。
第27話
領地への準備に入りました。出発はまだかかりそうです。
最近、アキアカネを良く見かけます。秋本番ですね。
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また、誤字脱字報告もありがとうございます。感謝しております。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤のディランの心境と日々を書いております。
よろしけれお読みください。
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