姉、嬉しい報告をする
1日始まる毎に寒さが厳しくなり、今日は雪が舞い始めていた。
朝日が出る時間は気温もぐんと下がり、井戸の水を汲む手がかじかみ赤くなる。
ひらひら舞う雪をしばらく眺めた後、水の入ったバケツを手に持ちキッチンへ入ると、釜の火種が大きく育ちキッチンを暖めてくれている。
少しだけ冷えた体と手を火で温めた後、担当のじゃが芋料理を作ってゆく。
昨日の冷え込みからクックと相談しポタージュを作る事が決まっていたので、皮剥きをしていると、キッチンメイドやクックの挨拶の声に顔を上げ挨拶を返しつつ手を動かしつつ、
野菜を切り煮たり炒めたりとし最後に潰し、牛乳で伸ばし塩と胡椒で整える。
小さな火でとろみがつくまで煮込みつつ、使い終わった鍋を洗いつつ、選んだ皿に盛り付けをして貰う為にクックに手渡す。
慣れた作業は今日も無事に終わり、沢山作ったポタージュは使用人みんなの朝ごはんにも出し、体を温めて貰う。
一息付きランドリーに入り自分の洗濯を終えると、自室に入ると暖炉に火が入っておりマッサージを終え、身なりを整え、工房の書類と報告を聞く。
今の所、生活魔法工房は問題無く進んでおり、掃除機の見取り図も間も無く出来上がるとの事だが、
紙刺繍工房は、在庫が底をつき一段と忙しくなっている。
ありがたい事ではあるが
「今日、友達のアパートメントに行く前に紙刺繍工房に立ち寄ります」
忙しくなった状況を知らせた方が、ほんの少しだが心が軽くなるのではと思い今日の予定をボアさんに告げ屋敷を出た。
途中、手土産を買い、慌ただしい雰囲気の工房の扉をノックし来た事を告げると、
「お嬢様」
顔見知りとなった人物が対応に出てくれ、
「お忙しい中すみません。少しお話をしたい事がありまして。皆さんを集めていただけますか?」
部屋に入る前に謝罪と要望を告げると、頷いた後に身を翻し大きな声で全員を1つの部屋に集めてくれた。
「お忙しい所をお邪魔しすみません。今日は報告がありお邪魔しました」
様々な感情が表情に出ている皆を前に申し訳なく思いつつ微笑みながら、
「先程、王都から報告があり、在庫の全てを王妃様がご購入されたそうです」
自分達が作った商品を誰が手に取ってくれたのかが分かると、驚きと歓喜声と共に嬉そうに笑ってくれる姿に、自分も嬉しくなる。
「他の方々も手に入れたいと要望が多数届いております。忙しい日が続くと思いますがよろしくお願いします」
慌ただしくなりますが、用事や止むえずできた事での休み取ってくださいね。
言いたい一言も伝え、近く居たコナーさんに手土産を渡し
「お忙しい中、急に来てしまいすみませんでした。これからもよろしくお願いします」
頭を下げ、失礼にならない程度に座談を終えた後、再び手を止めて貰って事の謝罪をし工房を出てミランダのアパートメントへお邪魔した。
いつもの様に、ミランダに出迎えて貰い、紅茶をいただきながら工房の話をすると
「王妃という立場は国の流行を作り経済を動かす役割もあるのよ。そのお方に認められるなんて凄い事だわ」
嬉そうに微笑み教えてくれた言葉に、ミラと共に驚き
「よく分からないけど、エスメは凄い事をしたのね」
ミラの言葉にミランダが
「ミラには知識が増える機会が沢山あるのね」
どこか羨ましそうに微笑んだ様に見え首を傾げてつつ、
「さ、今日も知識を沢山蓄えましょうね」
ミランダの雰囲気を切り替えた言葉に頷き、ティーセットを片づけ、勉強の道具を準備した。
「今日はどの勉強をするの?」
ミラの嬉そうで好奇心に溢れる言葉に、
「今日は語学と数式の勉強よ」
ミランダも嬉しそうに微笑む姿に、
数日だけ来れなかったが2人の仲がより深まっている事に驚きつつ
ミラの嬉しそうな姿はミランダも嬉しいよね。
心の中で納得し、置いていかれない様に勉強に集中をした。
第250話
柊の花が咲き終え、さざんかの蕾が膨らみ始めておりました。これから寒くなってきますね。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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