姉、ご婦人に押される
最後の目的地である紙刺繍工房の到着し、馴染んだ場所でもあるがイルさんのエスコートで建物の中へ入って行く。
扉越しでも忙しなさが伝わってくるが、ノックを2回し来た事を知らせると、返事の声の後に扉が開き、
「お久しぶりです。こんにちは」
久しぶりに会うご婦人達に挨拶をすると、
「よく来てくれたわね」
忙しく手を動かしていたご婦人達が歓迎をしてくれた。
自分がき来た事で、刺繍をしていた手を止め1つの部屋に全員集まるのを待ち、
「お忙しい中、集まってくれてありがとうございます」
お祖母様の代理で来ていると言え、立ち上げから関わっていたので半分以上のご婦人とは顔馴染みでもあるが、途中から働き手として来てくれているご婦人は初めての顔合わせでもあるので、
自己紹介を軽くし、自分の立場はお祖母様の代理である事を告げ、
「本日、ギルト長へこの工房を本格的に動かす事を伝えました」
先程のやり取りをご婦人達に伝えると、皆、喜びの表情をした事に心の中で安堵の息を吐き、
「先だって、お祖母様のテストで合格した方の刺繍を貴族向けに販売をします」
ここからは重要の話なので、声を少し落とし伝える。
「他の方の刺繍も販売をしますので、給金については下がる事はありません」
全員真剣な表情で耳を傾けてくれ、
「技術選定は年に何度か行う予定をしております。そこで技術が認められれば貴族向けの刺繍をさしていただきます」
まだ、コナーさんを含め数名のみなのでできれば早急に人を増やしたいが、淑女の手習として刺繍は行われており、買い手より技術が下だと見向きをされない。
慎重に判断をし、それまではごくわすかな数で希少価値を上げて行くしかない。
簡単なのは流行り出しに沢山販売して、ブームが終われば生産を終了させる事。
短期ではあるがブームが終わった時の売り上げ低下や店舗維持費などを考えれば、すっぱり切ったほうが収入も高利益のまま終わるし、
でも、この工房は長く続けて領の主力の収入源にしたいとお祖母様は仰った。
女性が何らかで事情で働かなければならない時に、収入を得られるようにしたいとも。
それはお母様も手紙で同じ事が書かれており、願いが託された。
1歩目を終わらせ2歩目に入る。
幸い、ここで働くご婦人は皆が技術の向上に意欲的でやる気に溢れている。
数ヶ月後には在庫も余裕が持てるようになるだろう。
お祖母様の思いとご婦人に伝えると、皆深く頷いてくれ、
「軌道に乗れば、人手が足らなくなります。他の領から職を求めてやって来た方も受け入れていきたいと思いっております」
今後の方針を伝えると、不安の思う事も少なくなるはずと隠す事なく伝えた。
全て伝え終わった所で、
「よろしければこのまま休憩に入りませんか?美味ししティーフードを待ってきたのです」
高まった緊張感をほぐす為に、明る目に声を変えると、
「それは良いね」
まとめ役のご婦人の言葉に皆が動き出し大きなテーブルに集まり、各々が準備をして行く。
「お嬢さま、こっちに座りなよ」
「ですが、私も手伝いを」
持ってきたマフィンの箱をイルさんから受け取りった所にかけられた言葉に、首を振りかけるも
「良いって。座ってなよ」
近くにいた寡婦の方の言葉に、申し訳なく思いつつ椅子に腰をかけるとすぐさま紅茶とマフィンが置かれ
顔を上げると
「エスメ様。わたくし、必要品の買い足しへ行って来ます」
小さな声で告げてくるイルさんに驚き顔を見ると微笑みの後、扉へ向かって歩いて行く。
ご婦人達もイルさんに声をかけ引き留めるも、
「エスメ様を少しの間よろしくお願いいたします」
と、言葉を残し部屋から出ていった。
「ま、用事があるなら仕方ないさ。お嬢さまもここで待っているといいよ」
また違うご婦人の言葉に頷き、紅茶を一口いただくと誰がの言葉がきっかけであっという間に話が盛り上がり、
「お嬢さま、綺麗になったねぇ」
「ありがとうございます。手伝って貰ってくれた方のおかげです」
持っていたマフィンを皿の上に戻し、お礼を伝えると、
「普段の時は可愛いけど、そういうカッコしてると貴族様だったて思い出すわぁ」
「本当に。よくミラからお小言を貰っている姿とは大違いね」
普段、買い物をしている姿の言葉に、曖昧に微笑み誤魔化すも、
「神殿での儀式の後に、街で見た姿に姑が驚いてね。もう笑っちゃったわ」
何とも返事を返し難い話題に、微笑んだまま耳を傾けていると
「夏には王都へ行くんだろ?」
急な話題の切り替わりに、頷きくと
「こんなに綺麗なんだ。すぐに良い人が見つかるさ」
「ちゃんと今みたいに着飾って、良い男を捕まえるんだよ」
より返事のしずらい話題に、ご婦人達の心使いに有り難く思いながら、
「そうですね。頑張ってみます」
愛想笑いをしながら返事を返し、
「そういえば、何か困った事や改善をして欲しい事はありますか?」
今度は休憩中に申し訳なく思うも自分から話題を振ると、皆、横に首を振り
「他より良い対応をしてくれ、給金も良い。これ以上は無いね」
あっさり話題が終わり、再び雑談へと入って行く。
どこかの娘さんに、男性が心を寄せている話や新しくできた飲食店や雑貨店の話。
興味深く耳を傾け食べているマフィンと数杯の紅茶を飲みんでいる所に、ノックの音が聞こえ、
1番近くに座っていたコナーさんが対応に出てくれると、
「エスメ様、お待たせ致し申し訳ございません」
イルさんの言葉と姿に立ち上がり出迎え
そろそろ帰る時間かと思い、
「そろそろ、お暇をいたしますね」
使っていた皿とカップを持ち上げるも
「私が片付けておきます」
コナーさんに取られてしまったので
「ありがとうございます」
お礼を告げ、イルさんの横に立ち、
「これから、今以上に忙しくなりますので体調にご自愛ください」
代理人として挨拶をし、見送りにと動いていくれた人に断りを入れイルさんと共に馬車に乗り込み
屋敷へと向かう。
後はお祖母様の今日のことを報告をすれば1日の予定が終わり自由時間となる。
後少し、頑張ろう。
馬車の揺れに眠気がくるも、頭振り眠気を追い出し外の風景を見る事で目を覚ました。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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