姉、戦闘服を着る
毎日の朝の勉強を終え、最近の入浴とマッサージも終えた所でここからが毎日と違う流れになった。
「では、始めさせていただきます」
上半身にコルセットを着けるために、ボニーさんの肩に手を置き、ハンナさんの合図で呼吸を吐き出す。
今日は軽く締めるだけだと聞いたが、なんだか本格的な着付けの流れに心の中で首を傾げた。
何度も締められるとウエストが細くなり、さらに最後の締めできつく紐で止められ完成となる。
「お疲れ様でした」
ハンナさんのどこかやりきった感の言葉に鏡に映る自分の姿を見ると、
凹む所は凹み、出る所は盛り上がった姿に感動し見つめれば
「エスメ様はコルセットを着ける必要の無い体型でございますが、ドレスと綺麗に着こなす為のコルセットとお考えください」
ドレスと手に持ったテアさんの言葉に頷き、布が置かれた場所に立ち着付けて貰う。
今日は以前話に出たギルトへ紙工房を本格的に動かす報告と視察の日で準備に追われており、
「ギルト長との話し合いは資料を元に行いますので、書かれた事をお言葉にしていただければ大丈夫です」
イルさんから事前打ち合わせで告げられた言葉を思い出し、緊張する心を解すも、
何か違う事を聞かれてもすぐに返答でき様にしておかないとダメね。
ドレッサーの鏡に映る自分を見つめ、小さく深呼吸をする。
お祖母様の代理として向うので失敗をすれば、お祖母様にご迷惑をおかけしてしまうし、工房で働く皆の心象も悪くなってしまう。
頑張らないと。
多く息を吸い込み、ゆっくりを吐き出す。
大丈夫。
鏡に映る自分と目を合わせ、言い聞かせるように告げると、ノックの音が聞こえボニーさんが対応に出てくれると
「出発の準備が整いました」
ルイさんの言葉に、ドレッサーの椅子から立ち上がり、
「ハンナさん。テアさん。ボニーさん。ありがとうございます」
ドレスの着付けに髪を結い上げて貰い化粧もして貰った事へお礼を告げれば3人同時に1礼で返事を返してくれた。
数歩扉に向かい歩くとイルさんが腕を出してくれので手を添え、部屋から玄関ホールへと歩く。
久しぶりのヒールに階段を新調に降りて行くと、お祖母様が姿があり
「おはよう」
にこやかな挨拶に
「おはようございます」
微笑んで挨拶を返すと全身に視線が走り、
「あの子達は良い仕事をしたわね」
ハンナさん達へのお褒めの言葉に、短い返事で返すと
「契約の話はある程度、詰めてあるわ。あまり気負いすぎない様にね」
お祖母様の言葉に力強く頷き、
「何かあればイルが対応します。エスメは背筋を伸ばし堂々としていなさい」
ありがたい助言もいただき、
「行って参ります」
イルさんのエスコートを受け馬車に乗り込み、お祖母様とハンナさん、テアさん、ボニーさんに見送られギルトへと向う。
覚えた資料を思い出しながら過ごしていると、緊張が全身に伝わり落ち着かない気持ちになると、
「こちらはいかがですか?」
差し出された物に視線を向ければ、ディランから送られてきた飴で思わずイルさんの顔を見ると
「お心がほぐれればとお持ち致しました」
落ち着いた声と優しく微笑んだ表情に
「ありがとうございます」
手を伸ばし1つ口の中に入れればベリーの甘酸っぱい味に強張っていた体が解れてゆく。
コロコロと口の中で飴を転がし、味を楽しんでいれば無くなる頃にギルトへ到着し、イルさんの手を借り馬車から降り、
深呼吸で気持ちを整え、
誰よりも頼りになるイルさんの腕に手を添え
ギルトの扉をくぐり中へ入った。
第244話
冷え込んでいるようで朝布団から出るの一苦労しました。冬到来ですね。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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