弟は姉を叱りたい
どこか遠くからノックの音と扉が開く音のが聞こえ、意識が覚醒しだす。
なんだか久しぶりによく寝れた気がする。
閉じていた瞼を開け見慣れた天井を見つめていると
「おはようございます」
耳馴染みのあるフレディの挨拶に同じく
「おはよう」
返事を返し身を起こそうと動かすも何故か重みを感じ動かせずに居れば
「エスメ様とご一緒だったのですね」
微笑まれ告げられた言葉に慌て顔を動かし横を見れば、自分の体に腕を回し気持ち良さそうに寝息を立てている姉の姿に、驚きと戸惑い、恥ずかしい気持ちが溢れ
「姉様。起きてください!」
普段出さないような大きな声を出し姉の肩を掴み揺らし呼びかける。
数度呼びかけると唸るような声の後、
「でぃらん?」
閉じていた目を開けぼんやりとした声で名前を呼ばれた後、ゆっくりと動き体を起こしたので隙を付き体を動かし姉様から少し離れれる。
姉様の行動を見ていれば、ゆっくりと自分に向かって両手を伸ばしてくるので身構えれば、両頬を掌で包まれ、
「しんぱいかけてごめんなさい」
舌足らずな発音で告げられた言葉に驚くと、頬から手が離れ背中に腕を回され
「あの時、ディランは必死になって止めてくれたけど、助けて欲しいと言う言葉に行かなければと思い込んで説明も満足にせず行ってしまったわ」
眠気が取れて来たのかしっかりとした口調で告げられる言葉にあの時のことを思い出し心が苦しくなるも姉様の背中に腕を回し返すと
「勝手な行動をしてごめんなさい。心配かけてごめんなさい」
姉様も少し力を入れ抱き返してくれ続けて言われた言葉に苦く苦しい気持ちが流されるように消え
「姉様の謝罪は受け取ります」
いつも快活な姉様がこんなに大人しく反省を口にした事で許す心が芽生えてきた。
「いつまでもこの様な恰好では朝食が食べれませんのでまずは着替えをしましょう」
姉様の背中に回していた腕を解けば、同じ様に動きを見せたのでお互い顔を見合わせ、
「この部屋で一緒に朝食を食べてその後、話を聞いてください」
誘いの言葉を告げると
「解ったわ。すぐに準備してくる」
頷き、何故か額にキスをすると部屋から出ていった。
「急なことで申し訳ないけど準備を頼めるかな」
ベット端で自分達の事を見守っていたフレディに声を掛ければ一緒に入って来ていたメイドに視線を向け準備に向かわせる姿を見ながら、頭の中を整理しつつ差し出された蒸しタオルで顔を拭き返すと、ガラスのコップが差し出され一口飲む。
姉が考案したハーブと果実を漬け込んだ水は体の中をスッキリさせてくれ気に入っている。
ゆっくりと1口1口味わいながら飲んでいれば
「エスメ様が目を腫らし帰られたそうですよ」
1日のスケジュールを告げるかのように自然と告げられた言葉に驚き顔を上げれば、苦笑しながら
「奥様とお会いした際には大粒な涙を流しながら謝ったと聞いております」
告げられた言葉を想像してみるも全く思い浮かばず怪訝な顔をしていれば、
「奥様と執事は何も言っておりませんが、奥様専属メイドと騎士達の間ではこの話で持ちきりでした」
奇想天外な事をし出す姉様も下働きの者達にも慕われいるのは知っていた。
何より姉様が居ない数日は火が消えたかの様に静まり返りどこか元気が無い者が多かった。
伯爵家で働き姉様という特殊な条件のもと働く者達は厳選したはずなのにこの口の軽さは一体なんなのか。
顔を顰めれば
「皆、エスメ様の事を心配しての事です。慰めてやらねばと意気込んでおりますので、広いお心で見逃してあげて下さい」
真剣な表情で説得され
「皆、姉様に甘すぎる」
愚痴1つ溢せば
「ディラン様には負けますよ」
心外とばかりに告げられるも
「残念だが朝食後に姉様には文句を言うつもりだ」
鼻を鳴らし告げれば
「そうでしたね」
あっさり引いた事に引っかかりを覚えるもここで言い合いをしても埒も開かない上に姉様が来てしまうと厄介な事になるので渋々引き下がり、着替えをするためにベットから離れた。
動作1つ止まる事なく服を着せられ、準備が整うまでソファーに座り読みかけの本を読む。
魔法書を読みつつ姉様が入室すれば、朝食の始まる。
白いパンに川魚を蒸し煮しバターを落とした物に鶏肉を塩とハーブで焼いた物に起きた時に飲んだ果実水
パン以外姉様の好物ばかりで心の中でため息を落とすも、控えているメイドやフレディが嬉しそうに食べている姉様の姿に安堵する姿が目の端に入り仕方ないと思い手を動かす。
粗相なく終えた朝食後に紅茶を出され互いに1口飲み落ち着いたのを感じ
「姉様に伝えたい事があります」
心を強く持ち火蓋を切って落とした。
ティーカップを置き言葉を待つ姉様と目を合わし
「まずは無事に帰って来れたこと嬉しく思います」
本題に入らず、姉の反応を確かめる
「ありがとう」
微笑みながら礼を返す姉様に少し怯むも、
「その日から考えてまして、姉様と約束を事を決めようと思います」
話題に出してしまえば、するすると言葉が出て来る。
「1つは姉様も言っていましたが、勝手な行動はしない。今回は連れ去られたのでこちらの不手際もありますが、行動を起こす前に立ち止まり考えてください」
なるべく声に感情が乗らないように心がけながら話を続ける。
「助けて欲しいの声に応えられる姉様は素敵ですし尊敬しております。が、助けを求めてきた人全員に手を忍べるのは無理です。選別、選択する事を覚えてください」
早る心を押さえ付け、普段よりゆっくり話す事を心がけ、
「皆が皆、良民ではないことを知ってください。悪意を隠し姉様に近づく者もおりますので騎士達から離れないで下さい」
続けて告げた言葉を真剣に聞き頷くも、時折見せる反応に話半分も理解しているかの怪しいんでいると、
「解ったわ。自分勝手な行動はしない。助けを求められたら一先ず保留にする。騎士達から離れない」
指を折りながら復唱するも所々抜けており、今1度同じ内容を言葉を変え伝えようと思うも姉様の空元気の雰囲気に気づいてしまい、
「そうです。判断ができない時は僕の所に来てください」
自分がしっかり姉様を見ていれば良いだけの事だと思い直し口を閉じた。
本当ならもっと言いたい事があったが姉様の姿にどうしても言う事ができず、
「今日は何をして過ごしますか?」
話題を変えれば、
「魔法道具を作ろうと思っているの」
淑女のように微笑んだ姉様に驚くも、すぐに隠し
「それも良いですが少し寝られてはいかがですか?まだ眠そうですよ」
力なく微笑み
「そうかな?」
首を傾げるので
「無理をしても良い物は作れません。少し休んで目が覚めたら一緒に考えましょう」
休むように誘導しつつ姉様のメイドであるマルチダに視線を送れば頷かれ、
「エスメ様。ディラン様もこのように仰っておりますし少し休みましょう」
足早に姉様に近づき、返事を待たずして姉様を立たせ退出たせた。
流石姉様の専属メイドだと感心し残っていた紅茶を飲み
今まで心の中で燻っていた不安と恐怖と自分への苛立ちが消えた事に安堵し、空元気を装う姉様にどう対応するが考え込む。
どうすれば姉様が笑ってくれるのか。
その為に自分は何ができるのか。
姉様が起きるまでに今日のスケジュールをできるだけ終わらせるようにフレディに指示を出し、
何か姉様に動きがあれば知らせるようにメイドに告げ下げた。
第24話
ようやく姉弟の会話が書けました。
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とても嬉しいです。
台風が生まれてたと見ました。大人しい子だと信じてます。
ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
よろしけれお読みください。
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