弟は家族会議に参加する
いつもの様に朝から学園行き、ルカ様達とルーク殿下到着を門前で待ち、朝の挨拶をする。
途中すれ違う学友達と挨拶をし、そこから全員で教室に向かい、時間まで各々好きな事をし過ごしも
今日は心が騒めき、少し冷静さを欠けている。
原因は言わずと知れた姉様で、問題は手紙の内容にある。
急遽、家族会議が今日の夜行われる事になり、傾向と対策を話し合うのだが、
「ディラン。どうした?」
ルカ様の言葉にいつの間にか下がっていた顔を上げれば、ルーク殿下と方々の視線を集めており、
「いえ、大した事ではないのです。お気遣いいただきありがとうございます」
貴族らしく心の内を見せない様に微笑むも、
「まぁ、ディランが悩む事は1つしかないからな」
ザッカリーが肩を軽くて置きながら言葉に内心驚くも、方々が微笑みと頷きで自分の心内などお見通しなのだと理解するも、それでも声に出して告げることはせず、
微笑みで言葉を濁した。
姉様の存在は簡単に言葉にする事はできない。
貴族の生まれでありながら貴族籍のない姉様は平民ど同様な扱いになる。
王族や高位貴族の方々集まるこの場で姉様の事を話すことはできない。
ありがたい事にルーク殿下やルカ様にザッカリーなど皆、姉様に好意的であるが、そうでない方々も居る。
気をい引き締めなければ。
隙を見せれば、どんな事になるのか想像できない訳ではない。
気付かれない様に細く深呼吸をして心を整えれば、授業の時間となった。
予習と復習の甲斐もあり、授業が理解できないという事はないものの、しっかりと教師の話を聞き、改めて理解を深めてゆく。
50分の授業が終わり、今度は移動教室の為に教科書手に持ち立ち上がると、
「ディラン様、もしよろしければご一緒させてください」
同じクラスの女性に声をかけて貰うも、どう断りを入れようかと考えていると
「ディラン様。私もご一緒させてくださいませ」
返事をする前にもう1人増えると、あっという間に囲まれてしまい、断りの言葉を告げ難くなる状況に、
「ディラン様。ルーク殿下がお待ちですわ」
柔らかながら、透る声に視線を向けると、ルーク殿下の婚約者であるアメリア嬢が微笑みながら立っており、
その背後は、自分を待っているルーク殿下達の姿もあり、
「お心使いただきありがとうございます。申し訳ございませんが、またの機会にご一緒させてください」
微笑みと共に断りの言葉を告げると、女性達は引き下がってくれ教室から出てゆく姿を見送くり、
「お助けいただきありがとうござます」
横に立っているアメリア嬢にお礼を告げると、
「いいえ。お役に立てて良かったですわ」
凛とし猫の様な瞳が細く優しく和らぐのを眺めるも慌て教科書を持ちルーク殿下達の元へゆき、自分達も移動教室へと移動を行った。
その後も、休憩に入るごとに学友達から声をかけられ、なんとか断りを入れつつ
「すまんな。ディランは俺と一緒に帰るんだ」
ザッカリーに助けて貰い、今日も学園から帰る為に馬車へ方々と向いルーク殿下とアメリア令嬢を見送り
「おかえりなさいませ」
フレディが馬車から出て待っていてくれた。
「ただいま」
互いに視線を合わせ挨拶を交わした後、馬車に乗り込みタントハウスへ向かう。
「学園はいかがでございましたか?」
気遣わしげに尋ねるフレディに
「今日も方々に助けていただいてしまった」
一向にうまく断れない自分が情けなく思い、返事を返すと
「では、方々の真似をしてお断りをしてみてはいかがでしょう」
フレディの言葉に理解ができず首を傾げれば
「幸いディラン様の周りには良き見本となる方々をお見えです。どの断り方が差し障りのないかを試すのも良いかと思います」
自分では思い付かない案に頷き
「そうだな。いつまでもご迷惑をおかけするよりは良いかもしれない」
ありがとう。明日から実践してみるよ。
少し心が軽くなり、礼を告げると馬車はタントハウスに到着し、出迎えてくれた両親に
「ただいま帰りました」
挨拶をすると
「おかえりなさい」
微笑みと共に挨拶が帰り、
「サンルームで待っておりますから、着替えたら来てちょうだい」
お母様の言葉に頷きフレディと共に自室にて手早く着替え、指定されたサンルームに向かえば、お父様の指示で席につき、置かれているティーフードを眺めると、
スコーンにサンドイッチ、そしてレモンケーキまで置かれ、
よくこの部屋で姉様とお茶会をしたなぁ
正面で嬉しそうにスコーンを食べる姿を思い出していと
「疲れているとことすまないが、エスメについて聞きたいことがある」
お父様の真剣な言葉に、頷き返すせば
「エスメから届いた手紙と本宅から届いた報告書との違いがあってな」
朝から気を揉んでいた事はこの事だったのだ。
日々、日記のように詳細に書いてくれる姉様の手紙と届く報告書はほぼ同じ事が書かれていた。
だが、今回の手紙にはダンスの練習をしている事が一切書かれておらず、
「お母様の手紙にもマルチダの手紙にも書かれていないのですか?」
姉様もお父様には言いにくいのかと思い、お母様に尋ねるも
「いいえ。私の手紙にはマルチダの手紙にもダンスの事は書かれて無かったわ」
小さく首を振りながらの言葉に、後ろに居るフレディに視線を向けるも首を振られ、
「ディランはどう思う?」
お父様の問いかけに視線を戻し、
「多分ですが、僕達を驚かせたいのかと思っております」
姉様の性格を考え出した答えに
「やはり、そうよね」
お母様が苦笑しながら頷いてくれ
「エスメは驚かす事が大好きだからな」
同じ様に困った様に笑うお父様に頷き返すと
「方々にその様に報告するよ」
カップを手に持ちながら安心したように微笑むお父様に
「よろしくお願いいたします」
お母様がどこか感心したように微笑み、同じ様にカップに口をつけたので、同じ様にカップに口を付け喉を潤した。
自分達家族の間では些細な事でも、立場上で大きな事になってしまう姉様に心を痛め
手紙の返事と一緒に何か贈り物をしよう。
喜んでくれる姉様を想像し、カップをソーサーに戻しレモンケーキを一口食べた。
第238話
早朝の空気が冷たく、布団から出にくくなってしまいました。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
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フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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