ご令嬢は焦がれた焦がれた人に会う
それは突然の出来事だった。
立場上関係をしっかり結ばなければならないルーズヴェルト公爵家の御子息である
ディラン様主催のお茶会にご招待をいただき、婚約者であるルーク殿下に側近候補達と共に楽しいお茶とティーフードをいただき、話に花を咲かせていた。
自領から王都へ来たディラン様のお悩みは多く、ご苦労をしているご様子。
さりげなくお助けをしてはいるものの、性別の違いもありほんの少ししかお助けできないのを心苦しく思いながらも、
「どのようにお相手をすれば良いのか分からず」
沢山の子息の方や淑女の方々にお声をかけていただけるご自身の立場に戸惑いと困惑をしており、時折
ルーク殿下や側近候補達がさりげなく手助けをしている姿を拝見している。
今はこの国の者ならば知らない者は居ないと評されるルーズヴェルト公爵家
今まで誰も思い浮かばなかった生活魔法道具のお陰で生活水準は劇的に向上し、作り出した菓子文化も花を開いている。
誰もが羨み、憧れ、嫉妬するルーズヴェルト公爵家は1人のご息女様が全てなしえた事。
この事は隠されており1部の人達しか知らない。
親世代は親同士が交流を持ち、子供世代は自分達で交流し信頼をとっていかねばなら無い。
が、ディラン様はどうも貴族らしくない所が多々ある。
貴族らしく感情を微笑みを中に隠し、常に冷静で判断をし、言葉の裏まで読まなければならない。
それなのにディラン様は微笑みはできているものの感情は隠しきれず、言葉の裏を読むのはまだまだ勉強中でとても分かり易い。
ただ、冷静さだけはこのメンバーの中での飛び抜けてあるのは、あのご息女様と共に過ごしたでしょう。
今も、側近候補に励まされ、ルカ様に助言を貰い真剣に頷いている姿、年下の様に幼く見えルーク殿下と微笑ましく見守っていると、
突然、ディラン様の後ろの景色が左右にずれて見え思わず見つめていれば、うっすらと人影のような形が見え出し一気に緊張感が増した。
周りに控えていた者が身を硬らし、自分も側近候補達もいつでもルーク殿下を守れる様に体制に入るも、
現れた姿は自分より年上の女性で、嬉しそうに笑うと両手を広げ、持っていたであろうバスケットがゆっくり落ちる中、
「でぃ、だーれだ!」
ディラン様の名前を呼びかけるもすぐ様、悪戯めいた笑みをしディラン様のお顔を両腕で覆ってしまった。
突然の事で驚きいていると
「久しぶりだね、ディラン。会いたかったぁ」
満面の笑顔でディラン様の後頭部に頬ずりをしている女性に、この方がご息女様なのだと理解ができると、
お会いしたくて焦がれた気持ちが嬉しさに変わり、
身長も伸び、大人になられているわ。
記憶の中では初めて見た箒に跨り嬉しそうに笑い手を振ってくれたご息女様だが、目の前に居るご息女様は幼さをの残しながらも、それでも笑みは変わらずあのままで、
嬉しくて歓喜周り目が潤むのを自覚し見つめていると、ふっ視線を上げ自分達の姿に視線を走らせた後、私と目が合い、
「可愛い!」
疑いの無いまっすぐな言葉に思わず恥ずかしくなり、じんわりと頬が熱くなる中
「ディラン。とても可愛い女の子がいるわ」
私に向かって手を伸ばしていると、されるまま動かずにいたディラン様が急に立ち上がり
「御前、失礼いたします」
軽く頭を下げた後、ご息女様を背中に付けたまま少し離れた位置へ移動をしまった。
もう少しで皆様と同じ様に頭を撫ぜていただけましたのに。
恨みがましくディラン様を見ていると、
「お変わりが無い様で安心したよ」
隣に座るルーク様の小さな声が聞こえ視線を向ければ、口を隠すようにカップに口をつけており、
「報告書やディランから聞いてはいたが、その様ですね」
ルカ様も同じ様にカップで口を隠したのを見て、話す事は無いが不自然にならない様に私もカップに手を伸ばし紅茶の飲んだ。
ご息女様の楽しそうな雰囲気とは違いディラン様はため息でも落とさんばかりに眉間に皺を寄せている姿に
お2人がどの様に過ごされているのかが手に取る様に分かるわ。
微笑ましく見ていると、ご息女様がディラン様の方に手を置いたと思うと、綺麗に1回転する姿に驚きすぎて声を上げそうになるのを手で口を抑える事で回避をした。
ディラン様も流石に驚いた様で慌て両手を動かし目の前に現れたご息女様を抱き止めている事に、無事で良かったと息を落とすと、聞こえてくるのは
「姉様、危険ですので上からではなく歩いて横から来ていただけると嬉しいです」
ディラン様のご息女様を注意する言葉と、それを受け
「そうね。気をつけるわ」
嬉しそうの笑うご息女様の姿にディラン様のご苦労が滲み出ており、
ご苦労なさっておいでですのね。
今までご息女様の1番近しい存在であり羨ましくてディラン様への嫉妬をしていたが、綺麗に消え去った。
折角、お会いできたのだもの、この機会を逃す訳にはいかないわ。
幼き頃の嬉しかった思い出、ルーク殿下の思い出話、父から受け取る報告書。
いつかお会いできると信じていた日々。
ここにいる皆が同じ思いらしく失礼にならない様にご姉弟を見ていると、ディラン様の従者が1礼を私達に向けた後、置き去りにされていたバスケットを持ち、ご姉弟の元へ近づいて行く。
聞こえてくる会話は、どうやら抱きしめたままでいるディラン様を話して欲しいと要望をしており、
ご息女様はとても良い笑顔で否定した。
が、ディラン様が困った表情をした瞬間にご息女様は腕を解き、乱れてしまったディラン様の髪を丁寧に愛おしそうに直している姿に、
消え去ったはずの嫉妬がじんわりと心に生まれた。
先程みたいに、偽り出ない笑顔が向けられたらどんなに嬉しいだろうか。
焦がれている光景が目の前にあるのに向けられているのは自分では無い。
そんな事は当たり前だと。
心を言い聞かせるも、チラリとルーク殿下や側近候補者を見ればどうやら自分と同じ感情を持っているようで、自分だけでは無いのだと知り心が軽くなった。
そんな中、1人のメイドがご姉弟の元へ歩み寄ると、途端にご息女様が花咲くように笑ったと思ったら、急に挙動不審になり
忙しなく視線を左右に動かししどろもどろしている姿に、
「怒られる事でもしたのですかね?」
ルカ様の言葉に耳を傾けていると、ご息女様が帰るのだと告げるが
「姉様。帰ってしまうのですか?」
瞬時に返事を切り替えた事の思わず笑ってしまい、
「相変わらずだな」
武を得意とする方の言葉に
「その様で」
魔法を得意とする方の苦笑が聞こえあ後に、自分の何故帰ると言ったのかを思い出した様で慌てた姿に
「お忘れになっていたのですね」
こぼした言葉に
「そうみたいだね」
ルーク殿下が返してくれた。
渋々といった雰囲気で歩くご息女様に、寂しさを感じつつも
「ご姉弟がどのように過ごしていたのか、あの短い時間で手に取る様にわかるとは」
ルーク様の言葉に全員が頷き、
そしてルーズヴェルト公爵夫人がこの家族を仕切っているのだと分かった。
噂には聞いていたけれどルーズヴェルト公爵家は女性で持っていると言うのは本当なのね。
才女と名高い現ルーズヴェルト公爵夫人は淑女の憧れでもある。
社交界の花ではないが、誰もが幼い頃に夢見て羨ましく思う夫婦像に自分も憧れがあったが、妻だけではなく母親の姿も見え。
尊敬の念を感じつつ
ディラン様にはご息女様がお作りになったじゃが芋の料理をいただけるようにお願いしないと。
申し訳なさそうに机についたディラン様を迎えつつ、
どうお願いをするかに頭を回した。
第233話
そろそろチョコの新発売が並び出しますね。毎年楽しみに買い物に行っております。
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ネタバレを含みますが短編に本編終盤の弟ディランの心境と日々を書いております。
お時間ありましたらお読みください。
https://ncode.syosetu.com/n4082hc/
フッと思い付き新しい話も書きました。お手隙の時間ありましたらお読みいただけると嬉しいです。
お兄様、隣に居る令嬢は誰です?婚約者のお義姉様はどうなさったの?大変!廃嫡とざまぁを回避しなければ!
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